第7章05話 ポニー魔導剣士
新型ポーションが使えるようになるのに4日掛かった。テリッチさんの献身的? テストで効き目は2倍近く、ポーション1本で1時間の持続力を持つ。
コストは20分の1まで下がった。
フェン兄さんからの報告では、セントニアの禁断症状と精神の混乱を大分抑えられるようだ。
セリちゃんは禁断症状が出ると危険なので、魔壁を破壊して装備は返して貰ってある。警備隊は退職扱いで、ノア兄さんの預かりとした。
貴族としては望ましく無いが、兄さんが望むなら仕方無いだろう。
角から出来た新型ポーションはフェン兄さんには大好評で、魔族にも問題無く効くようだ。
黄色スライムは更年期障害の治療にも使うようで安価な代用品が歓迎されているのだが、魔獸の角からの成分分離剤が、俺とテリッチさんの手製で大量生産が出来ず複製魔法に頼っている。
当分セントニア対策中心しか無い。
朝の村への食糧供給と精霊様詣りを済ませて、宿でテリッチさんとコーヒーを飲んでゆっくりする。
「テリッチさんは本当に村へ行かなくても良いのですか?」
「はい。ミノルさんのゴブリン魔法とポーションが有れば必要無いです」
俺のゴブリン魔法の治療は、既にレベル70を超えている。テリッチさんにも治療魔法をあげる事にした。
「レベル20! 良いのですか? 嬉しいです」
「毎日使っているとどんどん上がりますよ。アデルさんとマネさんが帰って来ると、2人が使えた方が楽です」
「早く帰って来ないと寂しいですね」
そうだなと本気で思った。
ミアさんの報告を聞いてから洞窟に帰って池に浮かんでいると、テリッチさんが寝かせてくれた。嫌な事ばかり起きているのに嫌な夢を回避出来るのは有り難い。
起きると昼近かった。テリッチさんはポーションの自主テストをしていたようだ。
「寝ている時にするのズルいですよ」
「だってミノルさんにイジワルされますもの」
笑顔がカワイイ。二人で冒険者ギルドに行く事にした。
ギルドに着くとゾロゾロ集まり始めている。何時もの場所にノレルさんがいた。ダンクさんチームは何時も元気だ。
「ボッチャン おはよう」
獸人娘達も日本語が上手くなって来ている。
「飲むかい?」
猫耳イリアが注文に走る。何時もの光景だ。ノレルさんが寄って来た。
「大変お世話になってスミマセン」
「何時でも言って下さい。皆も街と坊ちゃんの役に立って嬉しいですよ」
「皆さんも一緒に如何です?」
大歓声が上がって宴会が始まった。テリッチさんがダンクさん達と盛り上がっている。
ダンジョン20層の移動石を届けてくれたお姉さん達が居たので誘ってみる。
「久し振りですね。皆さんは飲まないのですか?」
「私達もご馳走になって良いのですか?」
「当たり前ですよ。仲間じゃないですか」
お姉さん達が飲食を始めると、他の王都組も宴会に入り始めた。
王都の冒険者ギルドは酷い状況らしい。プレートのお金も引き出せず、食べ物に困っている冒険者まで出て来たようだ。
「プレートの金で冒険者ギルドの食堂でだけ使えたんだが、最近それも駄目になって森で猟して食べてるらしいですぜ」
「何で早くに逃げなかったのです?」
「ギルド長がホフマン領は王都の冒険者を追放するというウワサを流したんでさぁ」
「勇者はお断りしてますけどね。他は歓迎ですよ冒険者仲間ですから」
「そういえばヘルンブルグから来たポニーとか言う剣士が司令様に合わす顔が無いと言って残ってますよ」
最近来たAクラスのお姉さんが言った。
「ポニーさんが王都に居るんですか?」
「ポニーは剣を狩りで折ってしまって、猟にも行けなくなっています」
「何バカな事言ってるんだろう。ポニーさんをここに連れて来てくれませんか、僕が200万デルの賞金出しますよ」
「金はいらねーですよ。坊ちゃん様には世話になっているから。きっとこの時間は薬草集めから帰ってギルドで座っていますぜ」
「俺も行くわ。ポニーと狩りした事が有るから顔、知ってる」
2人がワープして消え、3分くらいでポニーさんを連れて戻って来た。
ポニーさんは状況が理解出来て無くキョロキョロしていたが俺に気付いた。
「ミノル司令様、会わす顔も有りません。期待に応える力も無くお恥ずかしい限りです」
「何を言っているのですか。全てあの馬鹿領主がやった事ですよ」
ポニーさんは痩せて、茶髪は伸びてボソボソになっている。テリッチさんが定食とエールをポニーさんに持って来た。
「賞金を受け取って下さいよ」
「坊ちゃん様。俺は賞金なんて絶対受け取らねーよ。これは俺が仲間にやった事で金の問題じゃないんだ」
ポニーさんが冒険者達に深々と頭を下げて礼をしていた。
ホフマブルグ組も王都組も垣根が取れたように仲良く飲み出した。ポニーさんは凄い勢いで食べている。余程、飢えていたのだろう。
少し落ち着いたところで話し掛けた。
「ポニーさん、就職しません?」
「私に出来る仕事なら何でもします」
ミアさんにトレル警備隊情報隊長を連れて来るように連絡したら2人揃ってすぐに来た。
「トレルさん、ポニー魔導剣士です。情報隊で如何です?」
「よろしいのですか? コロン騎士団情報隊長が怒りませんか?」
「セリが迷惑掛けましたから。コロンさんの前に聞きましたけど」
「絶対に警備隊に下さい!」
「ポニーさんは装備を失ってしまってますので、リヒトブルグの警備隊鍛冶頭領に僕からと言って出来るだけ良い装備を揃えて下さい」
「ポニーさんの任命は終わりましたので、任命書を早く願います。ミアさん、宿のセリの部屋をポニーさんに。歓迎会するなら宿の食堂で僕持ちで良いですよ」
「「了解しました!」」
三人がワープで消えた。
我々は冒険者達と狩りやダンジョンの話しで盛り上がった。
俺は、トトちゃんと4人娘の所に行って聞いた。
「セリちゃんが皆に迷惑掛けなかった? 借金とか」
「無いです」
「ナイ」
「ナイょ」
「全然」
「無いっス」
怪しい。
「教えてよ。僕が弁償するから」
ダンクさんが口を開いた。
「皆が無いと言ってるんだから、良いじゃないですか。あの娘には坊ちゃんしか出来ない事が有るんだから、そっちやってあげて下さい」
「皆ゴメンね。僕の監督不行き届きで迷惑掛けて」
「ボッチャン、悪く無い。セリちゃんが大人になれなかった」
猫耳のイリアが大人になっていた。
何か理由無くイライラする。
「テリッチさん、今晩30層で特訓しません?」
「します! 少し憂さ晴らししないと」
テリッチさんも同じ心境だったようだ。
我々は洞窟に帰って仮眠を取った。テリッチさんの隣で寝ているだけで楽に眠れる。
11時過ぎに起きて、テリッチさんと池に浸かって目を覚ます。
テリッチさんがローブを着て、予約しておいた晩御飯のお弁当を取りに行った。
少しして戻って来たテリッチさんは、エールとお弁当と夜食のサンドイッチも持っていた。訓練は腹が減る。
「情報隊の皆さん歓迎会やってましたよ。ポニーさんも楽しそうでした」
「あの人達は外で気を抜いて飲めるのは、あそこしか無いんですよ。情報隊は大変なんです」
「そうですよね。顔が知られても困りますものね。だから気を使って、お弁当にしたんですか」
「僕が居たら気が抜けないでしょう」
お弁当を食べてダラダラしているうちに1時になった。出かける用意をしているとテリッチさんがキスしてくれた。
「私、今日は撃ちまくります!」
30層のボス戦は最初の10分は攻撃を避けながらの飛行訓練で、その後はボスの虐殺状態だった。
5分くらいで終わらせ、ご褒美を貰う。
また透明ローブだった。
その後もう2回虐殺をやって帰った。
少しスッキリした。




