第8章12話 セルファン王国と小競り合い
結局2時過ぎまで、飲み食いして雑談を楽しんで、今日は面倒だから後日に出直そうと考えていると、
「面倒ですが、そろそろ行きましょうか?」
ロドニー公に言われてしまった。
仕方無いので国境の紛争地帯に行く事になった。ロドニー公は白狼のマントを持っているので、ティアさんには透明化ローブをプレゼントしてあげた。
全員で透明化してセルファン王国との紛争地帯に飛んだ。
「ここですか?」
「はい、山の前の平原に国境が有ります」
「ひょっとして、大分入り込まれてません?」
「そうなんです。奴らはこちら側の山に有る鉱山が欲しいのです。少量ですがミスリルが取れましてな」
手前の山付近まで、沢山の赤い点が警戒に見えている。
「宜しかったら、押し戻しておきます?」
「いや、そうして貰えれば助かります。国境なのに王は動きませんし困っておりました」
「一度帰ってドロン騎士団隊長に後片付けをお願いしませんと」
我々はロルクリンゲンの騎士団訓練場で、ドロン騎士団隊長とフランツ騎士団副隊長に後片付けを要請した。
「坊ちゃん、少し残してくれませんかな? そろそろ実戦訓練もしておきませんと、なまります」
「そうだな。山側の鉱山占拠と草原の平野戦と有るが、どっちが良い?」
マネさんが率直に聞いた。
「我が隊員は弱いですが、山戦は滅多に無いですので経験したいのですが……」
フランツ騎士団副隊長がドロン騎士団隊長の顔を見ている。
「鉱山には何名くらい居ます?」
「そんなに広く無いから100人くらいかな。儂とミズリで援護するぞ」
「なら山をやりますか」
ドロン騎士団隊長とマネさんの話しがついたようだ。
ミアさんがサキバさんとトメラさんフリンさんを連れて来た。
フリンさんは空爆の研修だ。
「呼んでくれてアリガトー。退屈だったんだ」
サキバさんとトメラさんは張り切っている。
「両騎士団と王子親衛隊は山攻めをする。ロドニー公の騎士団はバリアーを自分で張れる者限定で150名の参加とする。300名の数的優位で短時間の戦いとなるので、積極的に戦って貰いたい」
ドロン騎士団隊長の指示に歓声が帰って来た。
「ステン王子とティアさんは僕の両側に位置して下さい。ティアさんはフリンさんをお願いします。横1列で、山側の森から草原までゆっくり進めて雷神か雷撃で進んで行きます。出来るだけ撃ち漏らしの無いようにしましょう」
「総員同時攻撃となる。訓練通り落ち着いて、現地の指揮はドロン騎士団隊長とする。総指揮はミノル司令だ。総員念話オープン」
マネさんが騎士団に指示を出した。
「魔術師は透明化して上空で待機。山攻めが始まったら攻撃を始めます」
我々は先に移動した。
『300メートルくらい後方から攻撃します。漏らしたのを叩き易いですから。ステン王子は僕の右手側、ティアさんは左手側に』
テリッチさんがフリンさんを自分の左手側に置いたようだ。
鉱山の戦闘が始まったようだ。
『では、攻撃開始』
森の中まで警戒には赤い点が沢山見える。ゆっくり進めて片端から雷神で叩いて行く。ステン王子とティアさん、フリンさんは雷撃で攻撃している。
森の中からまとまってファイヤーボールが飛び始めた。めくら撃ちしているようだ。
『魔術師を先に片付けて下さい』
ファイヤーボールが撃たれている辺りに、こちらの攻撃が集中し始めた。ファイヤーボールが飛ばなくなって、また普通の雷神の攻撃に戻った。
森の中に集落が見える。後で様子を確認しなくではならない。
草原に達した辺りで、マネさんとミズリさんが合流して来た。
『鉱山は確保終了した』
マネさんが報告した。随分早かったなと感心してしまった。
『平野戦に突入です。敵の陣地を潰して終了しますので、確実に兵力を削って下さい』
矢とファイヤーボールが飛んで来る。矢の射程外で我々は飛んでいるし、ファイヤーボールも見当違いの場所に撃たれている。
弓部隊と魔術師を先に叩き、敵の陣地を制圧してゆく。指揮用のテントが見えたので雷神を3発連射して指揮官を倒すと、敵兵はバラバラに逃げ出し始めた。
『漏らさず攻撃して下さい。敵兵を減らしておけば後が楽になります』
ドロン騎士団隊長がワープして来て残存兵力を片付け始めた。
『透明化解除』
安全そうな場所に着陸すると、皆さんも降りて来た。空からの攻撃が始めてだったステン王子、ティアさんとフリンさんが興奮気味だった。
「森の中に集落が有りましたけど、無事なんですかね」
「儂も気になっていた。見に行くか」
全員で森の中の集落に行く事になった。
空から見るとホフマン家騎士団が家の中から、人を運んでいる。
我々も降りてみた。家から運び出されているのは全員ダークエルフだった。
「衰弱してます。鉱山で無理やり働かされていたらしいです」
中隊長さんが報告してくれた。
「全員で手分けして治療します」
片端から治療してゆくが栄養失調が激しく、テリッチさんが持っていた栄養ポーションを大量に複製して100人くらい居るダークエルフ達に飲まして行く。
フランツ騎士団副隊長がやって来た。
「ロルクリンゲンの治療院にベッドを確保しました。これから運びます」
フランツ騎士団副隊長の指示で騎士団員がワープで、どんどん運び始めた。
「何処かから連れて来たらしいですね、この辺にはダークエルフは住んでませんから」
「酷い事をするものだ。不愉快になります」
ステン王子が怒っている。
ドロン騎士団隊長とロドニー公も来たので、作業の相談をする事にした。
「敵兵の装備品は全部集めてロルクリンゲンに持ち帰ります。鉱山のスコップだろうが全部持ち帰って下さい。死体は粒状化で、終わり次第全員撤収します」
「再度、占領されます!」
フランツ騎士団副隊長が怪訝な顔をして反対している。
「それが狙いです。再度占領させてから、また取り返します。何回か繰り返せば相手は兵力的にも財政的にも打撃が大きくなりますので、疲弊するのを待ちませんか?」
「ミノル殿、それは面白い作戦ですね。騎士団の経験も増えるし、装備品を売って戦費を賄うことも出来る。いや、面白い」
ロドニー公が乗り気だ。
「兎に角、後片付けを急ぎます。坊ちゃん、明るくして下さい」
ドロン隊長の要請で、精霊魔法持ち全員で鉱山から草原まで明るくして、作業の効率化をした。
サキバさんとトメラさんが先に帰ることになった。トメラさんは店に、サキバさんは用事が有るらしい。
「また、取り返し作戦で呼んでね」
トメラさんが、手を振って帰って行った。
「お世話になって食事も出せなかった」
ロドニー公がガッカリしている。
6時過ぎにホフマブルグの騎士団が現れ、テントを張って大量の食事を運んで来ている。
「全員、100人交代で食事をとること」
ドロン隊長が指示を出した。ロドニー公の騎士団は空腹だったらしく争うように食事を受け取っている。
「お恥ずかしい。本来なら野戦食を出すのは、こちらなのに……」
ロドニー公が情けない顔でフランツ副隊長を睨んでいる。
「フリンさんとティアさん、ステン王子も食べて下さい。騎士団の野戦食は美味しいですよ」
腹ペコの三人がテントに素直に行った。フリンさんは夜に捕り物が有るので7時には帰るので、食べないと死んでしまう。
「皆さんは食べないのですか?」
ロドニー公が不思議そうに聞いて来た。
「今行くと食事だけですが、少し待つと我々にはエールが付くのですよ」
俺が笑って応えるとロドニー公も納得していた。
騎士団の人達が来て司令部用テントを設営し始めた。
「そろそろ用意が出来たらしいですぞ。中に入って座りましょう」
ドロン隊長がロドニー公とフランツ副隊長を司令部テントに入るように勧めた。
全員座るとケバブのサンドイッチみたいのとシチューとエールが配膳された。
「今日は夜戦を考えていたようですね」
「食事でバレましたか」
俺に言われてドロン騎士団隊長が笑って言った。ロドニー公が気になったようだ。
「騎士団の最初のお弁当にだけ出るサンドイッチなんです。凄く美味しいですよ」
「美味いですな!」
ロドニー公とフランツ副隊長が感心している。
「野戦食が美味いなんて驚きです」
「警備隊の作戦中に出るサンドイッチも凄く美味しいのです。不思議な話しでしょう」
俺が言うと、皆さんが戦闘食で話しが盛り上がっている。
「後片付けに時間が掛かりそうなのでトイレの設営まではしておきました」
中隊長さんが報告に来た。
「合同作戦で教えられる事が多いです」
フランツ副隊長が真剣な顔で言った。
結局後片付けが終わったのは、夜10時近くだった。




