第6章19話 魔国の1日
「ミノル殿、実は今日来て貰ったのはお願いが有りまして」
ラルドさんが妙に真剣な感じで話している。
「魔国はミノル殿とマイヤー商会のお陰で豊かになって来て、ホフマン辺境伯領の魔人大量雇用で送金などでデルが相当流入しているのです」
「それは良かったですね」
「貿易収支から考えても、デルに困る事は無い筈なのにデル不足になっているのですよ」
「誰か大量に流出させている奴が居ますね」
「そうなのです。お陰で次の貿易決済が難しい状態なのです」
「その解決は僕に出来ますよ」
「ミノルがまた払うんじゃ駄目なんだよ……」
フェン兄さんが珍しく暗い顔をしている。
「僕が払うなんて言って無いですよ。見て下さい。あっ、人払いを」
魔王の間に我々しか居なくなった。
俺は1万デル銀貨を出した。
「100枚」
ジャラジャラと100枚の銀貨が現れた。
「通貨を複製出来るのですか!」
「はい、僕の作った複製魔法です」
フェン兄さんが複製の銀貨を調べている。
「全く同じだよ……」
「前に兄さんにあげた複製の最新版」
ラルドさんとフェン兄さんに魔法を渡した。
「気軽に人に渡すと大変ですから、気を付けて下さい」
「絶対、人に渡しません」
ラルドさんも真剣な顔をしている。
「好きなだけ複製して使って下さい。デルが溢れて困るのは王様ですから。
ホフマン辺境伯領も、これで街の改造をしようかと思ってるんですよ。建設の支払いに使えば民に渡って送金したり、買い物する訳ですよ。
そうすると、他領や魔国から買い物して流出する訳です。足らない時は複製して、多い時はホフマン家で積んでおけば良い訳です。潰したって良いのですよ、タダで施設が手に入ったのですから」
「なる程、疑似通貨発行か。ミノル、やっぱりお前が貴族向けだわ」
「お断りです!」
大笑いになった。
「でも、流出させている奴を放置するのは大問題ですよ。王家の金貨流出みたいな話ですもの」
「そうなんですミノル殿」
「誰か分かってるんですか? ニセ魔王はこないだ倒したですし」
「ディノ伯爵らしいのですよ」
「御親戚?」
「違いますよ。仲は悪くも無く、良くも無いですね。あそこにお金が行くと出て来ないのです。パスコ王国の貴族か国王とコソコソやっているみたいです」
「片付けます?」
「やってくれますか」
「前回の御親戚と、どっちが強いです?」
「そりゃディノ伯爵が、遥かに弱いですね」
アデルさんの魔壁が治って、リハビリに20層で遊んでる最中なので小手調べに良いかも知れない。
「仲間を呼びます」
アデルさん達がすぐ来た。三人ともローブ1枚で装備もして無い。
「皆さん済みませんです。今日は4人で?」
「あれより弱いなら十分でしょう」
「サキバも出しましょう」
「駄目ですよ。表向き証拠無しの戦争にサキバさんが入って、もし漏れたら大騒ぎですよ」
「それもそうですね……」
「僕等でやりますよ」
「マネさん、誰かに場所を教えて貰って戻って来て下さい」
「了承した」
暫くしてマネさんが戻って来た。
「規模は小さいが、結構固めているぞ」
「セリちゃん達を呼びます?」
「いや、4人で問題無い」
「粒状化? 爆裂?」
「粒状化は難しい。バリアーを張って魔術師置いて臨戦態勢に見えた」
「みんなワンド、持っている?」
全員持っていた。
「行ってから考えましょう」
全員透明化してワープで飛んだ。
『本当にガチガチ臭いですね』
『既に漏れたのか?』
『儂はそうは思わん。何か理由が有るのだろう』
街は2万人クラスで、裏に森と中くらいの山が有る。街の前は草原と小さな森だ。
『ここから射程圏に入ります?』
『儂は、あと少し足らん』
『私も同じです』
『私は撃てるな』
『山に行きますか?』
『あそこに何か隠れていそうな気がしますけど』
我々は山の後ろにワープして観察すると、確かに魔術師がウジャウジャ居る。
『山に魔術師が居るのは、空から敵が来ると考えているのかな』
『もし巻き込まれると嫌だから、さっきの場所に帰って考えましょう』
全員賛成で最初の場所に近い林が近い草むらに行き、透明化を解除して休みとなった。誰か居ると不味いので念話は続行だ。
『ここは疲れ易いな。ミノル、これ預かってくれんか』
マネさんがローブを脱いで俺に渡した。テリッチさんとアデルさんもローブを脱いで俺に預からせた。
仕方無いのでマジックバッグに入れて、しまっておいた。
『ワンドは持っていて下さいね』
『済まんな、練習で服を着ないから動きずらくて、かなわん』
『私もそうです、服で動きが遅くなるので着てると怖いです』
『マネさんとテリッチさんの飛行技術が凄く上がっているから、そう感じるんですよ』
『私は頑張らないと、二人に相当遅れているのが自分で分かる』
アデルさんが悲しそうに言った。
『10層で特訓したら?』
『あそこはミアが夜自主特訓で占拠しとる』
『アデルさん2軍決定だね』
4人で遊んでいると戦闘の音がする。アデルさんが見に行った。
『ミノル、数千の軍が街を攻撃しておるぞ』
全員、透明化して見に行った。
『空軍だけで100騎以上居おるな』
ワイバーンの小型に乗った空軍が、山の魔術師達を攻撃している。
『空中戦だけ参加出来んかのう』
アデルさんが練習したくてウズウズしている。
『地上軍で2000くらいですかね』
『数える気も起きんが、そんなものだろう』
『まとめて片付けますか?』
『テリッチさんに賛成したいけど、ラルドさんに聞いて見ますね』
ラルドさんは、出来るならば是非との事だった。
『様子を見て参戦します』
先程の場所に戻って、2時間くらい林で休んでから見に行くとディノ伯爵の街のバリアーが消えて正門が突破されていた。
『意外と早い展開だな。ミノルそろそろやるか』
マネさんが提案して来た。
『そうですね。民も殺されちゃってますし、まとめて爆裂で片付けません?』
『そうだな』
我々は透明化して、魔術師達が居なくなった裏山にワープした。
兵のほとんどは街に侵入して、結構離れて街の外の陣地に200くらい残っている。
『僕が陣地で皆で街をお願いします。まず一人3連発して下さい』
全員で岩陰に隠れてワンドを持ってターゲットを定める。
「「「「爆裂」」」」
最近、強化されているので凄い威力だ。
「スドドドドーン!」
警戒で見ると陣地に赤い点が2個残っているだけだった。飛んで見に行くと親分らしい女性と魔術師らしい女性が倒れている。
ラルドさんの親戚顔みたいな感じだったので、魔壁を壊してマジックバッグに入れる。
魔壁を爆裂させた音に透明化を解除したアデルさんが反応している。
「痛いの思い出しました?」
「恥ずかしい話なのだが、破裂された時は信じられない程凄い快感なのだ」
真っ赤になっているアデルさんを、全員で見てしまった。正直過ぎるよアデルさん。
三人にローブを返し、王宮に帰った。
「お土産です。御親戚の顔みたいだったので」
「私の親戚ですね。なんで戦争しているんでしょう? 兎に角、有り難う御座いました」
我々は洞窟に帰って池で汚れを流し、夜のトレーニングに備えた




