第8章13話 ダンジョン間引き
こっちにも仕事が有るので毎日ロルクリンゲンに行っている訳にもいかない。
ティアさんはこちらに来てもらい、警備隊情報隊のフリンさん、ハンナさんアナさんと一緒にダンジョンで訓練して貰ったり、ダンクさんのチームでトトちゃんに鍛えて貰ったりして楽しんでいるようだ。
騎士団は毎日お互いに半数近くが行ったり来たりで、ホフマブルグでロドニー公の騎士団員がウロウロしているのが珍しくなくなってきた。
パトリックさんはロルクリンゲンにカレーとフライの店を出す事になり、手に入れた店舗の改装と店員教育に忙しくしている。
交流は一度始まってしまうと、どんどん進んでいくものでノア兄さんが婚約を発表する前にロドニー公との親戚付き合いの方が先行している。
セルファン王国に強制労働させられていたダークエルフは、半数以上がリヒトブルグで働いている。
晩御飯後、久しぶりに全員で洞窟の池でのんびりしている。
「ミノル、後何回くらいでセルファン王国が疲弊すると考えている?」
「後二回くらいですかね。前回で1000人くらいの兵力を失って、魔術師もそれなりに無くしてますからね」
マネさんと国境紛争の話しをなんとなく始めた。
「そうだな、5000人くらい削れば相当キツくなるだろうな」
「また越境して来ているらしいですよ。今回は2000人くらいの兵力と報告を受けてます」
「あの鉱山に、そんな価値が有るのか不思議だのう」
「ミスリルが取れるらしいと言っても少量らしいですからね」
「あの草原だって道も無かったし、ただの草原だぞ」
「あそこにピヨちゃんの群れでも放ちたくなりますよね」
「魔国のヴオフォォーンも良いぞ。すぐ増える」
「そうだ! 39層が例のヴオフォォーンの群れですよ。38層がミノルが好きな大型クマさんの群れ。37層が凄いスピードで走る飛べないワイバーンみたいな奴の群れでした。36層は沼でワニだらけ。35層が巨大イノシシの群れ。ボスは見なかったですね」
ミアさんが教えてくれた。
「行ったんですか?」
「ポニーさんと倒さないで、強行突破ばかりで昨日行きました」
「沢山居ました?」
「凄い数ですよ。間引かないと大変だと思います」
「……ボロミア公爵の軍は城壁の外に陣を張っているのですかね?」
「だと思うぞ。大軍を城壁内には入れんだろう」
「テリッチさん、魔法陣で魔獸を一方通行で飛ばせますよね?」
「簡単ですよ。置いたら透明化して、時間になったら消えるとかも出来ますよ」
「飛べないワイバーンの群れが、無価値で凶暴そうで良いですね」
ポニーさんが鬼畜の意見を放った。
「どうせなら城壁内に送ったらどうです? 戦争になったら私達が潰す街なら、魔獸を走り回らせた方が罪悪感が少なくて良いですよ」
ミズリさんがもっと鬼畜だった。
「確かに城壁内の方が経済的なダメージが大きいですよね」
ミアさんが納得している。
「じゃ、大型の魔法陣を書いてボロミア公爵の街に張りましょうか」
テリッチさんが魔法陣を書きに行った。
「今晩張って来ましょうか? 私は行ったことありますから。館前の広場が広いし道が集まっているんですよ」
ポニーさんが積極的だ。
「良いな! 今晩に三回くらい37層を空にすれば凄い数になるぞ」
マネさんが嬉しそうだ。
テリッチさんが実剣室から出て来た。
「出来ましたよ。張ると大型化して72時間で消滅します。当然透明化して見えません」
A4版くらいの魔法陣を持って来た。
「こっちが送る側の魔法陣。やはり72時間で消えますけど透明化しません。追い込む時見えた方が仕事がし易いと思いまして」
道具は揃ったようだ。
「じゃ、私がボロミア公爵の所に張りに行って来ます。あそこ田舎だから、もう広場に人なんか居ないですよ」
ポニーさんがニコニコしている。
「私も一緒に行きまーす」
ミアさんとポニーさんが透明化してワープした。
「じゃ37層に行く準備でもしましょう」
俺が言うと皆さんローブを着て準備終了。ミズリさんが俺にローブを貸してくれた。良い匂いがする。
ミアさんとポニーさんが帰って来た。
「広場は重装備の兵隊さんが沢山集まって、何か準備してましたよ。大通りに張って来ました」
「何か軍事行動する気かな? 丁度良かったかもしれませんね。サッサとワイバーンモドキを送りましょう」
全員で37層にワープした。
確かに後ろ足だけで、物凄いスピードでワイバーンとダチョウの混ざったような大きな魔獸が走っている。凄い数だ。
数が増え過ぎて広いフロアを群れでグルグル回っている。
「仕方無いから真ん中あたりに魔法陣を置いて、追い込みましょうか?」
グルグル回っているので、真ん中あたりに空き地が有る。
「儂が置いて来るから、皆で追い込むぞ」
マネさんが透明化して飛んで行った。我々も透明化して空中に上がった。
マネさんが魔法陣を置くと魔法陣が凄く大きくなって、とても見やすい。
マネさんが飛び上がって透明化を解除すると、ワイバーンモドキがマネさんに向かって走り始めた。
魔法陣にドンドン吸い込まれてゆく。凄い数がいるので追い込む必要性が無かった。
ポニーさんがワープで消えたらすぐに戻って来た。
『順調に街に送られて暴れてます!』
魔法陣の中央で適当に雷で刺激してやると、ドンドン魔法陣に入り込んで来る。
相当送っている筈なのだが、なかなか終わらない。何もしなかったら暴走が始まって危なかった状況だったようだ。
結局1時間くらい掛かって全部送り終わった。ボスも出て来なかったけど、普通の冒険者なら簡単に死ねるフロアーだった。
「次のが湧いて来るまでエールでも飲もう。疲れた」
マネさんの提案で宿でエールを飲むことにした。37層は結構暑いのでエールが美味い。
「ロドニー公の方は何時からやるんです?」
ミアさんが聞いて来た。そろそろ取り戻しに行かないといけない。
「そうですね。これが終わったらやりますか」
「これが72時間ですから、4日後で関係者のスケジュール調整しておきます」
ミアさんにスケジュールを任せた。ロドニー公とも今後の相談をしておかないといけない。
「ロドニー公の許可を貰って、ピヨちゃんとヴオフォォーンをあの草原に出したら良いかもしれませんね」
「そうだな。だが。ヴオフォォーンとピヨちゃんは止めろ。相場が下がる。大型化クマとイノシシ、オオカミが良いだろう。あの国の冒険者でも何とかなるぞ」
さすがマネさん。確かにそうだ。
「さて、そろそろ行くか。次のが湧いた頃だ」
マネさんに言われて、また全員で37層に飛んだ。
「全然減って無いように見えますね」
ポニーさんの言うように最初と同じように見える。
「ここはミノルとミアでやれ。儂達は39層を間引きに行くぞ。暴走されると面倒だ」
マネさん達はサッサと39層のヴオフォォーンを間引きに行ってしまった。
「魔法陣の中央に居れば勝手に入って来るから、ミノルは服を預かって休んでいて」
ミアさんは服を脱いで、俺にキスすると飛んで行ってしまった。
確かに、ここは暑い。フロアーの入口で座っていたら預かって抱えているミアさんのローブから良い匂いがする。借り物のミズリさんのローブの匂いと合わさって気持ち良くなって来た。
ぼーっとしていると寝てしまった。




