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第7章24話 大暴走


「テリッチさん、アデルさんの症状ってセントニアじゃ無いような気がして来ているんですけど」


 飛行訓練前の暇つぶしに、アデルさんをツンツンしながら言ってみた。考えがまとまらなくなって、助言が欲しかった。


「実は私もそんな気がして来ているのです」


「どうしてだ?」


 マネさんが聞いた。人に説明すると考えが整理されるのでやってみる。


「セントニアの初期症状は、気力が無くなって逆らわなくなるんです。余計な事を考えたり心配もしなくなる。アデルさんにはその症状が無かったんですよ」


「確かにそうだが、王都に居る間にその症状が有ったのかもしらんぞ」


「だって帰って来ていたし、色んな理由を付けて僕を避けて積極的に自分を壊す連中の所に行ってましたよ」


「確かにそうですね」


 テリッチさんがツンツンしながら考えている。


「もっと変なのは中毒になってからなんですよ。セントニアの場合、思考力が落ち依存心が強くなり衝動的に行動する、義務感が無くなり嘘をつきその発覚を恐れ家族や親しい人達を避ける。普段の生活でも常識外れな行動をする。

 セリちゃんには当てはまるけど、アデルさんとは違う気がするんです」


「どう違う?」


「アデルさんは、より積極的なんですよ。魔壁を壊された時は凄い快感と言っていたでしょう。自分を大事にして嘘や犯罪を続けるセントニアと逆なんです。自分を壊す者に積極的に従い飛び込んで行くような感じです」


「確かにそうです! 結果は似ているけど過程と動機が全く違う!」


 テリッチさんの言葉で確信を持てた。


「元の麻薬を探さないと駄目ですね」


 テリッチさんが真剣に言った。

 0時になったので、アデルさんを池から出してポーションを与えてから出発した。

 31層の入口にミアさん、ミズリさんとポニーさんが既にローブを脱いで待っていた。まだ慣れないせいか少し赤面してしまう。


「ミノルさん赤くなってますよ、カワイイー」


 ミズリさんがそう言ってキスしてくれた。自分で真っ赤になったのが分かる。


「真っ赤になってますよ」


 ポニーさんが両手で俺の顔を挟むようにしてキスした。フラフラして来た。


「ズルい私も!」


 ミアさんが強く抱きしめ、舌を入れてキスしている。俺は腰が砕けて座り込んでしまった。

 実は異世界に来た時、マイヤー商会の秘書のミアさんは憧れの人だった。全員さっさと海竜退治に行ってしまった。俺は暫くして正気に戻り、皆に隠れて浄化魔法を使った。ミアさんの時、ついに爆発してしまったのだ。

 気が付いた時は既にミニ版のヤマタノオロチとの遊びになっていた。ミズリさんだけ少し動きが悪い。ポニーさんの学習能力は凄いなと思った。


「私の動きが凄く悪いのだけど、ミノルさん何でか分かる?」


 帰って来てミズリさんが聞いて来た。


「力が入っているのと、左手の使い方が悪いのだと思います。もっと思い切って動かすんですよ」


 俺の隣にいたポニーさんまで腕を動かしている。


「ポニーさんは腕は問題無いです。脚が消極的に動いているんです。人前で恥ずかしいならズボンを履くと良いですよ」


「恥ずかしいのでは無くて、ミノルさんが私なんて汚れ物は見たくも無いだろうなと思ったのが出ちゃうんですね」


「それは考え過ぎだポニー。儂やアデルはもっと酷い過去だぞ」


「嬉しいな、人間扱いして貰って。ミノルさん有り難う!」


 いきなり抱きしめてアデルさん式に上を向かせてキスされた。また真っ赤になって力が抜けていく。気が付くとミズリさんに変わっていた。長く深いキスだった。


「ミノルちゃん有り難うね」


 ミアさんが力の抜けた俺を抱えて優しく床に寝かせてくれた。抱えられた時にまた爆発してしまった。ミアさんが浄化魔法を掛けてくれた。


「ミノル、自分でコソコソ浄化魔法を使わないの」


 ミアさんに言われて恥ずかしくて死にそうだった。力が抜けた状態で見ていると違和感の原因が分かった。海竜みたいな奴の数が少ないのだ

 皆が帰って来た。


「海竜の数が減っていると思いませんか?」


「そう言えば私が遭難した時の半分以下ですね」


 ミズリさんが汗を拭きながら考えている。


「ダンジョンは定数のモンスターが出る筈なのに変ですね」


 ポニーさんも汗を拭きながら不思議そうだ。


「大暴走かもしれませんね」


 テリッチさんが言った。


「大暴走って何ですか?」


「ミノルさん、知りません? 200年くらい前にも有ったのですが、ダンジョンのモンスターが異常発生して外に溢れ出るのですよ。全滅した街も有るのですよ」


 テリッチさんは長生きしてるので物知りだ。


「そう言えば大蟻も大発生でしたよね」


「確かめないと危険だ。32層に行くぞ」


 マネさんの決定に皆が同意した。


 32層は草原と森だ。全員で入って行くと黄色い太った大きな鳥が大量に現れた。


「全員飛んで!」


「ミノル、何だあれは」


 マネさんが聞いて来た。


「見た目カワイイのですが、凄いスピードで突っ込んで来るので危ないんですよ。本当に速いですから」


「凄い数ですね、片付けましょう。雷撃で良いですか」


 ポニーさんが聞いて来た。


「はい、結構強いので雷撃が良いです」


 全員散って雷撃を降らせて行く。全員で32層を往復して、やっと終わった。


「ボスが出たぞ!」


 マネさんの注意で振り返ると、翼竜みたいなのが飛んでいる。いきなりブレスを吐いた。お姉さん達の雷神を食らってアッサリ落ちた。

 俺が一生懸命黄色い鳥を集めてマジックバッグに入れていると、皆が寄って来た。


「ミノルちゃん鳥を集めているの?」


「これは最高級の鳥肉なんですよ。美味しいですよ。宿に寄付しようと思って」


 ミズリさんに説明すると、皆が手伝ってくれた。30羽くらい集めた。


「冒険者ギルドでも高く買ってくれますよ。フリンさんにあげようかな、勤めたばかりで金欠だろうから」


「ミノルちゃん優しい! フリン本当に金欠だから喜ぶと思う」


 マジックバッグをミズリさんに渡すと、皆でまた30羽くらい入れていた。


「1羽、60万デルくらいと思いましたよ」


「あの娘、大金見て発狂するかも」


 皆で大笑いした。

 メダル持ちは支度金も給料も桁違いに高く、宿と食事も俺持ちなので余裕が有る。フリンさんも高給なのだが大分状況が違うのだ。給料日には、まだまだだし大変だろう。

 翼竜の魔石だけ取って入口に戻った。もう一度やってみると少し減っているのが分かる。

 全員でさっさと翼竜まで片付けて3回目をやってみた。鳥さんは半分近くにはなったのだが、まだ多い。サクッと片付け、33層に行ってみた。

 ここは両側に森で草原だった。


「何が出て来ても、とりあえず飛び上がって下さい」


 皆、俺の要請に頷いた。

 足を踏み入れると両側の森から大きな狼が大量に飛び出して来た。以前アデルさんが毎日街道で狩っていた奴だった。飛び上がって見ていると、あっという間に草原を埋め尽くしてしまった。

 全員で片っ端から片付けて行く。全滅させるのに相当時間が掛かってしまった。ボスは超大型トカゲだった。長い舌を振り回して粘液を飛ばしている。

 粘液が落ちた場所から煙りが上がっている。危ないので離れた場所から、お姉さん達の雷神総攻撃で終わらせた。

 テリッチさんが粘液のサンプルを取っている。ポニーさんとミズリさんが魔石を取って帰って来た。


「警備隊と騎士団の資金ですからね」


 有り難かった。皆で気を付けていてくれている。


「明日にしません? きりが無いですよ。お腹も空きましたし」


「何処も開いて無いだろう」


「ベッドハウスの食堂が24時間やってますよ」


 全員で行く事になった。

 4時近い時間なのに人が多い。知っている親方さん達が挨拶してくれる。邪魔にならないように、隅の席を取った。夜定食やソーセージ、串焼き、エールを片っ端から買って席に運んだ。凄く安い。


「乾杯!」


 結構美味しい。皆ガツガツ食べている。ミズリさんとポニーさんがエールを買いに行った。

 夜勤の交代時間なのか、風呂上がりの人達が食堂に入って来ている。

 5時過ぎまでエールと話で楽しんでから帰る事になった。31層から封鎖して明日2時くらいから間引き再開とした。

 ミズリさんは冒険者ギルドに行って、フリンさんにプレゼントを渡してから帰ると言ってワープして行った。

 我々も宿に行き開いたばかりの食堂に鳥を届けた。お姉さんに凄く喜ばれた。

 洞窟に帰ってアデルさんをツンツンしてたら、テリッチさんが寝かせてくれた。


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