第8章01話 マネさん守護者になる
朝に森の精霊様に呼び出された。マネさんとテリッチさんを連れてすぐ来いと言うので飛んで行った。
「ミノル、良く来てくれた。呼び出したのはアデルの事を聞きたくてな。正直アデルの具合はどうなのだ」
遂に来たと思った。
「現在、ぶり返しを治める方法を探しております」
「ぶり返しと言う事は薬物の影響は既に無いと考えて良いのだな。本人の精神的問題と考えるぞ」
「全ての原因が薬物とは言いません。アデルさんが薬物を使っていた時に出来た本人の求める世界と現実との差を、記憶上の世界に逃げる事で解決しようとしていると考えております」
「錯乱か?」
テリッチさんに聞いている。
「それに近いです」
テリッチさんが仕方無しに答えている。
「アデルが守護人ならまだ良いが、守護者が長く信頼出来ない状態は困るのだ。どのくらいで治るのだ?」
「分かりません」
テリッチさんの返答に、森の精霊様が考えている。
「マネ、お前を精霊の守護者とする。良いな」
「全て精霊様のお考えに従います」
マネさんも、あれしか返答のしようが無い。
マネさんのメダルが金色になった。
「ミノル。アデルがあの力を持ったまま錯乱されるのは危険なのだ、分かるな」
「森の精霊様の仰る通りです」
「アデルを精霊の守護人とし、守護人の最低限の力を残そう。アデルの力は全てマネに渡す。これならアデルが治った時に、また信頼を取り戻す機会もあろう」
「寛大な処置に感謝します」
森の精霊様は頷くと消えた。
我々は精霊様を順に詣でてマネさんの追認を貰い、洞窟の池に帰った。俺とマネさんはローブに着替え一息ついた。
「来る時が来てしまったな」
「思ったより寛大な処置だと思いますよ」
俺はマネさんに正直に応えた。
アデルさんを見に行くと相変わらずもがいている。メダルが銀色になっていた。守護主の権限でアデルさんの力を見ると、普通の魔法と精霊魔法だけ残され全てレベル70になっていた。
王立魔法学校卒業のトップレベル程度だ。凄く寂しい気がした。
「儂は全て450超えだ。魔王様に貰った再生魔法もレベルアップしている」
本当に全てマネさんに移したようだ。
「アデルさんは自分が精霊の守護人に下げられた事にも気が付いて無いでしょうね」
「どこかに行って、また以前の生活に戻れると考えいるみたいですね」
「アデルさんとマネさんの今までの魔法レベルを考えると、凄くレベルダウンです」
「そうだな。困ったな」
「マネさん錬金術大全読み終わっているのでしょう?」
「うん、だがページは白くならんぞ」
「僕の本を横から見ているからじゃないですか? はいこれマネさん用」
新品の錬金術大全を渡す。マネさんが本を開くとページの文字が消えて行った。
「ほらね、だから師匠無しの人は本が大切なんですよ」
「済まん」
「早く正式錬金術師になって、アデルさん用のポーション開発を手伝って下さい。それと錬金術師になると相乗効果で魔法が凄くレベルアップするんです」
「そうですよ。私みたいに先に錬金術師だと効果は無いのですが、ミノルさんやマネさんが錬金術師になると、凄いレベルアップになるのです」
「温泉の池に皆、居るかな? 儀式しに行きましょう」
温泉の池に全員居た。
「皆さん、マネさんが錬金術師になりました。儀式をしますので付き合って下さい」
お姉さん達の拍手の中で儀式は始まった。妖精さん達も集まって儀式を眺めている。
いつものように10分くらいで儀式が終わった。
「マネさん、おめでとう御座います。錬金術師となりました」
全員の拍手の中、マネさんが照れている。
「凄く知識が入って来るでしょう」
「うん、凄いものだな」
「皆さん。本日マネさんが精霊の守護者となり、アデルさんが精霊の守護人となります。これは森の精霊様の決定です」
全員一瞬シーンとしてから、マネさんに祝福をした。皆、今までの体制ではやって行けない事は分かっていたようだ。
「アデルさんは今どんな具合なんです?」
ミアさんが聞いて来た。正直に話すしか無い。
「アデルさんは現在薬物の影響下に無いのです。但しぶり返しと言う状態になってます。脳が薬や魔法の影響下にあった時の記憶を持っているので、その記憶を使って自分が満足していた時に戻ろうとするのです。
その記憶がローン伯爵とかクロージク公爵みたいなアデルさんを壊そうとした連中が自分に満足を与えてくれると信じているので、そこに戻りたくなるんです」
「良く分からない」
ミアさんが混乱している。
「例えばゴブリンの村に長く居て助け出された場合、後に戻りたくなる人と2度と行きたく無い人に別れるでしょう。
戻りたくて戻った人は多くの場合、年に何回も出産して最後は衰弱して死ぬか精神的におかしくなるかでしょう。皆さんみたいに2度と行きたく無い人は、あそこの快楽の記憶と戦った人達と考えて下さい。
アデルさんは戦う気が無くゴブリン村の経験を美化している人と考えると、分かりやすいのかな?」
「凄く分かり易い。さすがミノルちゃん頭が良いわ。私も記憶の快楽と屈辱を相手に戦ったもの」
ミズリさんが理解したようだ。
「私も理解出来ました。自分に照らし合わせてみると良く分かります」
ポニーさんも分かったようだ。
「アデルさんの場合、ゴブリン村みたいなもので無くて魔法や薬物で作り上げたものだから面倒ですね」
ミアさんも理解出来たようだ。
「薬物と言っても僕が皆さんに渡しているポーションは、自分で効果を無くせるでしょう。そろそろ元に戻ろうとか、仕事の呼び出しとかで自分で中断できるのですよ。
治療用も1時間とか2時間とかの効果分で切れておしまい。だから警備隊も使えるのです。でもセントニアみたいな薬は次が欲しくなるし、使えば使う程欲しくなって自分では止められないのです。
僕の作るポーションは積極的な快感で、セントニアのやる気の無さと人に従う効果を消します。
でもセントニアの従う効果と積極的に快感を求める効果が同時に成立すればアデルさんみたいになる訳です」
「それにどう対処するんです?」
ミズリさんが聞いた。
「本能の反対側と思ったんです。自由にされる願望を自分に向けるなら、自由にする願望を与えて中立に持って来れないかなと」
「そんなポーションが有るのですか?」
「有りますよ。皆さんに渡しているポーションは中立に配合しているだけで、多少の攻撃性を持たせたものは作って有ります。まだ、テストして無いだけです」
テリッチさんがポニーさんに応えている。
「中断ポーションも作って有るので、自分でテストしょうかと思ってます。飲めばどの位の効果かすぐ分かりますから」
「テストなら私がしますよ。テリッチさんは効果を見た方が良いでしょう」
ミズリさんがテスターに手を上げた。
「私もします!」
「私も、テストは多い方が良いでしょう?」
ポニーさんとミアさんも手を上げた。献身的なテスターが増えた。
「1時間用しか無いので、中断ポーションが必要なら言って下さいね。テスターの体力も有るでしょうから」
ミズリさんがポーションを渡され、一気に飲んだ。顔が紅潮している。効いて来たようだ。ミズリさんがこっちに向かって来た。
「ミズリさん! ちょっと……」
ボロボロになってテストが終わったのは2時間後だった。
「1時間用だったのに、変ですね?」
テリッチさんが俺に回復魔法を掛けた。
ポニーさんがポーションを飲んだ。
「テリッチさん! テストって……」
ポニーさんとミアさんのテストも、ほぼ2時間ずつだった。
遠くにテリッチさんの『良いテストが出来ました』と話す声が聞こえたような気がして、また意識が無くなった。




