第7章10話 訓練再開
「アデルさん、本当にいきなり30層で大丈夫?」
「大丈夫だ。余りボスを長持ちさせないで、少しずつ伸ばして行く」
三人共、ダンジョン特訓をやりたかったらしい。全員張り切っている。
「儂とテリッチは良いから、ミノルはアデルだけ気を付けてくれ」
マネさんの言葉に従って、監視をアデルさんに重点を置くことにした。
0時前なのに30層の移動ホールには誰もいなかった。夜間にダンジョンに入るのは安全上禁止しているのだが、我々のようにワープで移動ホールには来れるので無駄な規制になっている。
ダンジョンに入ってしまうとワープが使えないので、戻るのも大変なレベルの冒険者は比較的安全な場所にバリアーを魔道具で張り、キャンプして高価な薬草や鉱石を集めている者も居るらしい。
30層の入口に我々は立った。俺は透明化して三人の監視とローブ預かり係りだ。邪魔だから3人のローブはポケットに入れた。
マネさんが先頭に立ってボスの出現場所に進んで行く。
「ブオオーン」
3体のボスが出て来てボス戦が始まった。3人がそれぞれ自分用のボスを決め、各自訓練をしている。
アデルさんは俺に近い場所でブレスとファイヤーボールを除ける訓練らしい。飛行技術向上には最適なのだが、俊敏な動きと体力が必要だ。
少し動きが鈍っているのかギリギリで避けている。ローブやマントを着ていると確実に当たっているだろう。
氷弾を撃ちながら避けているうちにリズムが出て来た。ヒラリヒラリと動きに軽快さが出て来た。
まだマネさんやテリッチさんには劣るが、充分戦える感じがする。マネさんの飛行能力は全く衰えていない。筋肉を再生したら元の動きに戻っている。凄い能力だ。
アデルさんがボスを片づけると降りて来た。俺は透明化を解いて、ローブのポケットからタオルを出してアデルさんに渡した。アデルさんが汗も拭かずに、俺に抱き付いて思い切りキスしてくれた。
「ミノル、済まなかった。こんな日を返してくれて感謝してるぞ」
アデルさんが泣いていた。
「二人でそんな事してると火達磨になるぞ」
マネさんとテリッチさんが、ボスを倒して側に来ていた。
「済まん。余りに嬉しくてな」
マネさんとテリッチさんにもタオルを渡した。2人も汗でビショビショだ。
「早く汗を拭かないと風邪引きますよ」
俺が即すと三人が汗を拭き出した。ホールの中央にご褒美が浮いていた。
また透明化ローブだった。
移動ホールに帰って座り休息を取る。アデルさんだけ汗が出続けている。消耗もして無いようだし、制御用ポーションも飲まない。動いた方が良いのかも知れない。
30分休息して20分の訓練と決めた。俺はローブを着たまま透明化して隅に座る。
2戦目のアデルさんの動きは相当良くなって来ている。まだ踊るようには動けない。1ヶ月近く身体を動かして無かった事を考えると素晴らしい。
2戦目が終わった時のアデルさんは、池に浸かっていたみたいに汗だらけだった。
「身体が、どんどん楽になっている。訓練は良いな」
水をガブガブ飲んで水分を補給している。汗で毒素みたいな物が排出されているようだ。
3戦目を終わらせて今日の訓練は終わりとした。全員の動きが見違える程良くなっている。全員汗だくなので洞窟に帰って池に入る事になった。
ちなみに、2戦目も3戦目もご褒美は透明化ローブだった。我が奥様達は全員要らないとの事で溜まる一方だ。
池から上がりエールとサンドイッチで夜食を取っていると、アデルさんが暗い顔で俺に言って来た。
「マネもテリッチも印が3つ押してあるのだが……私は駄目なのかな」
すっかり忘れていた。悲しそうな顔をしているアデルさんに謝って早速補助印をしてあげた。
テストをするとアデルさんも、この方が良いらしいのでテスト4連発をしたら、池に叩き込まれた。
気が付くと妖精の池でマネさんに抱えられていた。
「ミノル、気が付いたか」
「僕はどうしたんです」
「アデルに池に叩き込まれて、浮き上がって来て寝てしまった。疲れが溜まったのであろう。忙しかったからな」
「こっちに移動したのですか?」
「そうだ。洞窟では長時間浸かっていると脱水が起きるからな」
アデルさんは、まだ毒素が抜けて無いのでマネさんとテリッチさんが交代で面倒を見てくれているらしい。
「アデルは就寝用の治療ポーションで寝かせてある。ミノルも、もう少し寝ておれ」
マネさんに吸い付いているとまた寝てしまった。
次に気が付いたら9時過ぎだった。
「ミノルさん、オハヨーございます」
テリッチさんが優しい笑顔で言ってくれた。テリッチさんから離れ、起き上がった。
「精霊様詣りをしてしまおう」
アデルさんが朝から元気だ。
全員で服装を整えて、精霊様詣りを終わらせた。宿で朝食を取る事にする。
食堂でミアさんがコーヒーを飲んでいた。
「オハヨーございます」
「待たせてゴメンナサイ」
「私も来たばかりです」
お姉さんに全員の朝食をお願いした。ミアさんさんが早速今日の報告をしてくれる。
「漏斗は大きいのが出来たのですが鉱石ごと熱していると残りカス避けたりで上手く行かないので、多少純度が低くても良いので精製中です」
蟻の巣の話しだ。最近、後少しが進まなく残っている懸案が多い。
「ホフマブルグのベッドハウスは初日からずっと満杯で、利用者から不満が出て来てます」
「そんなに人気が有るんだ」
「凄い需要です。付帯の風呂と食堂も24時間賑わってます。壁工事も3交代ですし、夜中でも食事が出来て風呂に入れるので大好評です。
工事現場の人達が夜仕事を終えてから、エールが飲めるのも人気です」
「早くベッドハウスを増やさないと不味ですいね。リヒトブルグだけでも壁工事が終わると良いのだけれど」
「まだまだですよ。谷の壁工事も始まってますから」
「ですよね」
「ダンジョンのベッドハウス建設に期待するしか無いですね」
「需要が減った時の事も考えておかないと」
「パトリックが言ってましたが、あの森は大きいのであそこ等辺に中継地点が必要と狩猟ギルドや薬師ギルドも考えていて期待しているみたいです」
「ダンジョンの村が出来てしまいますね。どんどん進めるようにパトリックさんに言って下さい」
「了解でーす」
「この朝の報告会は良いな」
アデルさんが感心している。
「隊長さん達にも評判が良いですよ。個別の重要案件は司令と話す前に知らせる事が出来るし」
「全員で集まると時間が掛かるしね」
「守護人の欠員をどうします?」
ミアさんが聞いて来た。
「セリちゃんは、まだまだ無理みたいですよ」
テリッチさんが応える。
「もっと大人になって貰わないとね」
「ポニーで良いではないか」
マネさんが気軽に言う。
「本人のやる気次第ですよ。普通の人で無くなってしまうのですから」
皆それを考えると黙ってしまう。
「忘れてました。東の錬金術師がパスコ王国から逃げ出したと言う情報が入ってます」
「あの方は仕方無いですよ。全ての聖域から締め出されてますし」
テリッチさんが冷たい。
「何で締め出されたのです?」
「ミノルさん知りませんでした? あの方は昔、精霊の守護人だったのですが、メダルを取り上げられたのですよ」
「何やったんです?」
「詳しくは知りません。私の生まれる前の事ですから。あの方が何かやらかして守護人が居なくなったみたいですよ」
また話しが500年くらい遡りそうで、頭が痛くなって来た。




