第8章10話 合同練習
朝にステン王子も来ていた。
「凄く騎士らしく良い人達ばかりですが、とても弱いですので宜しくお願いします」
ステン王子が申し訳無さそうに話している。
今日の騎士団は精鋭30名、見習い10名、王子親衛隊20名の顔ぶれだ。
総勢70名近くでロドニー公の館、玄関前に到着した。
「ミノル殿。本日はそうそうたる顔ぶれで、有り難いですな。ドロン騎士団隊長殿頼みましたぞ」
今日はレオニー夫人も居て、俺に微笑んで手を振ってくれた。俺も手を振り返すと喜んでいる。
全員でとりあえず騎士団練習場に移動した。
凄く大きく立派な練習場だった。500人の騎士団の練習場だけある
「騎士団隊長のメレンゲです」
とても高そうなプレートに身を包んだ、如何にも騎士という40歳くらいの黒髪の人だった。
ドロン騎士団隊長と挨拶を交わすと、早速隊長同士の手合わせを申し込んで来た。
「では木剣で」
ドロンさんが言っているのに、メレンゲさんは真剣にこだわっている。
仕方無くドロンさんが真剣勝負を認めた。
「ワクワクしますわ」
俺の隣りでレオニー夫人がはしゃいでいる。嫌な予感しかしない。
メレンゲさんとドロンさんが練習場の中心で構えた。ドロンさんは兜も被らず大剣を構えて動かない。メレンゲさんは高そうな中剣を構えて先に動いた。
上段から構えた剣をドロンさんの頭を狙って振り下ろした。練習試合なのに危険な行為だ。
ドロンさんは剣を避けると足を払ってメレンゲさんを転ばした。
「練習試合なのに危険な行為ですな」
ドロンさんがメレンゲさんの喉に大剣を乗せ見下ろして言うと、メレンゲさんは顔を赤くして黙っている。
「メレンゲ。謝罪するか辞職するか選べ」
ロドニー公がメレンゲさんに冷たく言い放った。
メレンゲさんは立ち上がり、黙って練習場から出て行った。
ドロンさんが困っている。
「この中で1番強いのは誰だ」
ロドニー公の問いに5人くらいが立ち上がった。誰が1番かも分かっていない集団だった。
「その5人前に。ポニー殿、誠に申し訳無いが手合わせしてやって頂けませんか?」
「私で宜しいのですか?」
「この者達は己の実力が分かっておりません。是非ともお願い致します」
ポニーさんが俺を見て許可を求めている。
「ポニー、やってやれ。その代わり、お前は木剣だ」
マネさんが指示をしてくれた。
ポニーさんが防具無しで練習場の中心に木剣を持って立った。
「どなたからです? 真剣で構いませんよ」
「斬られても不満を言わない事ですな」
大きな騎士が大剣を上段に構えてポニーさんに切りかかった。ポニーさんは剣を避け木剣で剣を叩き落とした。手首が折れたようだ。
「ここの方は上段が好きなようですね。次!」
結局残りの4名も秒殺だった。
「ポニー殿、有り難う。騎士団の者達よ、己自身の実力を知るが良い。黙って練習相手になって貰い、教えて貰え。良いな」
ロドニー公が騎士団全員に言った。
「お言葉ですが、全員が弱い訳では有りません!」
「中隊長、ここへ」
ロドニー公が発言した騎士を呼んだ。
「ドロン騎士団隊長殿。見習い騎士を貸して下さいますか?」
中隊長が真っ赤になって怒っている?
ドロンさんが見習い騎士を1人呼んだ。
「お前、やって来い」
見習い騎士に木剣を渡した。相手の中隊長さんも今回は木剣だ。
「不束で失礼します。練習をお願い致します」
見習い騎士はなかなか礼儀正しかった。だが3回くらい剣を合わせた後、中隊長さんを切ってしまった。
「馬鹿者! 木剣を何故途中で止めん! だから下手くそと言われるんだ」
ドロン隊長に怒られている。
「諸君、もう分かったろう。素直に教えを請え」
ロドニー公に文句を言う騎士は居なかった。
見ていても仕方無いので我々は魔術師の皆さんに会いに行った。
「ティアと申します」
銀髪に青い眼で背は俺より5センチは高い。美人では無いけど頭の良さそうな素敵な人だ。30歳くらいかな?
後の4人は全員王立魔法大学出身者で27歳から20歳くらい。全員ティアさんが試験して選んだそうだ。
何故か皆さんローブに魔法帽子と杖だ。
「ミノルです。早速で申し訳無いのですがプレートを見せて頂けませんか」
ティアさんは意外と抵抗無く見せてくれた。レベル70前後で揃っている。全てが揃っているのは伸びが無くなっている証拠みたいな物だ。
「両手を出して下さい」
手を握って魔力を送り込んでいく。思ったより入った。2倍くらいになっただろうか。
「これでレベルも上がりますよ。あの魔力で凄い努力でしたね」
「凄いです! こんなになるなんて」
笑顔になると美人に見える。
「これからは空気中の魔素からも魔力を得られますので、回復が早いですよ」
残りの4名はレベル60くらいが多かった。全員の魔力を増やしてゆく。皆さん2倍前後まで伸びた。
「皆さん、まだ増えますので2~3回くらい空にして完全に溜まった時に、またやりましょう」
マネさんと相談して、我が家のお姉さん達が個別で教える事にした。
「もし予算が有ったら、魔法レベルを買ってあげて下さい。レベル80以下では教えられない事も多いのです」
ロドニー公と2人の時に申し込んでみると、快諾してくれた。
パトリックさんと昼に5人連れて行く約束をして、ミアさんにお願いした。
「マネさん、気になるから騎士団の方を見てくるね」
「その方が良さそうだな」
マネさんが笑っている。
「我が騎士団がいかに酷いか分かって頂けましたか?」
「全く練習をしていなかったようですね隊長を解任したのは正解です」
「可哀想と思って我慢してましたが、今日で我慢の限界が来ましてな」
ロドニー公が笑って話している。
練習場に行くと暗い雰囲気で練習している。ロドニー公側のやる気の無さが、モロに伝わって来る。ドロン隊長が困っている。
ステン王子の相手の態度の悪さにステン王子が可哀想になってくる。
「ステン王子。その下手くそで、やる気の無いのは放って置いて僕としませんか?」
ステン王子が嬉しそうに反応した。
「ミノル司令。是非お願いします!」
我々は他の人達の練習の邪魔にならない場所で開始した。ロドニー公がステン王子の相手だった騎士を解雇して、その場で支給装備品を剥奪しているのが見える。
「行きます!」
ステン王子が剣を横に構え突進して来た。俺の近くで横一文字に切って来る。上手くなっている。切って来た剣を上にはね上げステン王子の測体に身体を寄せると、ステン王子は身体を回して袈裟懸けに切って来た。
俺は自分から身体を剣筋に寄せて王子の剣を下に流し、木剣の柄頭で背中を軽く付いて終わった。
「ステン王子、上手くなりましたね」
ロドニー公とドロン隊長が拍手している。ホフマン、ロドニー公側の騎士からも拍手が上がった。
負けたステン王子も満足そうに笑っている。
「ミノル司令の剣に5回触れる目標が、いつ達成出来るのか見当がつきません」
「あと3年はかかるな」
ドロン隊長が笑いながら言うと爆笑が上がった。雰囲気がガラリと変わった。全員が真剣に練習し出した。
「ミノル殿、有り難う。やっと練習に気迫だけは出て来ました」
ロドニー公が嬉しそうに言って来た。
「ただ見ている人達が多いので、ホフマブルグからもう100人くらい連れて来て、こちらから150人くらいホフマブルグに連れて行くのは如何です? 」
「良いですな、ロドニー公のお許しがあれば早速」
「ドロン騎士団隊長殿、許すどころかお願いしますぞ」
早速ロドニー公側から3個中隊を移動して、ホフマブルグから2個中隊連れて来た。
練習効率が飛躍的に上がった。
「しばらく毎日これをやりますか? お互いに練習になりますぞ」
「ドロン騎士団隊長殿、そうして頂ければ助かります」
ロドニー公が嬉しそうに言ってドロン隊長と相談を始めた。
マネさんが来た。
「全員マイヤー商会に行かせたぞ」
「時間が掛かりそうですから、二人でロルクリンゲン見物でもしません?」
「良いな! 行こう」
マネさんと俺は街に行った。久し振りのマネさんとのデートだ。
ロルクリンゲンの街は古くて綺麗な街だった。2人で手を繋いで歩いて行く。
「綺麗な街ですね」
「そうだな、品があるな」
「面白そうな店が無いですね」
「街に活気が無いみたいだな。食べ物屋も少ない」
2人でダラダラ街を見ていると退屈になってくる。冒険者ギルドも小さかった。
「そこのカフェテラスでエールでも飲みますか?」
「良いな! そうしよう」
エールとソーセージとチーズを頼んでみた。
「不味くは無いが美味くも無いな」
「普通なら良いじゃないですか。雰囲気だけは良いですよ」
「そうだな。たまに飲みに来るか」
街は活気が無い分、静かで雰囲気が良かった。




