第7章25話 間引き
朝起きたらまだ9時少し前だった。隣でマネさんが戦術本を読んでいた。
「ミノル、もう起きたのか。昨日は大変だったから神経が参っているな」
勉強会を開いてくれた。意識が戻ったら昼過ぎだった。凄く気が楽になっている。
「マネさん、有り難う御座いました」
「何を水くさい。帰ったらテリッチにもしてもらえ」
「はい」
マネさんとテリッチさんには頭が上がらない。
身仕度をして三人でお詣りをして食事に行った。
「早速あの鳥のソテーです。最高級の鳥肉を楽しんで下さい」
「楽しみだな、エールも頼む」
エールを配られている時ミアさんとミズリさんが現れた。
「いいな、私も」
ミズリさんがボケているのにミアさんは元気が良かった。
「ババアはダメです」
ミズリさんが情けない事を言っている。ポニーさんが現れた。
「ミノルさん、昨晩の魔石はマイヤー商会に届けておきました」
流石に軍人さんだ。
鳥が配られて行く。
「美味い鳥だな、ミノル感謝するぞ」
「パトリックが今度間引いたら100羽くらい欲しいと言ってましたよ。滅多に手に入らないそうです」
「フリンがミノル司令にお礼を言って欲しいと、泣いてましたよ」
フリンさんは余程困っていたのだろう。
「本当に美味しいですね、初めて食べました」
テリッチさんがニコニコしている。
「60万デルの鳥肉ですものね」
「32層は冒険者でいっぱいになりますよ」
「怪我人だらけになると思いますよ、本当に危険な鳥です。凄いスピードと重さで何羽も突進して来るんですから」
ゴチャゴチャ話したり三人に再生魔法を掛けたりしていたら2時を超えてしまってた。楽しかったが仕方無いので行く事にした。
ダンジョン警備隊事務所に行くと大騒ぎしていた。31層で死亡事故だったらしい。
「禁止にしてなかったの?」
「無理矢理ワープで飛び込んで二人死亡三人帰還です。逮捕しました」
「5年の刑だったっけ? 良くやるよね」
青い顔をして三人座っている。彼等だったらしい。
「じゃ間引きに入りますので」
「ご苦労様です」
31層は訓練で使うので32層に行った。黄色い巨大ピヨピヨが大量にウロウロしている。死亡事故を起こした奴等が出したままだ。昨日よりは少ない。
お姉さん達がローブを脱ぎ捨てて飛んで行く。
「ミノルちゃん休んでなさい。私達でやるから」
ミズリさんが俺の頭を撫でて飛んで行った。凄く気を使ってくれる優しい人だ。美人だし性格は良いし人間扱いされないなんて王都は変な所だ。
お姉さん達でボスまで簡単に片付けてしまった。俺はマジックバッグを持ってピヨちゃんを集めに行った。皆さん手伝ってくれたので簡単に4袋ができた。翼竜の魔石を取ってお終い。
「ミノルさん座って待ってた方が良いですよ」
ポニーさんまで気を使ってくれる。2回目にお姉さん達が飛んで行った。
全員、俺より5センチは背が高い。日本に居る時は同じ年くらいの自分より背が低いカワイイ娘が好きだったのに、現実は全く違っている。不思議なものだ。
お姉さん達が終わらせて帰って来た翼竜の魔石だけ取って来ている。
結局4回やって最初の半分以下になった。飽きて来たので33層に行った。
「こんなんじゃ汗もかかないですね」
ポニーさんがボヤいている。お姉さん達が飛んで行った。低空で飛んで獲物を引きずり出している。大量に狼を貯めてから攻撃を始めた。草原を埋め尽くした大型狼を叩いて行く単調な仕事だ。大きなトカゲを倒して終了。
「退屈だが魔石を採りに来た冒険者だと思い諦めよう。放置してモンスターが街を襲う危険性が有るからミノルが決定した事だ」
「そうですね。我々がたまたま守護主であるミノルちゃんが推薦してくれたたからメダルを得て、その普通では無い力で単調に感じているけど普通の人達が簡単に死ねる相手ですから」
マネさんの意見にミズリさんが同意している。ミズリさんの意見に逆らう者は居なかった。
更に4回やって、やっと半分くらいの数になった。
「皆さん、そろそろ休むか止めましょうよ。少しずつ毎日する方が良いと思いますよ」
既に5時を過ぎていた
「ミノルさん34層に何が出るか見て止めませんか?」
「ポニーさんの考えは正しいと思いますが、僕はそろそろ危険だと思うんです。本人が気を付けていても長時間の単調な作業は注意力散漫になりますから。僕の大切な仲間であり家族の皆さんに危険を冒して貰いたくないのです」
全員納得してくれた。
「私、パトリックにピヨちゃん渡してすぐ帰って来ますね」
そう言うとミアさんはローブを着てワープして行った。
『温泉の池を解放しませんか?』
テリッチさんが三人用チャンネルで念話して来た。
『儂は賛成だ。気軽に集まれる場所は必要だ』
『僕も構いませんが』
『ミノルが恥ずかしがるだけだ』
ミアさんが本当にすぐ帰って来た。
「皆さんを招待する場所が在りますが来ませか?」
テリッチさんの招待に皆のって来た。
「そのままで大丈夫ですよ」
そう言うとテリッチさんが全員連れてワープした。
「ここは『温泉の池』です。この地脈と契約した者しか入れません。つまり私達だけの場所です。他の人には話さないで下さいね」
「こんなに綺麗な場所は初めて見ました」
ポニーさんが驚いている。
「以前ミノルが削れて倒れた時、ここに浮いて治療した場所だ。皆は自由に使って良いが、安全の為にも他言は無用に頼む。池に入ってみるが良い、疲れを取り瞬時に浄化してくれる」
お姉さん達がキャーキャー言って池に入った。
「気持ちイイー」
「妖精さんが居る!」
「スゴーイ」
高校生のノリだ。マネさんとテリッチさんも池に入って行った。
「ミノルちゃんもおいでよ、恥ずかしがらないの」
「そうですよ、さっき家族と言ってたじゃないですか」
ミズリさんとミアさんが呼んでいる。
「皆さんが嫌かと思って」
「ミノルちゃん早くおいでよ」
ミアさんとミズリさんの間に入った。
「ミノル真っ赤」
ミアさんに笑われた。
「ミノルちゃん、また削れているんでしょう? ゴブリン帰りの特技に頼りなさい」
ミズリさんが思いっきりキスしてから胸を吸わせてくれた。力が抜け意識が薄くなっていく。白い世界の心の暖かさと平穏に浸っていった。
気が付くとミアさんに抱えられていた。近くで騒いでいる人達が居る。
「起きたの、まだ早いわ。もう少し休みなさい」
ミアさんが長いキスしてくれてから胸を吸わせてくれた。また意識が無くなっていく。ミアさんのは魔人さんのポッポの香りがする。爽やかさと安心感に包まれて真っ白の世界に入って行った。
起きたらテリッチさんが抱えて居てくれた。
「私は変わっばかり。あの3人がずっと交代でやってくれてたんですよ。ミズリさんは飲み過ぎて寝てますけど」
土手でお姉さん達がワイワイやっている。
「皆さんに迷惑掛けたんですね」
「皆さん喜んでやってくれてましたよ。ミノルさんも、すっかり良くなって。起きましょう」
テリッチさんが座らせてくれた。顔を洗って、口を濯ぎサッパリとした。10時を過ぎていた。
「ミノルさん食事に行きます?」
ポニーさんが聞いてくれた。
「ミズリさんを置いて行くのは嫌ですね。ここに有る物で良いですよ」
「ミノル、ここに温かいのを取ってあるぞ」
マネさんがマジックバッグを出した。
「マネさん、有り難う」
マネさんがニッコリと笑ってくれた。
せっかく安心して居れる場所が出来たのだから、嬉しいし羽目も外せる。それが我々の信頼関係だと思う。
以前、アデルさんが言っていたように孤独だったんだと思う。日本に居た時の俺が家に帰ってネットで繋がるのも孤独を癒やしていたのに過ぎないのかもしれない。
今の俺には仲間も大家族も居る。ここに居る皆もそう思ってくれたら嬉しいなと思った。




