第8章11話 騎士団再生
ミアさんとポニーさんが浮かない顔をしている。
「どうしたんです?」
言い辛そうだ。
「ティアさんは良いのですけど他の教えている魔術師達が、やる気無いと言うか……根本的に私達と常識が違うと言うか」
ミアさんがボヤくのは珍しい。毎日全員でロドニー公の所へは行ってられないので、手分けして派遣している。
「空を飛んだりする時は頑張るけど、無詠唱でとかファイヤーボールを使わないでとか言うと『私のやり方が有ります』とか言ってしないんですよ」
ポニーさんもお手上げらしい。
「それじゃ次教えられないもんね。気にしないで進めて行けば良いですよ」
「そうも行かんだろう。ロドニー公の顔も有る。説得してみるか」
マネさんが、珍しく丸い発言だ。
結局、全員で話し合って納得して貰う事になった。
「僕の兄のしがらみで、皆に嫌な思いをさせてスミマセン」
「ミノルちゃんの責任じゃ無いから。気にしないで」
ミズリさんが明るく言ってくれて助かった。
全員でロルクリンゲンの魔術師詰め所に行った。ティアさんがポツンと座っている。
「ミノル様、お忙しい所お手数かけております」
「前にも言いましたけど、様はやめて下さいよミノルで十分ですから。ところで他の皆さんは?」
「少し前までは居たのですけど……」
「何時、戻ります?」
「私以外は先程全員、解雇になりました」
全員ビックリだった。
「何があったんです?」
「あの娘達が、遂にロドニー公を怒らせてしまいまして……」
「怒らせた?」
「貴族の子弟とか親戚の手合いでして、私達に教えるとは生意気だとか色々……」
「それでロドニー公がキレたんですか」
「はい。その場で全員解雇で命令不服従で賠償金も要求されるそうです。契約違反ですからね」
「あらー、ヤっちゃったのね」
ミアさんが面白がっている。
「でも、あの4人は努力しないし才能というか適正に欠けてたから、楽になったよね」
「あの4人はそんなに駄目でした?」
ティアさんが俺に聞いて来た。
「大学出てから何もしてないんですよ。レベル50~60くらいでしょう。だからマイヤー商会で増やしても70いったら良いところだったんです」
「そう言えば、あの娘達は余り増えませんでしたね」
「そうなんです。適正が有るとティアさんみたいにレベル90くらい行くんですよ」
「せめてレベル80無いと自由に飛べ無いし、攻撃も弱いからな」
マネさんの説明にティアさんが聞き入っていた。
「僕、なんか心配なんで騎士団を見に行きます」
全員でゾロゾロと訓練場に移動した。
思った通り騒ぎが起きていた。どうやらロドニー公が100人以上の騎士を解雇したようだ。装備品を返却させている最中だった。
「ミノル殿、ご苦労様です」
ロドニー公がにこやかに寄って来た。
「この人達は全員解雇ですか?」
「そろそろホフマブルグから帰って来るのが居ますけど、150人くらいになるようです」
「150人ですか!」
「はい、この数日ドロン騎士団隊長と、うちのフランツ騎士団副隊長がチェックして、やる気が無いのと反抗的な騎士をリストアップした結果です」
「じゃ、ついでに備品の数のチェックなんかすると良いですよ。横流しが結構有りますから。団員の給料の実際支払額と帳簿の差とかも」
「それは良い事を聞きました。すぐに、やらせましょう」
「実は警備隊の不正が一番凄いですけどね。騎士団と警備隊がやってたら家宰もほぼ黒ですけど」
「いや、今日は勉強になりますな!」
「フルプレートが大量に出ましたね」
「本人の体格に合わせて作ってますので、廃棄ですな」
「使わないなら貰って良いですか? 警備隊の鍛冶部が喜びますので」
「どうぞ、そんな物で良かったら。しかし鍛冶部を持っているのですな」
ミアさんが鍛冶部の頭を呼んでいる。
「ドワーフの隊員達が中心になって、やってます。相当良い物を作り出しますよ」
「やはり人族だけの組織は駄目ですな。この世界では無理が有ると常々思っておりました」
「ホフマブルグの半分、リヒトブルグでは60%くらいが亜人ですので人族だけでは捜査も出来無いです」
親方がやって来た。
「ロドニー公への手土産です。警備隊鍛冶部が打った中剣と短剣です。普段使いにでもどうぞ」
ロドニー公は中剣と短剣を抜いて見ている。
「飾り気の無い素晴らしい剣ですな! バランスが素晴らしい。早速、使わせて貰いますぞ」
短剣を付け替えている。親方も嬉しそうに見ている。
ドロン騎士団隊長が来た。
「人数がほぼ同じくらいになったので、半分ずつ入れ替えて毎日合同練習にしたら如何です?」
「坊ちゃんの言う通りですな。そうしますか。お互いにメリットが有りますからな」
「そうして貰えれば、底上げも早くなります。今のままでは、そちらの見習い騎士に負けるようなのが沢山居る状態ですから」
フランツ騎士団副隊長が嬉しそうに話している。
「お願いしますぞ、もうミノル司令にお願いするしか無い状態ですからな」
ロドニー公が笑って言った。
かくしてホフマン家騎士団、ロドニー公騎士団、ステン王子親衛隊の合同練習が毎日される事となった。
鍛え上げた700名以上の騎士団と、メダル持ちを中心とする魔術師集団で大陸最強となってしまう。
これで戦争も遠のいてくれると助かる。
「王がヒガミますな」
「王様の騎士団を浄化してからでないと、統一行動は避けたいですよね」
「こちらは騎士団を終えたら警備隊の掃除ですな」
ロドニー公も良く分かっているようだ。
「資産調査からして行くと良いですよ。異常に良い屋敷に住んでいたり生活費に沢山のお金を使っていると、ほぼ不正な収入が有る訳ですから」
「まず、家宰から片付けますよ。怪しさ満載ですからな」
「そうですね。楽そうな所から」
ロドニー公は、マネさんとポニーさんが騎士に練習を付けているのを見てニコニコしている。
「マネ殿とポニー殿に勝つのは至難の業ですな」
「あのに二人は強いですから」
「ミノル殿は昼食はどうします? ロルクリンゲンのレストランは宿の食事に負けますが、一度行ってみませぬか?」
「家のお姉さん達が喜びます」
ティアさんも一緒に行く事になった。
「さあ、食べようではないですか。大した物も有りませが山鳥が美味いですぞ」
ロドニー公のお勧めの山鳥とエールを皆で頼んだ。
「食後にでも国境を見に行こうかと思うのですが、紛争地帯は有るのですか?」
「これが有るのです。後でご案内しますぞ」
お姉さんが山鳥を持って来た。凄く大きな半身の鳥だ。香料が鳥にすり込んであるのが分かる。
「美味しいですね。塩味が丁度良いです」
家のお姉さん達も同感のようだ。
「残念なのは、塩味が主体でバリエーションに欠けてますので飽きが来ましてな」
「パトリックさんも、ここに店を出せば良いのに」
「そうですよね。兄に言っておきます」
「パトリックさんはミア殿のお兄さんですかな?」
「はい。マイヤー商会のパトリックです」
「なら親戚になるのではないですか。是非ロルクリンゲンに出店してくれるようにお伝え下さい」
親戚が増えると良いものだなと思いながら、山鳥を味わった。




