第8章07話 王都の城壁
フェン兄さんも順調に師匠役をしているのか知らないが、テルリアさんは毎日館か家宰屋敷に通っているようだ。
ミリーさんもテルリアさんが気に入ったようでご機嫌が良い。
そんな平和なが続いていると、必ず変な話が入って来る。王様が話したいと言うので11時に宿の食堂で会う事になった。
宿にマネさんと行くと王様は既にエールと食事に専念している。白身魚のソテーが美味そうだ。
「スミマセンな、呼び出しておいて先に食べてしまって、という我慢出来なかったので」
「いえ、気にしないで下さい」
お姉さんがエールを持って来てくれた。
「実はですな、トメル公爵が動きそうなんです」
「もっと後にして欲しいですね」
「何故今動く気になった?」
マネさんが不思議そうにしている。
「それがですな、マネ殿。王都なら城壁が無いので兵を入れてしまえば魔術師を封じられると考えたらしいのでですわ」
「奴等が王都に入っても攻撃は簡単だが、火を掛けられると面倒だな」
マネさんが不快そうに話している。
「じゃ、城壁を再生してしまいましょう」
「そうだな。我々6人にサキバ、フリン、ステン王子かな」
マネさんが候補者をあげて連絡を取り始めた。
「トメラさんも大丈夫だって」
「それは有り難いな」
マネさんが喜んでいる。顔ぶれが集まり出した。サキバさんと一緒にラルドさんまで現れた。
「昼から暇でしてな、手伝いますぞ」
お姉さんが忙しそうにエールと料理を配っている。
王様とラルドさんが仲良く話している。話題はノア兄さんとテルリアさんだった。
「今、王都警備隊が城壁をまたいだバラックを壊していて、2時には終わるみたいです」
ステン王子が報告して来た。ステン王子は本当に亡命者なのだろうか?
「大学の後輩に4人くらいは手伝い出来るのが居ると思いますよ。貴族の子弟は除いた方が良いと思います」
フリンさんが忙しく食べながら言った。
王様が慌てて連絡をしている。
「貴族の子弟はそんなに使えないの?」
「酷いですよ。司令が見たら、その場で粒状化しかねないです。成績だけは何故か上位ですけど」
「魔法大学が就職斡旋所になってるんだ」
「そうなんです。卒業しても、良い就職は全部貴族の子弟が取ってゆきます」
「だから王宮の魔術師は役立たずばかりなんですよ」
ステン王子まで言い出した。王様が困惑している。
「王宮最高の魔術師だって私より弱いと思いますよ」
ステン王子が自信たっぷりに言った。
「そうだろうな。トトちゃんに鍛えられているからな」
マネさんの一言に全員が笑った。ステン王子が赤くなっている。
「トトちゃん先生は、そんなに厳しいのですかな?」
「凄いですよ。普段は可愛くて優しいのですが、森に入ると『コラ! ステン』ですから」
王様にフリンさんがバラしている。
「良い先生ですな、1度会って御礼を言わねば」
王様が真剣な顔で言った。
「仕方無いのですよ。魔術師は実戦でドジると簡単に死にますから」
一応トトちゃんを弁護しておいた。
「魔法大学は貴族の子弟を除くなら二人しか出せないと言って来ましたぞ」
「それで十分です。二人借ります」
俺が言うと、フリンさんが憤慨している。
「二人の訳が無いですよ! あの馬鹿学長」
「父上。そろそろ首にした方が良いですよ。あそこは汚職と賄賂の巣ですから」
王様が考え込んでしまった。
「魔国も先日改革したら学長以下、教授も4分の3くらいクビでしたな」
ラルドさんも、うんざりして言った。
ステン王子が魔法大学の学生を連れて来た。なかなかカワイイ娘が二人だった。どうしても、そこそこ強い魔術師は女性になってしまうらしい。
魔力を増やしあげると2倍くらいになった。再生も持っているようだ。
二人は顔ぶれを見てビビっている。
「2時から城壁の再生を始める。効率を考え、魔王様とミノル司令と儂が西側を引き受ける。反対側を残った人員で。ミアが指揮してくれ。慣れない者は効率より品質を優先すること。
学生とステン王子は最初、我々と一緒だ。覚えたら反対側の応援に回る。質問は?」
マネさんの指示に質問は無かった。
2時まで全員でエールと料理を楽しんだ。特にフリンさんと学生は必死に食べている。
正門前に移動した。ステン王子と学生に建築物の再生の仕方を教える。
「残った土台ギリギリを狙って再生を掛けるんですよ。やってみますね」
ミズリさんとポニーさん、フリンさんも見ている。
俺が再生を掛けると正門前から西に300メートルくらいの城壁が再生された。
「じゃ、順番にやってみましょう。学生さんは30メートルくらいかな」
最初の茶髪の娘が慎重に再生を唱えた。
「上手く出来ました!」
ラルドさんと王様が拍手している。見物に来ている男子学生が悔しそうだ。
次々と練習してゆく。マネさんが200メートルくらい、ミズリさんとポニーさんは余裕で150メートルくらいの再生をした。フリンさんは130メートルくらい、ステン王子が100メートルくらいだった。
「見張り台は私が再生しましょう」
ラルドさんが見張り台を完璧に再生した。
「残している土台ギリギリを狙って再生するのがコツですな」
ラルドさんはカワイイ娘が好きだ。男子学生に聞こえないように教えている。
ラルドさんが次の城壁を再生した。やはり300メートルくらいだった。
「300メートルくらいが品質を保つ限界ですかな?」
「そうみたいですね。気長にやりますよ」
俺が次の300メートルを再生してから、また学生から再生練習してゆく。上手く行くと嬉しそうににしている。次の見張り台はステン王子がやってみた。
「上手く出来ました!」
飛び上がって喜んでいる。王様も嬉しそうだった。
片側10キロくらいの城壁なので、練習会をしているうちに半分くらい終わってしまった。
「こっちを終わらせてから、東側の応援に行こうか」
マネさんがのんびりモードになっている。ステン王子と学生達が大喜びしている。
学生達は卒業したばかりだが就職が決まって無いと言うので、警備隊に誘ってみる。
「是非お願いします! フリン先輩と働けるなんて夢みたいです!」
「じゃ、辞令渡すね」
フリンさんが警備隊に取りに行った。
「不正ばかりで、貴族の子弟から良い所に入れていくから人材が王都に残らないのですよ」
ステン王子が王様に皮肉を言っている。フリンさんが帰って来て二人にサインさせてしまった。
「今から警備隊情報隊の隊員です。中隊長扱いですので、気を引き締めて働いて下さい」
二人はフリンさんに気合いを入れられていた。
「良かったですな、就職が決まって」
魔王様に祝福されて恐縮している。それからの二人とステン王子は大活躍だった。余りに西側が進んでいるのでマネさんが東側に手伝いに行った。
「もう半分以上進みましたから、休みましょう」
学生は茶髪がアナさん。銀髪がハンナさん。アナさんが11番で卒業、ハンナさんが15番だったそうだ。
「本当ならこの娘達が主席と2位の卒業じゃないでしょうか?」
フリンさんがボソッと言うと、王様が怒っている。
「全部の採用を見直しする!」
付き人に指令を出している。男子学生達が青くなっていた。
ミズリさんとポニーさんも東側に手伝いに行った。暫く雑談していると、東側が再生を追い越して行ったようだ
フリンさんが、二人に飛び方を教えている。才能が有るらしく、すぐに上達していく。
「そろそろ魔力を貯めて。再生を始めるよ」
ラルドさんと王様が世間話をしている。何度見ても不思議な光景だ。
また、アナさん、ハンナさん、ステン王子、フリンさんの順番で再生を始めた。今回は覚える為に2回づつやっている。
「スミマセンな、教育までして貰って」
王様が恐縮している。ステン王子の技術も大分上がった。
ラルドさんと俺が再生をすると東側を追い越した。学生達も飛んで移動出来るようになったので仕事が速い。
「もう一頑張りだ。また晩御飯を奢るから頑張って」
フリンさんの気合いが入った。
西側は5時には終わってしまった。
「何年もかかって作られた城壁なので、全てが新品な状態なのは初めて見ました」
王様が喜んでいる。
「王立銀行も再生出来ますが、再生した途端に貴族と官僚の餌食になりますが、どうします?」
「奴等、待ってましたとばかりに入り込んで来ますからな」
俺とラルドさんに首を横に振って、王様が応えた。
「仰る通りです。もう少ししてからでは無いと、無駄になります」
王立銀行は、今度作る決済銀行の一部分にするつもりらしい。
「ミノル! 終わっているなら何故手伝いに来ない!」
マネさんに怒られてしまった。
「マネさんゴメンね。その代わり情報隊に新人二名入れたから」
フリンさんが辞令をマネさんに見せた。
「そうか……知らずに怒って済まなかった」
マネさんはニッコリ笑って許してくれた。相変わらず俺には甘くしてくれる。
「フリンと二名はミアとトレル警備隊情報隊長の所に行き、宿舎の割り当てと装備品を受け取るように」
マネさんが二人を行かせた。
「さあ、祝いですな」
王様の音頭で宿に全員で向かった。




