第7章07話 ステン王子亡命
館の大広間には、兄達も来ている。
「ミノル、任せた」
フェン兄さんがいきなり責任放棄宣言だ。
「ずるいよ。後やってよ」
「ミノル頼む。責任は持つから」
ノア兄さんまで逃げ腰だ。仕方無いので矢面に立つ。
「ステン王子。遅れましたが、ミノル司令です」
「こちらこそミノル司令殿。ステン第4王子です。ステンと呼んでください」
「じゃ僕もミノルと呼んでください」
「親衛隊の皆さんには、独身者には宿舎を提供出来ます。家族持ちの皆さんには家を提供します。
ステンさんには館の部屋を提供出来ますが」
「政治的には、館では無い方が良いと思いますが。ホフマン家が私を監禁していると見られる可能性も有ります」
「それも言えますよね……取りあえず宿にでも泊まりますか。良い露天風呂の有る宿が有りますよ」
「ステン王子様。さすがにそれは……」
50歳近い灰色髪で頬髭の大男が文句を言っている。
「ウルス親衛隊隊長です。有能なのですが、心配症で口うるさくって」
「ウルスさんも同じ宿なら如何です?」
「そうしようウルス。ミノルさんを困らすな」
兄達に王子を任せてパトリックさんに来て貰った。
「この前再生した家、8軒用意出来ます?」
ホフマン家の収入の一端でボロ家の再生が有る。土台の立派なボロ家を再生すると、高級な家になる。土台だけ利用して立て直した家が、土台の古い記憶の家に変わるのだ。
「売りに出したところです。一寸待ってて下さい」
パトリックさんが、念話している。
「8軒確保しました」
マイヤー商会の人が来て、家族連れを案内している。
ドロン騎士団隊長にお願いして、独身の親衛隊員を騎士団の寮に案内して貰った。
「ステンさん、服と装備品を変えませんか? そのま
まだと狙って下さいって言っているみたいですよ」
「そうして貰えると助かります」
「パトリックさんお願い出来ます?」
「ミアさん、ステンさんの護衛をお願いします」
王子とウルス隊長が、パトリックさんとミアさんと一緒に飛んでいった。
やっと落ち着いた。
「済まんなミノル。これからどうする?」
ノア兄さんとフェン兄さんが聞いて来た。
「近日中に王との会談が有るから、それまで何も出来ないですよ」
「王は何だって?」
「第2王子の独断だって。現在拘束中。ホフマン家との戦争の意志は無いと王は言っていたよ。
第2王子がアデルさんに手を出したのも、麻薬や闇奴隷に関わっている事は調査済みだから責任は取らせるよ」
「第4王子が、ここに居る理由は?」
「これから本人に聞いてみるよ」
「マネさん、宿に広い部屋と中くらいの部屋を取って貰えます」
マネさんがワープで消えた。
「宿に泊めるの?」
「だって、館に誰も住んで無いよ」
「……だよね」
「戦争を先延ばしか回避出来るなら、利用してみようかなと僕は思うんですよ。危険無しに報復出来るかもしれないし」
兄達は黙ってしまった。
マネさんが帰って来た。
「ミノルの部屋の近くに大きいのが取れた。2階にもう1部屋だ。取りあえず使えるぞ」
「マネさん有り難う」
王子達が帰って来た。
「服だけでなく装備まで整えて貰って申し訳無いです」
王子は俺の服と余り変わらないのを着ている。ダーク・グリーンのマントなんて有るんだ。
隊長も剣を貰ったようだ。
「さて、部屋を見て貰って昼食にしましょう」
全員で宿に飛んだ。王子は宿の部屋が気に入ったようだ。
「取りあえず、ポニーさんとミアさんで護衛を頼みます」
ウルス隊長が不満そうだ。
「二人共強いですよ。宜しかったら隊長さん練習試合でもしてみます?」
断って来ると思ったら試合を受けて来た。
王子が遠回しに止めているのだが、隊長はやる気だ。
ドロン騎士団隊長とマネさんがニヤニヤしている。
「では、稽古場に行きましょう」
ドロンさんが騎士団の稽古場に連れて行った。騎士団の人達に練習を中止して貰い、場所を空けた。
「我がままですがマネ副司令と最初に願えますかな」
マネさんが俺を見て許可を要求している。俺が許可を出すと大喜びしている。
「隊長殿。真剣にしますか? 木剣にしますか?」
マネさんが面白がっている。
「当然、真剣にしましょう。怪我はミノル司令殿が治して下さりますぞ」
オヤジは凄い自信だ。
「では始めますぞ」
ドロンさんが試合を即す。
二人は剣を抜き、相対した。
「始め!」
ドロンさんの号令が稽古場に響いた。
しばらく見合った後、隊長がマネさんに切りかかった。マネさんは相手の剣を流し、隊長さんの尻を蹴飛ばして勝負がついた。
蹴り倒された隊長さんが驚いている。
ステン王子は笑いをこらえ、マネさんが俺の方にニヤニヤして歩いて来た。
「第2試合はポニー殿だが、ウルス隊長は少し休みますかな?」
ドロン隊長が楽しそうだ。
ウルス隊長は相当ショックだったらしい。返答が無い。
「ウルス、もう止めておけ」
ステン王子が煽る。
「いや、続けましょう」
ポニーさんが困った顔をしている。
両名共構えた。
「始め!」
オヤジがいきなりポニーさんに突進して切りかかる。ポニーさんは剣を合わさず3回程避け、相手の柄を持って足払いで終わらせた。
騎士団から拍手が出た。
要するにオヤジは弱過ぎなのだ。腰を痛めたらしく立て無い。テリッチさんが飛んで行って治療をしている。
「腰骨にヒビが入ったので治しておきました。今日は安静にして下さいね」
練習試合は終わった。ミアさんがガッカリしている。警備隊では剣だけ使ってトップ10に入る。魔人用の剣術が見れなくて残念だった。
ポニーさんの剣は増やす前でもレベル80を超えていた。オヤジに勝てる訳が無い。
「さて、昼食にしましょう」
騎士団の人達に礼を言ってから、全員で宿に戻った。
お姉さんが、いきなりエールを配るのでステンさんが驚いている。
「今日は海老と白身魚のフライでーす」
全員喜んでいる。ステンさんと隊長さんがキョトンとしていた。
「ミノルさん。あんな良い部屋を頂いて良いのですか?」
「自由に使って下さい。食事もここで好きな時に、美味しいですよ」
「有り難いです」
「さて、誰に狙われました」
「兄達と王党派のボロミア公爵とトメル公爵、ソシル子爵当たりですか」
「それはまた豪勢に嫌われましたね」
「ソシル子爵はセントニアの製造してますし、トメル公爵は貴族の婦女子売買の親玉で追求したら兄弟に狙われました」
「セントニアはソシル子爵でしたか。何とかしないと不味いですね」
トメル公爵はアデルさんにも関わっている事は分かっている。ステン王子を引き受けたのはラッキーだった。敵討ちでは無く堂々と叩ける。
「さて、どうしましょうか?」
ステン王子が聞いて来た。
「待ちますよ。ボロミア公爵が軍を増強してます。動く時はトメル公爵とソシル子爵も一緒でしょう。
僕が気になっているのは、彼等が王都に行くのか、ホフマブルグに来るのかなんです」
「なる程、確かに今はどちらも同じ位の確率ですね」
「まあ、ゆっくり待ちましょう」
食事が配られた。全員で乾杯してフライにかじり付く。ポニーさんも初めてのメニューだ。
「親衛隊の皆さんには騎士団の規定の給料をホフマン家から支給されます。装備品はどうしましょう? 王家と同じでは戦いで混乱する可能性も有りますよ」
「親衛隊の給料まで考えて頂いて申し訳無い。確かに装備品は変え無いと混乱する展開も有りますね」
「警備隊の鍛冶と相談して下さい。良い物を作ってくれますよ」
「警備隊が鍛冶ですか?」
「ドワーフの警備隊員が鍛冶部門を作ってます。専用の作業場をリヒトブルグに持ってますので」
兄達は食べるのに専念している。マネさんは久しぶりのエールに御満悦だ。
夜は館の大食堂で親衛隊を含めて歓迎会らしい。
「僕はサボるから、後は頼むね」
ノア兄さんが頷いた。
帰ってマネさんにヨシヨシして貰う事しか考えて無かった。




