第7章01話 叔父さん死亡
1月になって忙しくなった。
叔父さんの死亡が王都から届いた。どこかの伯爵未亡人と、互いの胸を刺した状態で発見された。王都のホフマン家の館だったので、病死で発表された。伯爵未亡人の家族は、そのような未亡人は当家には居ないという返事だったのでノア兄さんが粒状化で終わらせたらしい。
ノア兄さんとフェン兄さんが、約束を果たしたと思うのだが聞かなかった。
「ミノル。3日後、1月5日が葬儀だから。当面は家宰の俺とフェン、ミノル司令だけで運営する。辺境伯は空席にしておくよ。」
「兄さん達の好きにしなよ。その代わりセリちゃんはノア兄さん護衛に貼り付けるから。近くに部屋を用意してあげて。当面あの屋敷に住む方が良いよ」
「有り難う。ミノル世話になるな」
ゴブリン魔術師が弱いのが食糧と、例の黄色スライムという事を警備隊のドワーフ隊員に教えて貰った。
そこで、今日は魔術師と交渉しようと毎日の食糧の他に小型の黄色スライムを持って来ている。
『タベモノ タクサン ウレシイ』
魔術師が俺のポケットを見ている。
『ナニカ トリヒキカ?』
『ゴブリン魔法の治療が欲しいのだけど、無理かな?』
魔術師が暫く無言になる。
『ソノオンナニ ツカウノカ?』
マネさんを指差した。俺が不思議な顔をしていると魔術師が言った。
『ソノオンナ カラダ ゲンカイ』
『本当に限界なの? 自分で治す気は無いよ。僕の奥さん達が、ここに入る順番待ちの間に楽になって貰いたいだけです』
『ソレナラ ワタス オンナ オイテケ アブナイ』
『分かった。何が欲しい?』
『キイロ ヒトツ マホウワタス オンナ ナオス』
最近マネさんが汗を沢山かくし疲れ易いとは思っていたが、限界とは驚いた。マネさんを即座に村に入れ、治療魔法も手に入れた。
黄色スライムを手に入れた魔術師は機嫌が良かった。レベル10のオマケもくれた。
マネさんは1週間入れて、残りの治療は週に二日を暫く続けることとなった。
「ミノル。済まんな、この忙しい時に。これ預かってくれ」
マネさんは髪留めとリングを俺に渡し、魔法禁止の命令を受けてゴブリンに埋もれた。
『有り難う。明日、また来るよ』
村の魔術師が見送ってくれた。テリッチさんと洞窟に帰った。
「驚きましたね。マネさんが、そんなに悪いなんて」
「前の魔術師が下手だったらしいですね。マネさん遠慮ばかりして……僕が気付いてあげなければ駄目なのに」
「マネさんは帰れる保障が有るから素直に認めたのですよ。だんだん遠慮も減ると思いますよ。マネさんミノルさんが大好きだから」
「そうだったら嬉しいです」
「1週間二人ですけど頑張りましょう」
寂しそうにしていたらテリッチさんが勉強会を開いてくれた。
意識が戻ったら昼だった。すっかり元気が戻ったら副司令が2人共居ないのに気が付いた。規定で司令に直接連絡が出来ない警備隊と騎士団が困っているかもしれない。
仕方無いのでミアさんを副司令補佐官にすることにした。ミアさんを昼食に誘っておいた。
「僕は余りミアさんを我々の中に入れたくないんですよね」
「どうしてです?」
テリッチさんが聞いてきた。俺はテリッチさんにゴブリンの治療魔法を試しながら話している。
「副司令すると僕との関係を疑う人が出て、ミアさんに迷惑を掛けるじゃないですか」
「副司令は一緒に居ないと不便ですものね」
「困りました。今の体制だと副司令が3人必要になりますから。テリッチさん、しません?」
「私は錬金術師でいたいですね。司令の仕事が何かも知りませんですし」
「ですよね」
「治療魔法が効きますよ! 身体が楽になります」
「レベルを上げないと。頑張ります!」
テリッチさんと宿の食堂に行くとミアさんが既に来ていた。我々を見て立ち上がり直立不動の体制だ。
「司令。お呼びでしょうか?」
「ミアさん何度も言ったけど、それ止めません?」
「スミマセン、つい警備隊口調になるんです」
「それそれ、普通に話しましょう。その制服も、トレルさんにも言われない?」
「言われてます」
「正式警護じゃ無い限り、かえって目立って困らない?」
「ナンカ、セリちゃん見てると自分だけはチャンとしようかなと思ったんです」
「セリちゃんね……精神年齢がね。ミアさん何歳?」
「25歳です」
「お嫁さんにも行かないとね」
「ムリですね。守護人で歳とらないし、親がアレじゃ男が避けますって」
「ミアさん、茶褐色の髪の毛が本当の色?」
「バレてました?」
お姉さんがエールを持って来た。今日はカニだったので全員でカニを注文した。
「ところで暫く副司令補佐官してくれません?」
「エッ、どうしたんです?」
事情を全て話した。
「念話ナンカで出来るだけ済ませて迷惑掛けないから短期間でもやって貰えると助かるんだけど」
「ミノルさんの頼みなら何でも聞きますけど、御屋形様の葬儀から麻薬ナンカまで有るから短期間で念話だけじゃムリかも」
「僕と一緒だと変に勘ぐったりする奴らが居るし、迷惑掛けるもの」
「だってアデルさん帰って来ても暫くは完全には動けないですよ。村の影響抜けるのに通常2週間って言われてますモン。素直に私を使った方がお得ですよ。ごちゃごちゃ言われたら情婦とでも言っときますよ」
「ダカラ、それが困るんだって。ハリーさんやパトリックさんに殺されるもの」
「ナイナイ、かえって喜ぶですよ」
テリッチさんが大笑いしている。
「兎に角、副司令補佐官を任命しないと隊長達がキレますよ」
結局押し切られて任命連絡を入れ、ミアさんに連絡を集中する事にした。
テリッチさんが笑っている。
「治療魔法のレベルが上がった!」
ずっとテリッチさんに治療魔法を掛けながら話していたら上がった。
「ミノルさんの魔法で、凄く楽です」
カニが来た。ミアさんにも連絡が入った。
「今晩、麻薬の捕り物です。セントニアを馬車でホフマブルグに入れる情報有り。正門で捕獲予定です。最新情報で第4王子亡命の噂有り。以上です」
尚更きな臭くなって来た。王子は何処に亡命するんだろう。
食事を終えて、ミアさんは副司令補佐官になった事をハリーさんとパトリックさんに自慢しに帰って行った。
我々は洞窟に帰って錬金術の勉強をすることにした。2人しか居ないので勉強には最適環境だ。
錬金術大全を読んでは実験したりして2時間程過ごした。今日までの勉強成果をテリッチさんが頭に焼き付けてくれた。
テリッチさんと池に入って休息を取る。俺が無理な命令をしたり、その報復に池に沈められたりして遊び、勉強に戻った。
30分くらい大全を読んでいると、突然読む所が無くなった。本の全ページが真っ白だ。
「テリッチさん、読む所が無くなってしまいました!」
テリッチさんが走って来て本を確認する。
「本を受け取って。自分向きにして…そのまま」
テリッチさんの左手が錬金術大全の上に、右手が俺の頭に乗せられた。
テリッチさんが10分くらい何か唱えてた。
「ミノルさん、錬金術大全を開いて」
錬金術大全が元に戻って、文字が読めるようになっていた。
「ミノルさん。おめでとう御座います。錬金術師になりました。俗に言う免許皆伝です」
テリッチさんが俺に抱きついて喜んでくれた。俺は自分が錬金術師になった事より、テリッチさんが喜んでくれた方が嬉しかった。




