第6章24話 会議とアデルさん
アデルさんが池の近くで膝を抱えてションボリしている。
「鼻から出て来るゼリー状の生き物は何です?」
「人は目の上に空洞が有るのですよ。そこに入って脳に快感を与える粘液を出す生き物です。
前回も入っていたので、次は廃人になる可能性があります。通常はあれ1回入れられたら最後なんです。奥様みたいになります。本人は気持ち良いのですけど」
「治療方法は?」
「廃人になってなければ1ヶ月くらい安静で大丈夫ですけど。その位で毒性が完全に消えます」
「昨日も会議で出たようにボロミア公爵が軍を集めています。アデルさんの乱行で、戦争だって起きます。
アデルさんだって、次は無事では無いでしょう」
「ミノル、その通りだぞ。昨日もアデルに関わった多数の貴族が死んだ。アデルで遊んだ貴族は次は自分かと疑心暗鬼になっている。リストにボロミア公爵も載っていた。これ以上アデル奪還で貴族を殺すと戦争が起きる」
「ミノルさんやマネさんの言う通りです。女の為に戦争に出来ないですよ」
「マネさんやテリッチさんみたいに、黄色いのに耐性が有れば良いのに」
「村に1ヶ月くらい入れておきます? 麻薬や毒性が抜けますよ。帰って来てからは黄色いので、紛らす事が出来るようになります」
「あそこで、身体を改造されれば完全なんだが」
「組織が変わってしまいますからね。マネさんはどのくらい居ました」
「儂か、6ヶ月くらいだ。大学に行くのを断念するまで入れられていた」
「誰にですか?」
「あの奥様とピーター隊長だ」
話しを聞いて愕然とした。
「だから騎士団を辞めて冒険者だ」
涙が出て来た。
「儂の為に泣くな。今はアデルだ」
「アデルさんは魔法使えますし、メダル持ちですから心配ですね」
「魔壁壊す以外にも1つだけ手は有りますよ」
「何です! 教えて下さい」
「アデルさんをミノルさんの奴隷にするのですよ。魔法禁止の命令をしておけば良いのです。
ミノルさんは奴隷印を消せるのですから、正常になったら消せば良いのですよ」
「なるほど、良い方法だ。ミノル、それをやれ。このままでは、アデルの悪影響が大き過ぎる」
選択肢が無いようだ。
「そうします……」
「通常のと違った奴隷印を使います。夫婦とか愛人とかに使われる印です。2つ押して、片方が強い衝撃と苦痛です。もう片方が強い快感です。逆らうと脳に凄い衝撃が走るので村に居る時でも有効ですよ。苦痛だけでは無いので、恨まれたりもしなくて使いやすいです」
「アデルさんに嫌われ無いなら、それでお願いします」
テリッチさんが先日手に入れた奴隷印セットから、2本の焼き印を出して来た。先端に3センチくらいの丸い印が付いている。
「最大刺激のを使いますね。これが最初に押す快感用です。二重丸に変な文字の印。こっちが衝撃、丸に三角で中に変な文字。
柄を持ち魔力を流すと真っ赤に焼けますから、赤くなくなるまで強く押し続けて下さい」
アデルさんに事情を話し、了解を得た。とても素直だった。
「アデルさんの右足から、外から見えない所。そこです」
真っ赤な焼き印を押し続けても騒がない。
「快感用ですから」
テリッチさんが教えてくれた。結構時間がかかって赤い色が無くなった。
続いてアデルさんの左足に、左右対象になるように焼き印を押した。
立たせて見ても、前からも後ろからも見えない。成功だった。
実験してみる。
「本当の事を話しなさい」
「はい」
「後、知っている行き先は本当に無い?」
「無い」
身体を硬直させ、反り返えって口をパクパクさせている。落ち着いた所で再度聞く。
「後、知っている行き先は本当に無い?」
「3ヶ所」
また身体を硬直させパクパク。結局会議のリストを全部知っていた。
大分素直になったので気軽に聞いてみた。ボロミア公爵の名を期待していた。
「僕に話して無い最も知られたく無い事は」
暫く答えない。
「セントニアだ。そういう名前とさっき知った。王都のホフマン家屋敷で針で入れられたのだ。屋敷だったので安心してしまっていた私の失態だ。
トメル公爵の館で2日程デク人形のようになって、あの薬を何回も与えられた。
帰って来た時、まだ自制心が残っていた。あの時ミノルに話すべきだった」
「何故話さなかったの?」
「御屋形様だ。貴族工作に私を使ったのだ。ミノルを悲しませたく無かった」
聞かなければ良かった。硬直しないから本当なんだろう。
アデルさんが大声で泣いている。
「ミノル済まなかった。私が馬鹿だった。こんな大事になるとは……見捨ててくれ。メダルを外し殺してくれ」
「アデルさん。何が有っても僕のアデルさんだからね。絶対見捨てないからね」
横に行って背中をなぜてあげた。傷跡がゴツゴツしている。
「アデルさんが被害者なのに、自分を責めないで」
アデルさんは暫く泣いていた。
落ち付くと、髪留めと両手のリングを外し俺に渡した。
「預かってくれ。生まれ変わってくる」
俺は頷いて受け取り服のポケットに入れた。
「アデルさん、魔法禁止だよ。僕の命令に絶対逆らえないよ。良いね」
「どんな命令でもしてくれ」
透明化してテリッチさんが見つけていた村に4人でワープした。20人くらいの村だった。
裸のアデルさんを置いて2メートルくらい上空に上がった。ゴブリン達がアデルさんに群がった。
ゴブリンの魔術師が俺の目を見ている。見えるようだ。この魔術師と交渉しないとならない。
『コノオンナ イイノカ ナオスノカ?』
念話で話してきた。
『頼みます。1ヶ月くらい預かってください。身体も改造してくれると嬉しいです』
通じただろうか。
『ワカツタ カイゾウスル ナオス』
『何が欲しい?』
『タベモノ マイニチ』
『待ってて、持ってくるから』
近くの森で鹿や猪を10頭捕って持って行った。村の真ん中に獲物を置いて上空に行った。
『タベモノ タクサン ウレシイ』
『明日また持ってくるから』
『タノム』
洞窟に帰った。
俺がアデルさんの貴重品をしまってから、服を脱いで池に行った。
「アデルさんが羨ましくなりました」
「アデルさんが終わったらテリッチさんが行けば?」
「良いのですか! 4年も居たせいか、時々行きたくなるのです。組織が変わっている分補修も必要なので。でも、行ったらここに帰れない気がして」
「何でです? テリッチさんの望みなら何でも聞きますよ。テリッチさんも僕の嫁さんと思ってますから」
「嫁なんて、妾で良いので側に置いてください」
「マネさんも良かったら順番に行きません?」
「本当に良いのか? 儂も時折、無性に行きたくなる。体調も戻さんと。3日くらいで良い」
「マネさんも僕の嫁ですから、遠慮しないで」
「済まん。一度改造されると時折苦しくなり、我慢出来なくなる」
「約束ですよ。今奴隷契約して下さい」
「儂も頼む。奴隷契約した方が安心出来るのだ」
結局マネさんもテリッチさんも、アデルさんと同じ焼き印を押してしまった。
「嫌になったら、すぐ消しますからね」
2人共、断って来た。
「帰る場所の保証なんです。奪わないで下さい」
マネさんも同じだった。




