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第7章13話 31層救助要請


「以前テリッチさんが錬金術大全を読みたかったと言ってましたけど、錬金術師になる時はどうやって勉強していたんです?」


 妖精の池でテリッチさんの薬草集めを見ながら聞いてみた。


「昔ながらの師匠が弟子に口伝えですよ」


「でも、テリッチさんの師匠は免許皆伝みたいな人で無かったんでしょう?」


「はい。でも基本的な事は東の錬金術師に習っていたんです。師匠は怠け者で実験や作業が嫌いで、実践面の知識に欠けて儀式が与えて貰えなかったのです」


「中途半端な知識で人に乗り移ったりしていたんですか?」


「そういう知識だけ集めて術を作ったりする訳ですよ。王都にも何人か居ますでしょう」


「テリッチさんは何故育てられたんですかね?」


 唇を曲げるような形にして、少し考えている。仕草がカワイイ。


「楽をしたいのと、育てて乗り移りの対象だったと思いますよ。薬草集めからポーションの作成、魔法陣書きまで何でもやらされましたから。その分、基礎知識と実践面の知識が増えて私が修行を終わらせてしましたのですよ。10年以上かかりましたけど」


「よく師匠が儀式を与えましたね。そのまま使っていれば楽を出来るのに」


「師匠が馬鹿だから、高く売れる物を何でも私に作らせたんですよ。市場に出れば他の錬金術師が変に思う訳ですよ。それで東の錬金術師が師匠の所に調べに来て、私が儀式レベルになっているのがバレたんですね。

 東の錬金術師は私に儀式を与える事で、自分の名声が飛躍的に上がるので喜んで儀式しちゃった訳です」


「師匠は功績を盗まれた訳ですか」


「そうなんですよ。それで私が何故か恨まれて、ボロボロのローブ1枚だけで追い出された訳です」


「儀式が終わった錬金術師なら雇って貰えるんじゃないですか?」


「王都とか大貴族の所に行ければですね。旅費どころか食べるのでやっとでした。紹介状も無いですし」


 酷い話しだ。


「じゃ僕みたいに本を読みながら、師匠に教えて貰うのは余り無いんですね」


「あんな高価な本を弟子に与える師匠なんて居ませんよ。あの本は本来なら王立図書館辺りで、特別許可を貰えた人だけ読む物です」


「そうなんですか。あの儀式は何の為にするんです?」


「地脈との契約なんですよ。あれで地脈の力を借りて契約者だけの能力が与えられるんです」


 テリッチさんは集めた薬草をまとめている。


「温泉の池に移動しますよ」


 テリッチさんと移動した。相変わらず池から出ていても暖かい。


「ミノルさんは退屈じゃ無いのですか? 私は楽しいですけど」


「前にも言いましたが、僕はテリッチさんの薬草集めに連れて来て貰うのが大好きなんですよ」


 テリッチさんがニコッと笑った。


「東の錬金術師さんも性格が悪いのですよね」


「とても綺麗な方ですけど、性格は最悪と言われてますね。3回くらいしか会った事が無いですけど」


 テリッチさんが採取した苔を確かめながら話している。


「どんな印象でした?」


「16歳の時に儀式して貰った時に30分くらいと、13歳くらいの時にいきなり現れて私の作ったポーションを根こそぎ持って行って私が2日間の飯抜きになった時ですか。後は4歳くらいの時に師匠に買われて挨拶に行っただけですよ」


「じゃ、話した事が無いんだ」


「無いですね。何か気になる事でも?」


「最近、東の錬金術師さんの報告が多いから気になって」


「どうせ借金だらけで返済するのに悪事をやって、また逃げるのに借金しての繰り返しですよ」


「大変なんだ」


 集めた苔をしまってから。テリッチさんも池に入って来てキスしてくれた。


「錬金術師なんて貧乏か最悪の人間かしか居ないようなものです。私はミノルさんのお陰でこんなに幸せですけど、稀なんですよ」


「僕こそ一緒に居て貰えて、本当に感謝しているんですよ」


 アデルさんとマネさんが現れた。


「テリッチ随分と薬草を集めたな」


 マネさんがアデルさんと池に入って来た。


「ミノルさんと来ると仕事がはかどるんですよ」


「ミノルは邪魔するだけだろう」


 アデルさんが笑いながら話している。本当に健康的になったと思う。


「そう言えば地脈が日本の地脈とぶつかった場所はどうすれば良いのでしょう?」


 テリッチさんが思い出したように言った。俺も完全に忘れていた。


「我々には何もしようが無い。先日見たら荒野が草原になっておった。宿場跡近くの湖は広がりが止まってたぞ」


 流石マネさん、見に行ってたんだ。


「ミノル、31層で死亡事故で数名孤立。ミアから救助要請だ」


 アデルさんがワクワク顔で伝える。

 せっかく平和に過ごしていたのに。仕方が無いので洞窟の池に戻って服と装備を整え31層に直接ワープした。我がお姉さん達は相変わらずローブを被っただけだ。

 ミアさんが待っていた。


「真ん中辺りでバリアーを張って立ち往生みたいです」


 凄い数の海竜みたいのが海側からニョキニョキと長い首を出してブレスを吐いている。バリアーの辺りは首だらけで何も見えない。

 この層は海と少量の浜しか無いようだ。海竜は混乱しているのかバリアーの周囲以外のはブレスをメクラ打ちしているようだ。


「ミノル、これを頼む」


 アデルさん、マネさんとテリッチさんがローブを脱いで俺に渡して飛んで行った。


「司令、これ頼みます」


 ミアさんもローブを脱いで飛んで行ってしまった。ミアさんも副司令補佐官になってからローブになっている。飛行訓練をやり出すとローブが好きになるようだ。


 海竜はここから雷神を撃てば片付くのに。4人はバリアーの周りの海竜をサッサと片づけ、外から更にバリアーを張って被害者の安全を確保した。

 そこら中に飛び交うブレスを避けながら氷弾を撃ち込んでいる。ミアさんも飛行技術が上がっているようだ。全員ブレスをギリギリで避けているのだが、危ない感じは無い。

 確かに服を着ていれば動きが遅くなって火達磨になるだろうけど、救助要請の時に訓練しないで簡単に終わらすという考えは無いようだ。

 海竜の数が徐々に減って終わると思った時、大型の頭が5本生えている海竜が現れた。ヤマタノオロチの小型版だ。

 お姉さん達は今度こそ雷神で終わらせると思ったら、また氷弾を撃ち込んでヒラリヒラリ始めた。バリアーの中に居る被害者の立場になって考える気が無いようだ。

 4対5の闘いは見ていて楽しかった。ステン王子に付いているポニーさんが可哀想に思える。


 ボスを倒すと、あの嫌な感じが無くなった。何だったんだろう? 皆のローブを抱えて飛んで行くと、アデルさんが上掛けしたバリアーを消していた。

 中に三人の女性冒険者が居た。確か王都から来た人達だ。我々は彼女達と話すことも無く32層を見に行った。

 32層は森と草原だった。


「楽しかったです! 風呂に入ってから、警備隊には私から報告しときまーす」


 ローブを受け取るとミアさんは着ないでワープして消えた。

 我々も洞窟の池に帰った。お姉さん達は凄くご機嫌だった。


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