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第6章23話 捕り物会議


 朝の精霊様詣りでアデルさんがもう20分以上、山の精霊様に厳しく説教されている。

 実は昨日アデルさんが脱走したのだ。前回は魔法陣の為に俺にはアデルさんを追跡出来なかったので、山の精霊様が機能を修正してくれてたので今回は回収出来た。


「アデル、ミノルも最後にはキレるのだぞ。お前は自分を制さないと、ミノルも仲間も全て永遠に失うのだぞ。分かっていてやっておるのか?」


 アデルさんは、土下座して大泣きしている。


「お前は毎回、泣いて『済みません』を言っておるが信用出来なくなってしまうのだぞ」


 アデルさんが、大声で泣きながら『ズミマシェン』を言っている。


「ミノルが見放した時、私がお前のメダルが外れないままにして魔力は並みにしてやる。永遠に生きて好き放題するが良い」


 山の精霊様が俺にウィンクした。脅したい放題だった。アデルさんは土下座のまま、激しく泣いている。

 でも信用が無いのも確かだ。アデルさんのメダルは精霊様に自分で外せないようにされている。外されると居場所が分からなくなってしまう。


 山の精霊様の後もアデルさんは、もっと惨めだった。相変わらず土下座で謝っているのだが精霊様達は『アデルも居たのか』みたいな対応だけで、皆俺にウィンクしたり手を振っていた。


 全部終わって帰る時はアデルさんの背が俺より小さくなって、ヒクヒクして何を言っているのか分からない状態だった。



 昼ご飯は我々とドロン騎士団隊長・ジャン警備隊隊長・コロン騎士団情報隊長・トレル警備隊情報隊長で会議だ。

 アデルさんは話題の関係上出席させたく無かったのだが、また脱走されると面倒なので参加させた。


 全員忙しいので宿の食堂での会議は久し振りだった。何時も世話になっているので、全員にダンジョンの品をプレゼントする事にした。


「ドロン騎士団隊長は盾ですね。これ使えるのドロンさんだけでしょうから」


「こんな珍しい物を……宝にします」


 マジマジと盾を見ている。


「ジャン警備隊隊長は中剣です」


「こんな……勇者が持つような剣を。大切にさせていただきます」


 警備隊には派手かなと思ったが、本人は大喜びだ。


「コロン騎士団情報隊長とトレル警備隊情報隊長は透明化ローブです」


「有り難いです。使うのがもったいないです」


「こんな高価な物を……仕事でどんなに役立つか」


 実はコピー出来たので、複製品です。俺も何かの為に1着ポケットに入れてある。


「全て皆さん個人に差し上げたので、使い方は自由にして下さい」


 相変わらずエールを飲みながらの会議だ。全員白身魚のソテーを喜んで食べている。


「闇奴隷商がまだ居たので、今晩にでも逮捕の予定です」


「まだ居たんですか?」


「はい、貴族や商人の婦女子を奴隷化して時間単位で売っているらしいです。全国組織らしく」


 コロンさんが支部の場所やバックの貴族の名を書いた書類を配った。6ケ所の中にボロミア公爵の名も有った。

 アデルさんが顔を紅潮させて、書類を見ている。テリッチさんがアデルさんから書類を取った。


「もっと問題なのは麻薬組織が王都から来るという情報が入ってます。セントニアという名の覚醒剤らしいですが、飲み続けると廃人になるそうです」


 トレルさんが発表してテリッチさんを見ている。


「覚醒剤では無いですね。気力が無くなって逆らわなくなるんです。余計な事を考えたり心配もしなくなるので、通常労働者など身体を使う人が好む薬です。

 奴隷商や売春などにも人気と聞きます」


 テリッチさんの説明にジャン警備隊隊長が頭を抱える。


「闇奴隷商が売るんじゃないですかね? 普通の人にそれ使って、奴隷にしたり身体を売らせたりとか」


「あり得ますね。司令の考えが当たりと思います。疑わしいのは全員逮捕して逮捕後、証拠探しで良いですか? 入り込まれたら最後なんです」


 ジャン警備隊隊長が強行だった。


「少しでも変なのは全員逮捕で良いですよ。逮捕中の事故で容疑者が死ぬ事も構いません」


「良いのですか?」


「どうぞ」


 一度何かの中毒にさせられたら、治すのが大変だ。蔓延する前に、どんな手でも使わないと。


「治療方法はあるのですか?」


 テリッチさんに聞いてみた。


「そんなに強く無い筈ですから1ヶ月も離れれば良いのですが、何か強い快感と同時に与えると、本人が我慢出来なくて中毒になると聞いてます」


「今日から男でも女でも、怪しいのは身体検査か逮捕します」


 王都からはロクなのが来ない。


「ボロミア公爵ですが軍を継続して集めております。あのままですと単独で1万くらいの軍を動かせます」


 コロン騎士団情報隊長からの報告だった。きな臭いな。戦争の匂いがする。



 会議が終わってドロンさんが聞いて来た。


「御屋形様が王都に20名の騎士を要請して来たので、司令か副司令を通して欲しいと言ったら怒鳴り始めまして……規則ですからと断ったのですが……」


「それで良いですよ。指示系統の混乱は命取りになりますので」


「警備隊にも王都に行くからセリとミアを出せと言って来まして、司令の命令と警備隊規則で領外には出せないと断ったら怒鳴り付けられました」


 ジャン警備隊隊長が言って来る。


「ジャン警備隊隊長が正しいのですから、心配しないで良いですよ。奴隷商と麻薬組織をお願いしますね」


 会議が終わって洞窟に帰った。


「ミノルさんアデルさんは昨日、あの薬を使われてますよ」


 テリッチさんが言って来た。


「脱走に気が付くのが遅かったですからね」


 乾燥した部屋で30層の訓練まで寝ると言って、脱走したのだった。

 1時間近く気付かず、助けに行った時には30人以上の前で吊されていた。

 頬に奴隷印を焼き印され、黄色いスライムが使われている。アデルさんが何か意味不明なことを言ったり、唸るような声を出していた。

 貴族らしいのが喜んで見ている。

 完全に傷物オモチャ扱いだった。

 全員凍らせ家中始末してから、雷でアデルさんを感電させ黄色いスライムと鼻からゼリー状が流れ出てから帰って来た。


 洞窟でアデルさんの右頬を調べた。5センチくらいの丸い焼き印をされていた。

 アデルさんは心地良さそうで、時々身体を痙攣させていた。

 俺が誰か分かっていたのか疑わしい。

 目を離してしまった事を後悔しながら顔を治療していると涙が止まらなかった。


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