第6章25話 夜中の練習再開
思い出すのも不愉快だがノア兄さんとフェン兄さんにアデルさんの告白を伝えておいた。2人共愕然として暫く無言だった。
「王都で何も気付かなかった俺の失態だ。ミノル許せとは死んでも言えない事だが、アデルさんに申し訳無い。必ず俺が解決するので、少しだけ待っててくれ』
「俺も責任が有る。ノア兄さんと俺で解決する。必ずだ。少しの間時間をくれ。頼む」
フェン兄さんまで泣きそうな声だった。
連絡を終えて戻ると、2人が自分の印を見ていた。
「また3人家族になってしまいましたね」
「アデルを救うには、あれしか無かったのだ。気にするな。アデルも感謝しておる」
「アデルさん、村で良い顔してましたから」
「あいつは普段、無表情な事が多いからな」
そう言われるとそうだった。表情で幸せそうに見えたのかもしれない。
「アデルさんのおかげで、凄く得してしまいました」
「儂もアデルを利用したみたいな気がする」
「そんな事は無いですよ」
「私みたいな者に帰る場所の保証が有るのが、どんなに安心かミノルさんには分からないですよ」
「そうだな儂等の環境が酷過ぎるからな」
暗い話しは終わりにして、印の実験をする事にした。
「テリッチさん僕の言う通りにして」
「はい」
「左右に進んで」
「えっ!」
テリッチさんが立ったまま身体を固まらせ、息を呑んだ。
マネさんが笑っている。
「マネさん足を使わないで立ち上がって」
マネさんが混乱している。突然身体を硬直させ唸った。
実験は成功だった。
「そんな命令は酷いです!」
「何か起きないと実験にならないじゃないですかー」
食事に行ってエールで乾杯した。
「村ですけど、ニセ聖域みたいに隠せないですかね」
「そうだな、オークや冒険者にアデルを捕らえられると面倒だな」
テリッチさんが考えている。
「登録可視域にしましょう」
「何です?」
「登録した者だけ見えて入れる区域を作るのです。バリアーの変形ですけど」
テリッチさんが一生懸命魔法陣を書いている。
鳥の塩焼きを食べながら気持ちだけ応援した。
マネさんがエールを注文している。テリッチさんが下唇を笑いながら噛んで睨んだ。カワイイ。
「今晩の訓練はどうする?」
「します。厭な事を頭から流してしまう為にも戦わないと」
「そうだな、ミノルも参加すれば同じだな」
テリッチさんが食べ始めた。魔法陣が出来たようまだ。
「訓練は今晩何時から開始しましょう」
「1時くらいが良いか?」
お姉さんにお弁当と樽のエールを頼んだ。
我々は村に飛び、魔術師に説明して魔法陣を展開した。テストに俺の名を消して貰って、外から見ると見えない。中にも入れない。上手く隠れたようだ。登録して貰って中に入ると、空気の流れも有るようだ。
『これで、村は見えなくなったから少しは安全だよ』
『アリガト アンゼン タスカル』
『明日、見に来るから使い辛い時は教えて』
『ワカツタ』
続いているアデルさんの治療が月明かりで見えた。
この1日は長過ぎた。マネさんとテリッチさんのお陰で何とか削られた分を埋めて貰っているが、不愉快な事は変わらない。
練習までテリッチさんに寝かせて貰った。プカプカと何も起きない幸福な睡眠で不愉な事から逃れた。
起きるとマネさんに、しがみ付いていた。
「起きたか? 良く寝ておったぞ」
「はい、とても楽になりました」
まだ0時くらいだった。池で顔を洗い、口をゆすいで頭を拭いていると、倉庫部屋の扉が開いていた。
中を覗くとテリッチさんが、アデルさんを回収した時の戦利品を整理していた。
「起きました? 帰って何もしなかったので整理していたのですよ」
薬瓶や瓶入りの薬草などが、とても増えている。机の
上に高価そうな箱も置いてある。また根こそぎ持って来たようだ。
「ミノルさん、これなんですけど補助奴隷印セットで先日のと併せて使うんです。効果の調整用です」
テリッチさんが高価そうな箱を指し、中から1.5センチくらいの3重丸の中心に変な文字の付いた印を出した。
「先に押して貰ったのだと私には衝撃の方が強いので、これも押してくれませんか?」
テリッチさんがニッコリと小型印を俺に渡した。丸の数がひとつ多い快感用みたいだ。
「ハァ、テリッチさんが望むなら……」
早速池の隣の草地に連れて行かれ押すことになった。マネさんも見に来ている。
素直にテリッチさんに従って焼き印を押す。魔力で赤くなった印が冷めるのを待って終わった。綺麗に三角を形成するように押した。治療魔法を掛けて出来上がった。立ち上がると外から全く見えない。
立ったテリッチさんに実験する。
「足で背中を掻いて」
「えっ! また」
抗議したテリッチさんが、うなり声を上げて膝を折った。身体に力が入って少しケイレンしている。暫く息を整えている。
「これが絶対良いです!」
テリッチさんが言った。
「儂にもしてくれんか?」
マネさんにも、する事になった。綺麗に出来上がり、実験してみる。
小さな声を上げて膝を折り、両手も付いた。力が入った全身の筋肉が少しケイレンしている。
「儂もこの方が好きだ。ありがとう」
お姉さん達は満足そうだった。
30層に付いたのは1時30分頃だった。俺だけローブで現れたが、今日は誰もいなかった。
三人で中に入ると30層がロックされ、赤茶のボスが3体現れた。
「ブオオーン」
それぞれの獲物に飛びかかる。俺は中央の奴に、飛び上がりながら氷弾を連射した。
「ガガガガガ」
ボスが氷弾を受けて、動きが鈍くなっているので周りを飛んで攻撃を続けた。ブレスを吐く前に倒れてしまった。
「バホホーン」
イライラ解消には丁度良い。
透明化し、部屋の隅でローブを脱いで座った。余り動かなかったのに座ったら汗が出て来た。
我が家のお姉さん達はヒラリヒラリと裸で空中を舞い、攻撃している。カッコ良い。
三人共終わらせ、ご褒美を受け取り休むことにした。二人にタオルを渡した。
「気持ち良いな。余裕が出て来た」
「私もです。楽しくて」
タオルで汗を拭きながら談笑している。もう少し休んで、またやる事になった。
2回戦目の俺は攻撃せずに暫く飛びながら、ボスにブレスやファイヤーボールで好きに攻撃させ除ける練習をした。反射的に除ける能力が戻ってくる。
危なげ無く攻撃をすり抜ける事が出来ているようなので、一気にボスを倒した。
また透明化して隅で汗を拭いながら、我が家の奥さん達を眺めて楽しむ。
二人はそれから20分くらい楽しんで終わらせた。
「3戦目をやりたいが、汗が気持ち悪い」
マネさんが汗だくだ。
「池で汗を流しましょう」
テリッチさんも賛成のようだ。ご褒美を貰って洞窟に帰った。すぐに皆で池に入って汗を流す。気持ち良い。
お互いに沈めたり俺の変な命令で固まらせたり、三人で暫く遊んでから池を出た。
「楽しいですね」
テリッチさんがニコニコして言った。
「本当だ。このような生活は考えもしなかった」
マネさんが真剣に応えた。
結局、エールとお弁当で練習は終わりになった。4時くらいまで三人で飲んで騒いでいた。




