第7章11話 パトリックさんとの1日
「随分と大きな壁の土台ですね」
パトリックさんに誘われてマネさんとリヒトブルグの谷に来ている。
「15メートルの高さだと、この位の土台が必要なのですよ。二等辺三角形の壁にして吹き込む熱風を空に逃がしてしまうのだそうです」
なる程、専門家は我々とは違うなと思った。
「蟻の巣用の漏斗は運んであるのか?」
マネさんが聞く。
「既に運んであります。この土台が造られる前でないと運べませんから」
「ですよね。そういえば忘れてました。パトリックさんにプレゼント」
透明化ローブをあげた。複製も出来るし余りまくっている。
「何です?」
「透明化ローブ。30層のご褒美に出るんですよ」
「良いのですか?」
「どーぞ。着てみて下さい。透明化しますよ」
パトリックさんが着てみて喜んでいる。
「有り難う御座います。こんな珍しい物」
「畳んでポケットにも入れられるので重宝しますよ」
小さく畳めるのでニコニコしてポケットにしまっていた。
我々はパトリックさんの要望で蟻の巣に移動した。既に漏斗は蟻の巣の出入り口の側に置いてある。
「始める時は冷気を送って、蟻の動きを鈍らせてから一気にやる予定です」
「ファイヤーボール辺りで溶かすんですか?」
「そうなんです。凄い量なので魔術師が沢山必要になるのですよ」
「儂等も手伝うぞ」
「良いのですか?」
「やる時は言って下さい。そのくらいやりますから」
「助かります。中途半端な魔術師ばかりで困ってたんですよ」
「何時やる予定です」
「ミノルさん達が手伝ってくれるなら、インゴットを運び始めますよ。明後日くらいには始められますよ。気温が上がる前で早朝になりますけど」
「構わないですよ。早く言って下さいよ。どんどん仕事を終わらせてしまわないと」
「話しは変わりますが、ベッドハウスなんですがホフマブルグとリヒトブルグを魔法陣で繋げたいのですが、やって良いですか?」
「確かに、その方が分散出来ますね。やりましょう。
「食堂と風呂が満杯の時が出て来ているのですよ。繋げると、何とかさばけそうで」
「そんなに利用客が居ます?」
「ホフマブルグのハーレムの人達が利用し出しているみたいです」
「思いがけない利用客ですね」
「そうなんです、ビックリしました」
「ハーレムは風呂が少ないのだ。とても古い家屋が多いからな」
マネさんが教えてくれた。
「ハーレムは意外と家賃も高いのでワンルームが思ったより需要が有りますよ」
「今出来るダンジョンのベッドハウスを優先しましょうよ」
「もう工事を始めました。暴動でも起こされると面倒ですから。男用100ベッド、女性用300ベッドです」
「そんなに女性利用が多いのですか?」
せ
「今や工事現場の7割が女性ですから」
「あそこを中継地点にするなら村に発展させる用意も必要ですね」
「そうですね。森の奥で薬草が相当採れるらしいですよ」
「ダンジョンの中も薬草採りが沢山居るみたいだぞ」
ダンジョンの入り口に三人で移動した。
入り口前の以前警備隊詰め所が有った場所で、建設が始まっていた。2棟の結構大きな建物だ。
「警備隊ダンジョン詰め所も、この建物に入ります。あのテントじゃ寒いですから。
続きの別棟が風呂と食堂、売店ですね。造る予定が無かったのですよ。魔法陣でホフマブルグのを使う予定が、全く狂いました」
「向かいの建物は何に使うのだ?」
「冒険者ギルド、狩猟ギルドと薬師ギルドの出張所です。買い入れが主になります。ワープ出来ない人も多いですから」
「こうして見ると景色が良いですね」
「そうだな、警戒で見ても魔獸らしいのは余りおらんしな」
「そうなのですよ。現状では普通の動物が殆どです」
「パトリックさん、ここでワンルームのテスト貸し出ししたら良いかも知れないですね」
「ミノルさん、それ良いかも知れないですね。やってみましょうか? 建築の作業員は、まだ余裕が有るのですよ。壁工事が終わってませんから」
「風呂とトイレ付けて35000デルくらい? 1日1000デルチョット。風呂付だと安過ぎですね。薬草採りでも借りる事が出来るけど。パトリックさんに任せますよ」
「建築中に考えてみます。警備隊が貸します? それともマイヤー商会が貸します?」
「予算立てて無いからマイヤー商会でも良いですよ。興味が有れば」
「警備隊がすると失敗出来ないから、経営のテスト兼ねてマイヤー商会がやりますよ」
「そうして貰えると助かります。これで上手く行くなら実験農場の村も使えるかも知れないですね」
「なる程、あの村は閉めてホフマブルグに移住させようかと思ってましたが、考え直す余地は有りますね」
「ホフマブルグは人が増え過ぎですからね。ヘフナドルフにマイヤー商会で土地買ってましたよね」
「有りますよ。安かったので買っておきました。ミノルさんの土地も有ります。
「あそこ港拡張の港湾工事が入りますよ。壁工事も」
「そういえば港湾工事が有りましたね。商人は全員ホフマブルグとリヒトブルグに気を取られてますよ。
ホフマブルグとリヒトブルグの壁工事が終わる前に、ヘフナドルフにも建築作業員余りの間にワンルーム建てます」
久しぶりにヘフナドルフに行く。
「良い立地ですね」
港に向かって並んだ商店の裏の土地が殆どだ。
「道の拡幅工事で商店が移動した時に買っておいたのですよ」
「港湾作業員も借りるから、少し多めに作っても借り手は居ますよ」
「そうですね。家族持ち用の広いのも必要ですね」
三人で話しながら歩いていると、何時のお爺さんが港で手を振っている。
「魚、食べましょうか?」
「良いですね。少し疲れました」
お爺さんの所に歩いて行く。
「兄さん、久しぶりじゃな」
「魚、食べに来ました」
「今日は良いのが有るぞ」
「焼いて下さいよ」
ヒラメの大きいような魚を持って来て捌き出した。お孫さんがエールを運んで来た。
お爺さんの塩コショウ味は久しぶりだ。フライパンにバターを入れ魚を焼き始めた。
「腹が減るな」
マネさんがワクワクして待っている。
香ばしい魚が配られた所で、三人で乾杯して食べ始めた。
「美味いな! これは美味い!」
「姉さん始めてだな」
「マネさんです。これから宜しくお願いしますよ」
「こちらこそじゃ」
お爺さんは次の魚をフライパンに入れている。
「あの港の向こうの建物は何です?」
「どこかの阿呆が観光宿を建てたのじゃよ。港湾工事が入る事は誰でも知っているのに」
「お客さん入ってます?」
「何故か荷馬車ばかりだ」
「マネさん、トレルさんとジャンさん呼んで下さい」
すぐにドロン騎士団隊長、ジャン警備隊隊長、コロン騎士団情報隊長、トレル警備隊情報隊長、ミアさんまで勢ぞろいで飛んで来た。
お爺さんに聞いた話しを伝えると、観光宿に走って行った。
アデルさんとテリッチさんが来た。
「ミノル、早く呼べ!」
「姉さんも久しぶりじゃな。ほら」
テリッチさんと魚を配られ、アデルさんがゴキゲンだ。
「こちらテリッチさん。宜しくお願いします」
「兄さんは美人好きじゃな」
お爺さんはフライパンを2つにして、魚を焼き始めた。
「凄く美味しいです!」
テリッチさんが喜んでいる。
警備隊と騎士団が100名くらワープして来た。入れ違いにミアさんが我々の所に来て座る。
「私も食べたい!」
パトリックさんが笑ってミアさんを、お爺さんに紹介した。
「パトリックさんの妹さんかい!」
我々は魚とエールで盛り上がっていった。
観光宿はセントニアの倉庫だった。




