第8章08話 ノア兄さんの婚約
王都に城壁が突然復活した為に、王都から逃げれなくなった犯罪者が沢山捕まったらしい。
それに付随してセントニアと貴族の奴隷化された婦女子も多数見つかったようだ。
情報隊に入ったハンナさんとアナさんが寮に荷物を取りに行った時、学長と貴族の子弟の学生が寮で待ち構えていたとの事だ。
フリンさんにミアさんとステン王子が付いて行った為、事なきを得た。王様が飛んで来て学長をクビにして、そこに居た男子学生を全員放校処分にしたらしい。
宿で食事が終わった後、ステン王子と王様がチョロチョロしていた訳が分かったのは、暫く後の事だった。
魔法大学のトップクラスを雇えたメリットは凄い物だった。魔法学校の成績上位者のホフマン辺境伯領の警備隊志願が大量に出て来た。警備隊は新たに10名の魔術師を手に入れた。
騎士団にも王立騎士学校のトップ21以下の人材が続々と応募して来た。
王家騎士団が20名の募集をした為、貴族の子弟が成績無視で騎士学校の上位20を取った為らしい。
お陰でいきなり騎士の任命が15名、騎士見習いが10名手に入りドロン騎士団隊長がご満悦だった。
用事で館の執務室に行ったらフェン兄さんが居た。ナンか何時もと雰囲気が違う。
「ミノルー。なんでノアの弟子が見合い相手だって黙ってたんだよ~」
フェン兄さんが完全にイジケている。
「それはね~、フェン兄さんに話すとマズい事が有ったからなの」
フェン兄さんにテルリアさんの事を詳しく話した。するとフェン兄さんの眼がデレッとしてニヤニヤし出した。
「ね! その顔し始めるでしょう。上手く行くものも駄目になるじゃない。ノア兄さんテレ屋だから」
「また、あの眼している?」
「している、している。モロだよ」
「でもさ、ラインレルってロドニー公のペンネームだよ」
「そうなの! 知らなかった」
「そうだよ。あの世界では有名人だよ」
「フェン兄さんがムフフな魔道具作者で有名なのと同じだね」
「ミノルだって今回俺と共同作品作ったじゃない」
「あれは、ミミーちゃんに鞭を打った時、ミミーちゃんが怪我しないように作ったの! 皆さん馬だって怪我するの気にしなさ過ぎなんです!」
「じゃ、傷にならない跡の付かない鎖と腕輪と足輪は?」
「……警備隊用。囚人だって怪我しない方が良いでしょう!」
「パトリックさんが独占販売を申し込んで来ているよ」
「兄さん宣伝したでしょう」
「売れた方が良いじゃない」
「まだ試作品だよ」
「それでイイの! 改良型が出たら、また買って貰えるじゃない」
「そうか……兄さんに任せるよ」
ノア兄さんが執務室に入って来た。
「ノア兄さん、上手く行ってる?」
「行ってる。ところで……あのポーションまた貰えないかな」
「ノア兄さん、まさか……まだ、1週間くらいだよね」
「そうナンだけど………」
「ノア、何時から使った」
「初日から」
「兄さん、ダメだよ相手が幾ら美人だと言っても初日からなんて」
「だってテルリアさんから言って来たんだよ。『私にもラインレル様の本に書いてあるようなポーションが効くのでしょうか』って聞いて来たから、あれはミノルがセントニアの治療用に作った物だから効きますよ。と言ったら是非、私にもって言うから……」
「そう……」
「幾らでもあげるけど、結婚覚悟して貰うよ」
「もうロドニー公に申し込んで来ている」
「速い!」
「とても喜んで貰えたよ」
俺とフェン兄さんは手を取り合って喜んだ。
「ちょっと待ってね取って来るから」
俺は、慌てて最新ポーションと印セットを複製していると、テリッチさんが手伝ってくれた。
「ノア兄さんが大成功なんです!」
「凄い! お祝いですね」
「機能分離型ポーションも必要ですね」
テリッチさんはそう言うと一生懸命複製している。マネさんも途中から複製に参加している。
「まだ一週間くらいなのに、これか?」
詳細を話すと大笑いしていた。出来上がりをマジックバッグに入れて再度館に飛んだ。
「これが普通の奴の新型。効き目30%アップね。このライン1本のが機能分離型ポーション。ぶり返し用なんだけど、ぶり返しって酷いめにあうのが好きな場合にその反対側の本能を引き出して均衡させるわけ。理解した?」
「分かった!」
「2本線のが、その反対側。この時はフェン兄さんの新型アレを使って」
フェン兄さんが新型を1本あげた。
「ミノルとの共同開発。絶対怪我しないから。跡も残らない」
「本当に?」
「本当」
フェン兄さんは、腕輪と足輪に鎖を付けたセットもプレゼントした。
「これも絶対怪我しないから」
「有り難う。専用部屋に付けるよ」
「作ったの?」
「ゴメン。ミノル、明け渡しの時元に戻して返すから」
「いいよ。あの屋敷は結婚祝いに兄さんにプレゼントするよ」
「あんな高級屋敷を貰う訳にいかないよ」
「フェン兄さんなんて街ごとだよ。気にしないで」
「済まんな。何時も貰ってばかりで」
新型焼き印セットもあげておいた。
テルリアさんがドアから顔だけ出している。
「テルリアさん、お入り下さい」
「ミノル様、宜しいのですか? 大事な話しの最中だったのでは?」
「いえ、ノア兄さんとテルリアさんの婚約の話しをしていました」
「お恥ずかしいですわ。この歳まで余り世間と関わらなかったので、非常識で」
「とんでもない。こんな美しい姉が出来てとても嬉しいのです」
「本当にそうですよ。今度サキバにも会ってやって下さい」
フェン兄さんも、例の顔をしないように気を付けている。
「もう是非お会いしたいです」
「錬金術の勉強は進んでますか?」
「はい! 初日からミノル様のポーションを使って心を操る方法を習いました。心配だったのです自分が、その様な普通の事が出来ない女だったらどうしようかと」
出た! 天然。
「よ、良かったですね」
「はい。ノア様の嫁にしていただけるようになった今、毎日そちらの修行もさせて頂いてますのですよ」
ノア兄さんが慌て出した。少し口を慎む教育も必要のようだ。
「今度、フェン様とミノル様もラインレル様の本に書いてあるように、見に来て下さいね」
これは本当に再教育が必要だ。マズ過ぎる。フェン兄さんの目が下がり始めている。
「最新のポーションを兄に渡しておきましたから、勉強の役に立てて下さい」
「嬉しいです! ノア様、早速勉強を再開しましょう。晩御飯までには、まだ時間が有ります」
「そ、そうだね。じゃミノル、俺行くよ」
「兄さんも頑張ってね」
行ってしまった。あれだけアッケラカンとされると、何も言いようが無い。
「あれ外部でやられたら大変だぜ」
「僕もそう思う」
「ノア兄さんも気合い入れてテルリアさんの再教育しないと」
「テルリアさんのペースで進んで行っているよな」
「テルリアさんが歳上?」
「同じかテルリアさんが1つ歳上くらいと思う」
「困ったね。必ず女にペース握られるタイプみたいな感じがする」
「セリちゃんの時もそうだったよな。ベッタリで仕事もしなかったモンな。今は箕輪さんが居るから問題起きて無いけど」
「困った癖だよね」
どうやら二人共再教育が必要なようだ。
フェン兄さんによると、ロドニー公が決済銀行に投資したいと申し込んでいるらしい。
「ロドニー公の所とホフマン領も魔国も取り引きが無いから、決済する物が無いじゃない。銀行に投資されたって困るよ」
「フェンにも同じ事を言っておいたけど、理解しているのか怪しいね」
「すぐ盲目状態になるのは困った癖だよね。王様ですら誘って無いのには理由が有る筈だと思う」
「だよな。ノアは他所の国まで面倒に巻き込むと思って無いみたいだし」
二人で頭を抱えてしまった。




