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第7章18話 メダル持ちの過去


「ミノル、セリはどうするつもりだ」


 マネさんに聞かれてドキッとした。考えないようにしていた訳では無いが、決定を避けていた事は確かだ。


「メダルも装備も僕預かりです」


「メダルを取ってあるのか?」


 メダルをポケットから出して見せる。サンドイッチを食べていたアデルさんが動きを止めた。


「どうするつもりだ?」


「本人が本気で治す気が無いと中毒が治らないと思うようになりました。これが甘えの原因なら、本人の為に精霊様に返そうかと思ってます」


「そう思うなら早いほうが良いぞ」


「はい」


 ノア兄さんと館で会う事にした。

 執務室に行くと兄さんが既に来ていた。


「セリちゃんの事なんだけど」


「守護人の返上なら気にしないでやってくれて良いよ」


「兄さん、済まない」


「俺も錬金術師になってミノルが言ってくれてた意味が分かるようになった。あれは甘えから駄目になったし、甘えで真剣に治そうとしていない」


「そう思うんだ。甘えの原因がメダルを僕預かりにしている事じゃないかと思うようになったんだよ。何時かまた元に戻れるってね」


「俺もそんな気がする。違ったとしても良いじゃないか、返そう。考えが子供過ぎると言うミノルの考えが正しいと思うよ」


「そうするね……何でも言って、力になるから」


 洞窟の池にとりあえず帰った。アデルさんは既にポーションを飲んで自分の世界に入っていた。


「アデルが気にしていた。これで真剣に治そうとしてくれると良いのだが」


 マネさんはわざとアデルさんの前で話したようだ。


「兄は賛成してくれました」


「さすがノア様だ。セリは自分の行いを後悔すらしていない。薬の特徴とは言え甘過ぎる」


「アデルさんにも良い影響が有ると思いますよ。自分が見放される事は無いと考えている面が有りますから」


 テリッチさんが冷静に言った。


「心を読んだのですか?」


「はい。嫌でしたけど……ポーションを飲んで意識が薄れる所を読みました。ミノルさんの優しさに甘えている所が見えました」


「そうですか……」


「アデルはぶり返しの最中だ、気にするな。ぶり返しという事は治って来ている証拠だ」


「山の精霊様に会います。マネさんも来ませんか?」


「良いぞ。ミズリを呼ぶか?」


「ミズリさんはやる気が有りますかね?」


「覚悟はしてある筈だ。ミズリなら反対する者もおらんだろう」


「私もミズリさんに賛成です。頭も良いし、優しい努力家です。ミノルさんの役に立ってくれると思います」


「では呼びますか」


 マネさんが念話で呼んでいる。


「宿の食堂に居る。行こう」


 テリッチさんも行くことになった。


 食堂でミズリさんがコーヒーを飲んでいる。


「ミズリ。山の精霊様に会う、一緒に来い」


 マネさんの強引さが羨ましい。

 4人で山の精霊様に会いに行った。


「ミノル、珍しく真剣な顔だな。どうした?」


「これを返上にまいりました」


 セリちゃんのメダルを受け取りジッと見て言った。


「精霊の守護主の決定だ。認めよう」


 山の精霊様は、セリちゃんのメダルを空中で消滅させた。


「その娘がセリの代わりか?」


「はい。ミズリさんといいます」


「どれ、ミノルの役に立ちそうだな。真面目そうだし、優しさも有る。良いな」


 山の精霊様も真剣にミズリさんの適正を見ている。


「ミズリよ私と他の精霊に力を貸し、ミノルの助けになる意志は有るか?」


「はい! 命に代えても」


「そうか。ミノルは、とても強く知恵も有る。だが、お前より遥かに若い。他の守護者と守護人で心を支えてやれ、良いか?」


「はい! 全身全霊で」


「これが精霊の守護人の証しだ」


 メダルがミズリさんの首にかかった。


「これから難しい時が来る。精霊達と守護主の役にたてるだけの力を与えよう。期待しているぞ」


 精霊様が消えた。我々は他の精霊様に追認して貰うのに順番に詣でていった。

 精霊様達が俺の弱さを知って気にしているようで、有り難く思った。


「精霊様達が僕の面倒を見ろと言ってましたが、我々は精霊様の為に存在したます。そんなに僕を気にしないで良いですよ」


「いえ! 私が精霊様達へ誓ったのです。ミノル様の為になるなら何でもさせて頂きます」


「あの……困ったな。せめて様は止めましょうよ。ミノルで十分ですから」


「せめてミノルさんくらいにしてやれ。ミノルが困るだろうからな」


 マネさんが笑っていた。


 全員で宿に帰ってミアさんとポニーさんを呼んだ。2人共宿に居たらしくすぐに歩いて来た。


「ミズリさんがメダル仲間になりました。長い付き合いになりますが宜しくお願いします」


「ミズリさん、これはメダル持ちの透明化リングです。絶対外さないようにして下さいね」


 使い方を説明されミズリさんが透明化したり戻ったりしている。


「ミアさん、ミズリさんに守護人の服と装備をお願いします」


「はーい」


 我々は洞窟の池に帰った。


「ミノルさん、アデルさんが時々ヒクヒクしてますでしょう。あれ、魔法を使おうとしているような気がしているのですが」


「そうなんですか? 命令が発動しているのに弱い反応ですよ」


「ポーションで弱まってしまうのと慣れみたいで、だんだんヒクヒクが弱くなっているような気がします」


「もっと強いのが必要なのか?」


 マネさんが心配そうにしている。


「あれで一番強いのですし困りました。きっとワープして行こうとしていると思います」


 まだ潰して無い所にワープされると面倒だ。


「補助印なら試作で5重丸が有りますけど僕の作った試作ですので」


 テリッチさんに持って来て見せた。


「錬金術師大全を読んで作ったのですが、僕の工作能力だと5重丸がやっとでした」


 テリッチさんが魔力を通して見ている。


「私で実験しましょう」


 テリッチさんの献身的テストをすることになった。前の印を消そうと治療したが消えなくゴブリンの治療魔法で消えた。


 印を押し直してテストしてみた。

 テリッチさんに実行不可能を指示を出すと、硬直して顔も身体も赤くなり力の入った筋肉が見えるようだった。


「これ、凄いですね。これなら慣れる事が無いと思います」


「じゃ、テリッチさんは消して元に戻します」


「いえ。私はこのままで良いです」


「テリッチだけではテストにならんから儂も押しなおせ」


 仕方無いので、マネさんも押しなおして指示を与える。マネさんも身体を反らして歯を食いしばり、真っ赤になった。


「これならワープも出来まい」


 マネさんも元に戻すのを拒否した。


 アデルさんの意志が無いうちに印を押し直した


 テリッチさんの予想は当たっていた。アデルさんはビクッとして硬直した。とても魔法が使えるとは思え無い。


「成功だな、これでアデルを置いて出れる」


「そうですね、誰かが見張っているのでは三人で御飯にも行けませんよね」


 マネさんとテリッチさんの言う通りだ。


「村の経験者は治療魔法まで効かなくなるんですね」


「効かないのでは無く効果が下がるのだ。特に柔らかい皮膚の火傷などは深いので効き辛い」


「人間の組織は半分くらいになっているのですが、年月が経つと人間の組織が増えて逆に体調不良になるのですよ」


「儂とアデルは行ったばかりだから、特に効き辛い。ミノルの治療と再生が有り難い」


 アデルさんが、またビクッと痙攣している。麻薬は怖ろしいと思った。再生をかけておいた。


 三人で昼飯に行った。三人家族に慣れて来ているのが寂しい。


「今日のお昼は海老フライです」


 お姉さんがエールを持って来て注文を取って行く。テリッチさんに再生を使っていると、ミアさんとポニーさんとミズリさんが昼食に来た。


「テリッチさん、何処か悪いのですか?」


「違いますよ。私は例の村に捕らわれていたので、だんだん組織がおかしくなって来るのでミノルさんに戻して貰っているのですよ」


「エー! ミノルさんゴブリン魔法使えるんですか?」


 ミアさんが驚いている。


「出来るよ治療と再生なら」


「私にもして下さいよ。2度と行きたくないので放置してあるんです」


「ミアさん、村に居たの?」


「16歳の時、商売敵に拉致されて放り込まれました。1年以上掛けてやっと見つけて貰ったんですよ。お陰で身体がガタガタです」


 そんな可哀想なことが有ったんだ。


「知らなかった。良いよ毎日やろうよ」


「ミノルさん私も」


 突然ミズリさんが言った。


「冒険者やって間もなくゴブリンに捕らわれて2年後に助けられました。お陰で嫁にも行けません」


「関係無いでしょう」


「そんな事言うのはミノルさんだけですよ。世の中では知られると汚物扱いです。私もお願いします」


「ポニーさんも!」


「ヘンドリックス辺境伯に1年入れられました。財政難で私の給料が払えず、寝ている時護衛隊に襲われて気が付いたら村でした。それ以来馬鹿みたいに安い報酬で雇われて……行き場が無く、逆らうと公表すると脅されるし。身体がガタガタですよ」


 何で俺の周りはこんな人ばかりなんだろう? 考えてみれば何か理由が無ければ、こんな優秀で綺麗な人達が残っている筈も無いような気がする。


「海老フライでーす」


 皆で海老フライとエールを楽しみながら話しをした。普段別行動なので、とても楽しい。


「私が一番ババアですか。後2ヶ月で27歳ですから」


「歳の話しは止めましょう、私は270歳を超えてます」


 ミズリさんにテリッチさんが応えると、皆さん大笑いになった。


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