第7章03話 葬儀
葬儀の日、長引いたら不味いのでテリッチさんと二人で早起きした。精霊様巡りと狩りを終わらせ、朝食を済ませて何時もの服を着た。一応黒で統一してある。テリッチさんも黒のローブだ。
一昨日は散々お説教され、もうヨシヨシしてやらないと言われたので土下座して謝り許して貰った。
作り方を聞かれたので目の前で作ると安物材料だけで作られ、黄色スライムの倍の時間効果を維持しているのを誉められた。
何よりも飲んで同じような効果が有る事が大発見だったようだ。
昨日は何種類か調合を変えて作成してテストしてみた。テリッチさんが丸々1日テスト台で頑張った結果、良い調合を見つけ日持ちテスト中だ。
今朝もテリッチさんの体調は悪く無く悪影響は無さそうだ。
葬儀に出席した。悪事の末の、お手盛り葬儀なので緊張感も何も無い。色々悪行も出て来て兄さん達は憤慨している。
俺は内容を聞かなかった。
「民の半分以上が実態を知っているって噂だぜ。馬鹿らしくって葬儀なんて茶番やってられないよ」
フェン兄さんが完全にアタマに来ている。
「僕は余り知らないよ」
「ミノルは知らない方がいいの!」
ノア兄さんに言われて黙ってしまった。
「夫婦で悪行が過ぎたのよ」
フェン兄さんが吐き捨てるように言った。
「ノア様、フェン様、坊ちゃん、お時間です」
ミリーさんに言われて館前の広場に行った。黒の壇が作られ、三人で壇上に登った。
叔父さんの棺は広場の少し先に台車に乗せられ、待機している。通常は騎士団8人で正門から手で運ぶものだ。
騎士団200名、警護隊200名が並び通路を作る。
ノア兄さんが壇上中心に立った。
「皆さん、おいで下さりホフマン家三兄弟、心から感謝します。フレードリッヒ・ホフマン辺境伯爵葬儀を開催します。ミノル司令お願いします!」
これ程、兄達が捨て鉢とは思わなかった。仕方ないので最前列中央に立った。小学校5年の時騎士団の人が死んだ葬儀を思い出して真似した。
俺が中剣を抜き、捧げ剣のポーズを取った。
「捧げー剣」
ドロン騎士団隊長の号令が響く。
俺は黙って剣の柄で左胸を2度叩いた。
騎士団全員が剣の柄で鎧の左胸を2度ずつ叩き始めた。
「バンバン。バンバン」
大音響でカッコ良い。
台車が動き出した。騎士団が押しているのだが、意外にスピードがある。
騎士団の柄で鎧を叩く音に歩調を合わせて進むのが正しいのだが台車はお構い無しに進んで行く。
カッコつかないので、剣を収め。祝福魔法で光の粉をバラまいた。
観衆から言葉にならない声が上がった。
台車はサッサとホフマン家墓地に入ってゆく。
「捧げー剣」
再度ドロン騎士団隊長の号令。騎士団の剣は音を止め捧げ位置に戻った。
フェン兄さんが中央に立ち宣言。
「本日は有り難う御座いました」
終了だった。
壇上から降りた。
「兄さんズルくない?」
「騎士団と警備隊は、ミノルの言う事しか聞かないモン」
「そうそう」
兄達の簡単な返答だった。
ホフマン家墓地は密葬で男兄弟三人のみの参加だった。棺は既にホフマン家の墓に入れられ三人しか居ない。
棺に死体は入って無く、お母さんの空の棺に昨日のうちに入れられ埋葬されていた。
「ミノル、嫌な思いさせて悪かったな」
「終わり終わり」
ノア兄さんが止めさせた。
「ミノル、錬金術師皆伝になったんだって?」
何故知っているのだろう?
「なったよ」
「記念に初作品くれよ」
フェン兄さんが言う。出し辛い。
「こんなんだよ」
ラベルを読んでいる。
「魔族さんに効くのかな? 人間には効いたよ」
「テストしたの?」
「したよ。1本で30分くらい効く」
「原材料は何?」
「……黄色スライム」
兄達が瓶を注目している。
「液体化して飲んで効くかのテストだったの。6種類の毒性テスト全て問題無し。置いておいたら、知らずにテリッチさんが飲んでしまって大騒ぎ」
「飲んで効く?」
「すぐ効く」
「俺、分析テストに使うからもっとくれよ」
フェン兄さんに5本あげた。
「俺も分析したいな」
ノア兄さんが言う。セリちゃんでテスト?
5本あげた。
兄達はイソイソ帰って行った。
俺は叔父さんとお母さんにサヨナラして墓地を出た。ミリーさんが待っていてくれた。
「坊ちゃん晴れ姿がカッコ良かったです。ミリーは誇らしいです」
人間、悪行が過ぎると誰も悲しまないと思い知らされた。
洞窟に帰るとテリッチさんが待っていてくれた。
「ミノルさん、ご苦労様でした」
待っていてくれる人が居るのは良い事だとつくづく思った。
「何しているんです」
「ミノルさんのポーションがあの無気力剤の治療に使えるかと思って」
「警護隊に頼んでテストして貰います?」
「そう思い黄色スライムを増やしているところです」
「もっと安いスライムを使えないか考えているんですが、テリッチさん作れません?」
「無理なんです。あの成分が精製出来ないのですよ。だから効果を高めて1匹から作る本数を増やす方法を考えているんです」
「複製魔法を改造するのと、どっちが早いかですね」
「今の複製魔法では駄目ですか?」
「やってみましょうか」
スライム本体は駄目だったが瓶1本なら出来た。テリッチさんが毒性テストをしても問題無しだった。
「テストしてみましょう」
「ミノルさん、また悪い事考えてますでしょう」
同じ効果だった。テリッチさんの献身的な貢献で、6回くらいテストして同じ効果が維持出来る複製は1度に5本までと分かった。
警備隊に300本提供してテストする事にする。効いてくれると社会に貢献するのだが。
テリッチさんと、ジャン警備隊隊長に300本届けてからトメラさんに会いに行った。
「ミノルさん、いらっしゃい。テリッチさんと二人なんて珍しいですね」
「僕が錬金術師になった報告ですよ。テリッチさんが師匠ですから」
「オメデトウ御座います。免許皆伝は、東の錬金術師を入れると三人になったんですかね」
「東の錬金術師は死んでますよ」
テリッチさんが不思議そうに言う。
「生きているそうですよ。行方不明ですけど。お金に困って、時々王宮の仕事を受けたりしてる噂が有りますから」
「そうなんですか」
テリッチさんが、考え事をしている。
「これも噂ですけど、ミノルさんを怖がって暫く前に王都から逃げ出したと言う話も有ります。噂ですけど」
「僕を怖がってですか?」
「らしいと言う噂ですから。本当かどうかなんて分からないですよ。美人だったり婆さんだったり、どっちか分からないですし。相当腕の良い人みたいです」
「東の錬金術師は腕が良くって、綺麗な人です。本当に生きているなら700歳以上です」
「知っているんですか?」
トメラさんがテリッチさんに聞いた。
「三度くらい会いました。私の師匠の師匠です。師匠が出来ないのか、免許皆伝の儀式だけ東の錬金術師がしてくれました」
世の中は狭いものだ。
トメラさんが上目遣いで俺を見ている。
「今日の失敗仕入れは何です?」
「失敗なんてしてません! ただ、分からないのですよ。頼まれてイヤイヤ仕入れた品と、例の収集家の品なんですけど」
トメラさんが奥から大きな箱と、中くらいの箱を持って来た
「何だか分かって無いんです。見て下さい」
テリッチさんが箱の中を調べている。
「成分分離と抽出の魔道具と、合成魔道具やら色々ですね。これが有ると、もう売って無い試薬とかを作ったりまで出来ますよ。細工道具から特殊な融合薬まで、高価な物ばかりです」
テリッチさんがため息をついている。
「入手不可能な物ばかりで優れ物なのも分かるんですけど、世の中に本当の錬金術師は三人しか居ないし、一人は金欠で行方不明だし買い手が居ないんです」
トメラさんが上目遣いで俺を見続けてる。
「で、いくらです?」
「……全部買ってくれるなら1億デル」
「1億デル!」
テリッチさんが驚いて声を上げた。
「テリッチさんは欲しいです?」
「それは欲しいですけど、いくら何でもこんな高価な物。勿体ない」
「じゃ買います」
トメラさんがガッツポーズをして、テリッチさんが慌てている。
「もう買えないんでしょう? なら買っておきましょうよ」
トメラさんがポッポと良い臭いをさせていた。




