第6章20話 奴隷商の捕り物
警備隊の大捕り物なので全員付き合う事になった。ホフマブルグの小型の館を王都の奴隷商が使い、今晩闇奴隷市場が立つとの情報が入ったらしい。
ホフマブルグは基本奴隷売買が禁止されており、犯罪者と借金奴隷のみ公認商人により扱われている。
本当は全て禁止したいのだが被害者への賠償とかの問題も有り、そのままになっている。
地方で禁止すると貧しい農家などが餓死する場合も有るので、矢張りそのままにしてある。
「総員配置に付きました!」
ジャン警備隊隊長が報告に来た。
「僕に遠慮しないで、やって下さい。危険な事は引き受けますから」
「有り難う御座います! 現在市場参加者が集まるのを待つております」
暫く待っていると馬車が3台入って行った。
「開始」
ジャン警備隊隊長の指示で警備隊が一斉に動き出した。訓練が出来ているらしく、キビキビして動きが良い。入り口と扉を打ち破って警備隊員が、どんどん館に突入して行く。
騒ぎが収まったので、我々も中に入った。奴隷商らしいのが20人くらい拘束されている。
「私が知っているのが半分近くおるな」
「アデルさんを売買していたの?」
「そうだ。奥様が……」
「もう奥様は止めなよ。アデルさんだけだよ」
「良いのか?」
「僕のことは気にしないで良いから」
「そうか。有り難い」
「王都の奴等?」
「いや、フランク男爵の子分だ」
「フランク男爵か。中間派の領地持ちだ。小さいが何故か豊かだな」
マネさんが詳しい。
「大きな館だぞ。毎週のように行かされたので知っておる。大きな部屋が地下に有ってな。奴隷の売買をしたり、貴族の嫁とかを色々と……まあ何だ」
「いいよ言わなくても」
「済まんなミノル。本当に済まない」
アデルさんが小さくなっている。
「フザケておるな。そこに行って見るか」
マネさんが思い掛けない事を言いだし出した。
「貴族の娘らしいのが三人おりますが、どうしましょう?」
セリちゃんくらいの年齢の裸の娘が三人居た。胸に大きな奴隷印が焼き印されている。押されたばかりらしい。
「既に奴隷印が押されているので、対処に困っております」
ジャン警備隊隊長が困っている。
「家に帰しても、奴隷印付だと受け入れて貰え無いだろうしね」
娘さんが泣いている。
「攫われたの?」
俺の質問に娘さんが頷いている。
胸の奴隷印に再生魔法を掛けてみた。スッと消えた。テリッチさんが調べている。
「奴隷契約も破棄されてます」
残りの2人も消してあげた。
「事情を聴いてから、家に届けてあげて下さい。将来が有るので内密に」
「了承しました」
だんだん腹が立って来た。
「アデルさん。その館の地下にワープ出来ます?」
「出来るぞ。丁度楽しみが始まる時間だ」
「全員透明化し、着いたら全員始末する。ミノル頼むぞ音を静かにな。アデルはミノルの援護。儂とテリッチは廊下と階上。良いか?」
マネさんの指示に全員頷く。
石造りの地下室に着いた。真ん中で大の字に吊られた女性を除いて全員凍らせた。
マネさんとテリッチさんがドアから飛び出して行った。アデルさんが男達を見ている。
「殆ど知っている。鞭を持って凍っているのが男爵だ」
女性に近寄って不思議そうに見ている。
「これは男爵夫人だな」
アデルさんが吊られていた時より酷い状態だ。奴隷印まで押してある。長くは持たないだろう。
「始末されたか。嫌な女だった」
部屋を見渡すと扉が有った。開けて明るくすると倉庫みたいだ。黄色いスライムみたいのが大量に瓶詰めにして並んでいる。
化粧箱に焼き印のセットが入っていた。
テリッチさんとマネさんが戻って来た。
「これは一財産ですね」
「高いのですか?」
「とても高価です」
「じゃ、貰って行きますか」
マジックバッグに瓶詰めをどんどん入れると、テリッチさんが薬瓶と乾燥薬草も入れている。
「黄色いの触れても大丈夫ですか?」
「大丈夫です。これをすり潰して薬草を加えると、アデルさんに塗ってあった液体になるんです。傷跡の色が消えなくなり、ミノルさんクラスじゃないと治せないですね。違った病気のポーション原料にもなるんですけどね」
テリッチさんが倉庫をほぼ空にしてしまった。
「ノア様とフェン様が悔しがる程の薬ばかりです」
「錬金術師が居たのですかね」
「居たとしても、初歩的な方と思います。本棚が情けなさすぎですから」
大部屋に戻ってテリッチさんが大鏡を見ている。
「アデルさんの時も有りましたが、何に使うんでしょうかね?」
俺が聞くとマネさんが答えた。
「吊られた女が自分を見る為だ」
俺が鏡を見ていると。
「ミノルはまだ知らなくて良い事だ」
マネさんに素直に従った。
テリッチさんが大鏡をマジックバッグに入れ出した。
「あそこに姿見が無いですから」
テリッチさんが根こそぎ持って行く。
「もう何も無いですね」
我々は洞窟に帰った。
テリッチさんはローブを脱ぎ今まで放置してあった石畳の部屋に行って、男爵の所から持って来た棚を組み立て出した。俺も手伝う。
棚が出来上がると黄色いスライム状を、大きさ順に並べていく。
「もの凄い価値なんですよ」
「あの女は、これを買う為に私を売ったのだ」
アデルさんが黄色いスライムみたいのを、ぼーっと見ている。
「あの女は、これにハマったのか。確かに金が掛かるな」
「中毒性が有るのですか?」
「無い。時間が来れば死んで流れる。本人の心が弱いと次々と欲しくなる。儂も入れられて暫く変だった」
「私は週に2回くらい入れられてたので、頭が狂いそうでした。次が村だったので関係無くなりましたけど」
テリッチさんは次の棚を組み立て、薬瓶を並べ出した。
「暫く何も買わなくても良いです」
ニコニコしている。机を出して色々並べている。奴隷印の箱まで持って来たようだ。
「色々種類が有るのですね」
「用途が違うのですよ。これが普通のですね。これが遊び用です。貴族の御婦人に押して売ったりですね。放置しておくと次の人が悪い事に使うので持って来たんです。とても高価なセットですから」
テリッチさんは詳しい。
「これは針のセットですか?」
「そうですね。アデルさんも使ってましたでしょう。凄い値段で殿方が御婦人に買うものです。男爵は相当稼いでいたようですね」
アデルさんが鎖の山を見ている。
「ミノル。私が騒ぎ出したりしたら、これで暫く吊っておいてくれ。本気だ、頼むぞ」
「儂がやってやる。心配するな」
「頼む」
倉庫を出て池に入っていると、マネさんも来た。
「アデルはまだ時間が掛かる。見守ってやってくれんか」
「当然ですよ」
アデルさんがショボンと土手に座っていた。




