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第7章17話 錬金術師兄弟


 テリッチさんが新しい機材に夢中になっている。今では手に入れる事が不可能な物を作ったり、便利な試薬を作って御満悦だ。

 マネさんと狩りの話しをしていると、テリッチさんが新作の石を持って来た。強い意志を保つ効果だそうだ。


「凄いが、疲れてしまいそうだな」


 マネさんが指摘に俺も同感だった。


「そうなんですよ、これを付けていると疲れるだろうなと思って造りました」


 皆で大笑いしてしまった。


「ミノルさんは最近、一緒に研究しないのですね」


 テリッチさんに言われて動揺してしまった。


「テリッチさんの息抜きなんじゃないかなと思って、遠慮しているんですよ。常に皆で居ると疲れて来て1人になりたいとか、違った顔と居たいと思ったりするのかなと考えたんです」


「それでですか。私は250年以上1人でしたから、そんなに1人になりたいと思った事は無いですね。ミノルさんと2人で作業したり、薬草を採りに行くのが最高の楽しみですもの」


「そうでしたか。ならまた一緒にやらせて貰います」


「どうしたんです? そんな事考えて」


「アデルさんが王都に行くようになったのも、息抜きだったのかなと思ったんです。結果が最悪になりましたけど。

 マネさんと冒険者ギルドに行くと、ダンクチームと狩りに行くのも息抜きと思っているんです。マネさんが帰って来た時に見せてくれる嬉しそうな顔が大好きなんですよ」


「ミノルが考えてくれているのは気が付いていた。有り難いと思っているのだが、テリッチと同じで2人で居たい方が多いな」


「そうでしたか。考え過ぎでした、ごめんなさい」


「アデルがまだ完治していないので、ミノルが考え過ぎるのは仕方ないのだ。気にするな」


「そうですよ今のアデルさんは週に2回、ポーションに1日中浸かっているのが最高の息抜きだし楽しみだと思いますよ。先日、自分でもそんな事を言ってましたけど」


 テリッチさんの証言に少しガッカリした。


「そう言ってましたか」


「アデルが完治していないのが、そこなのだ。自分の楽しみを中心に考えてしまうのだ。

 ポーションを飲んで自分だけになり、訓練で楽しんで満足する、それだけが今のアデルなのだ。ミノルの都合など考える余裕が無いのだ。

 あれでも相当良くなっている。普通なら廃人なのだ。もう暫く我慢してやれ」


 マネさんの言う通りだなと思った。


「最近ミアさんとミノルさんが一緒の時が有るので、少しホッとしてます。帰って来ると元気になってますから。アデルさんの特徴に似た所が有るのでしょうね」


「儂もそう見ている。アデル役が必要なのだ」


「僕はマネさんとテリッチさんで十分ですよ。今にアデルさんだって治ってくれるでしょうし」


 アデルさんが起きたので話しが中断してしまった。ポーションが切れたので、サンドイッチとエールをあげると一生懸命食べている。

 食べ終えると池で寝汗を流し、口を濯いで戻って来た。魔法禁止をアデルさんに宣言し直して、ポーションをあげるとまた自分の世界に帰って行った。

 この間アデルさんは声を出す事も無い。テリッチさんがぶり返しの期間が来たと教えてくれた。この周期が、だんだん長くなって治ってゆくのだそうだ。


「ノア兄さんは大変だね」


「私もそう思いますよ。アデルさんは印も有るし、錬金術師が2人居ますから」


 フェン兄さんから緊急連絡が来た。


「フェン兄さんから緊急連絡でした」


「何か起きたのか?」


「大事件だそうです。錬金術大全のページが真っ白になってパニクってます。皆で行って祝ってあげましょう」


 テリッチさんが大笑いしている。3人でローブを着て館に行った。ノア兄さんとサキバさんも来ている。


「フェン兄さん、とんでもない間違いをしたね」


「そ、そうなのか?」


 サキバさんが心配そうに見ている。


「ミノルさん、真面目に!」


 テリッチさんに怒られてしまった。

 テリッチさんが大全の中を確かめて言った。


「心を落ち着けて、錬金術大全を両手で持って胸の前に。表紙の文字が自分で読める方に。そうです」


 テリッチさんが左手を大全に右手をフェン兄さんの頭に置いて、呪文みたいなのを唱え出した。10分くらい掛かって儀式が終わった。


「錬金術師。おめでとう御座います」


「兄さん良かったね。オメデトー」


「フェン殿、おめでとう御座います」


 フェン兄さんが茫然としている。


「大全を見てごらん」


 フェン兄さんが中を見ると文字が戻っていた。


「免許皆伝だよ兄さん」


 サキバさんがフェン兄さんに飛びつき、よい匂いをポッポと振りまいている。


「テリッチさん、実は俺も……セリちゃんが何かしたのかと思って」


 テリッチさんがノア兄さんの錬金術大全を見ると、真っ白だった。

 早速儀式を始めた。やはり10分くらいの儀式で文字が戻った。全員に祝福されたノア兄さんの笑顔は久し振りに見るものだった。


「めでたいのだから皆でエールでも飲もうよ」


 俺の提案で宿で祝いをする事になった。面倒ばかりだったホフマン家に春が来たようだ。


「ノア兄さんとフェン兄さんの錬金術師、おめでとう御座います。乾杯!」


 全員の祝福に兄さん達は涙を浮かべている。騒ぎにミアさんとポニーさんが部屋から出て来た。当然一緒にお祝いになった。


「完全な錬金術師になると、何が起きるの?」


 フェン兄さんが聞いて来た。


「本に書いて有る以上の知識と能力が手に入ります」


 テリッチさんが説明していた。

 ステン王子が現れた。事情を聞いて、何故か大喜びして兄さん達にオメデトーを言っている。

 宿のお姉さん達とコックさんまで勢揃いで祝ってくれた。


「兄さん達に祝福を」


 光の粉をバラまいてやった。マネさんテリッチさん、ミアさんとポニーさんまで祝福魔法をしたので一瞬、前が見えない程の光の粉に包まれた。


 最後にミズリさんが夕食に帰って来て大宴会になってしまった。兄達がこんなに多くの人達に祝福されるのは生まれて初めてだろう。本当に嬉しそうな、そして楽しそうな顔をしている。


 宴会は夜の10時まで続き、お開きとなった。サキバさんとステン王子がダウンしたのだ。


「また皆で飲もうな」


 フェン兄さんの言葉にノア兄さんが大きく頷いていた。


 洞窟の池に帰って三人で池に浸かって疲れを取る。流石に6時間の宴会は疲れた。

 マネさんがキスをしてくれた。力が戻って来た。テリッチさんもキスをしてくれた。気分がスッキリして来た。

 頭がスッキリしたら閃いた。


「テリッチさん、ぶり返しの間ポーションに漬けてしまうのはどうでしょう。栄養素入れた12時間ポーションとかで食事は1回にして、好きなだけ虚構の世界に浸らせてしまうのです」


「面白いですね。発想の転換ですね。あのポーションは1週間の連続使用で大丈夫らしいですからテストにも良いかもしれないですね」


「どこで1週間のテストをしたのだ?」


「フェン様がやったと言ってサキバさんに叩かれてましたよ」


 俺は力が抜けてしまった。マネさんが大笑いしている。


「どうやって、ぶり返しが終わったか知るのだ」


「僕は本人がポーションを止めて欲しいと言い始めると思ってます」


「そこで止めるのか」


「いえ、セントニアの特徴で少し良くなると嘘をついて治療を逃れるんですよ」


「そうですね。止めて欲しいと言ってから3日くらいは続けたいですね」


 テリッチさんが容赦ない。

 俺とテリッチさんで栄養素を入れた12時間ポーションを作った。押収した新機材で濃縮率が上がり、栄養素を入れても同じ量で済んだ。


「アデルが気が付いたぞ」


 マネさんが報告してくれた。

 俺はアデルさんの上半身を抱えて起こし、食事を与えずにポーションを飲ませた。水を続けて飲ませる、凄い汗だ。顔を上に向けゲップをさせて、身体を元に戻すとまた自分の世界に帰って行った。

 テリッチさんが浄化魔法でアデルさんの身体を清めている。


「上手く行くと良いな」


 マネさんがボソッと言った。


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