第6章17話 アデル奪還
ダンジョンの20層で遊ぶのも今日で4日目になる。マネさんもテリッチさんも飽きる事無く続けている。
晩御飯を宿で食べて、テリッチさんと錬金術の実験をしていると、山の精霊様から連絡が入った。
「山の精霊様が完全装備で三人で来いと連絡がありました」
俺とマネさんは、慌てて服を着て装備を装置した。マネさんは色々なポーションをマジックバッグに詰めている。
準備が終わったところで山の鎮樹に飛んだ。
「ミノル、アデルに会ったのは何時だ?」
「三日前の朝食の時会いました」
「様子はどうであった?」
「お母さんの葬式以来、少し様子がおかしくて一方的に話して居なくなります。お母さんの友達に最後の礼を言いに行くとか言ってました」
「ここに来たのも三日前が最後だ。先程、誰かがメダルの鎖を切ろうとしたらしい」
アデルさんの居場所を調べると反応が無い。
「すぐに行きたいのですが反応が有りません!」
「私が飛ばしてやろう。アデルのすぐ近くに出すので戦う用意を忘れるな」
「はい! 全員透明化」
大きな部屋の真ん中で、鎖で吊られた裸のアデルさんの近くに出た。アデルさんの正面に大きな鏡と、その両側に貴族らしい男達が6人くらい笑いながら座っている。護衛の兵士が20人くらい、魔術師らしいのが三人ニヤニヤして貴族の後ろに居た。瞬間的に雷神を3連射して全員を倒した。
「儂は上の階、テリッチは同じ階の殲滅、ミノルはアデルを頼む!」
ここは地下らしい。
全員でマネさんの指示に従う。
アデルさんは身体中、前も背中も下半身も傷だらけだった。顔まで鞭で打たれている。
アデルさんは半目で早い息をしている。
粒状化で手足と頭を支えている鎖を取り、アデルさんを重力魔法でゆっくりと床に置いた。手首も足首も有り得ない方向を向いている。床には大きな魔法陣が書いてある。
透明化を解除してから、アデルさんの身体を調べようとする。
「触らないで!」
テリッチさんが現れた
「アー、アー」
アデルさんが意味不明な声を出している。左耳から白いミミズみたいな物が出て来た。
テリッチさんがガラス瓶を出して、ピンセットで中に入れた。慌てて蓋をして、右側に行き耳からピンセットで灰色のミミズみたいなのを、ゆっくりと引き出した。ガラス瓶にしまっていると、マネさんが帰って来た。
「全員片付けた」
アデルさんを見てからテリッチさんの瓶を見た。
アデルさんの股間から黄色いゼリー状の生き物が少し見えている。
「ミノル、アデルが失神するくらいの電を使え。早く!」
最小限の電を討つた。アデルさんが感電している。
鼻からも白いゼリー状の生き物が流れて来た。
「ミノル、まだ触るなよ!」
マネさんが俺を制した。
鼻から出たゼリー状の生き物をテリッチさんが手早く瓶に入れて行くと同時に、下半身から流れ落ちた黄色いスライムみたいなのも回収している。
マネさんとテリッチさんが水魔法でアデルさんの全身を洗い流し始めた。
マネさんがアデルさんの口に水を大量に流し込んで、アデルさんがむせて来たら重力魔法で足から吊した。吐き終えるともう1度同じ事を繰り返す。
「そろそろ良いかと思います」
「そうだな」
逆さまにしたまま浄化魔法を繰り返す。
身体を調べていたテリッチさんが、アデルさんの右足の付け根から細い針を引き抜いた。左足の付け根からももう1本。ヘソからもう1本。50センチくらいの、とても細い針だった。
「これで全部です」
「何処に運ぶ?」
「悪影響を考えると……妖精の池ですかね?」
「そうだな、あそこなら流量も多いし浄化も強いな」
アデルさんを逆さまにしたまま相談している。
「ミノル、このまま全員で飛べるか?」
「少し広がっていますが大丈夫です」
4人でワープして妖精の池に着いた。
マネさんはアデルさんを池に逆さまのまま放り込んだ。炭酸のような細かい泡がアデルさんの周りから上がっている。咽せながら仰向けに浮き上がって来た。
「治療はしなくても良いのですか?」
「駄目だ、無駄なのだ。今は消毒だ。まだ側に行かん方が良い」
マネさんが泡だらけになって浮いている。
「テリッチ、泡が減ったら……」
「わかってます。重力魔法で暫く沈めれば良いですね」
「頼む。精霊様に報告して来る」
マネさんが消えた。
俺は言葉が出なかった。
泡が減って来たのでテリッチさんがアデルさんを重力魔法で池に沈めた。大量に全身から細い泡が出て来る。浮いて来て咽せている。
「暫く、これしか無いのですよ。1日か2日はこのままですね。池の浄化に任せましょう。身体中にあの黄色のヤツの液が塗ってあります。それが浄化されてからですね」
「どうやって浄化されたか分かるのですか?」
「本人が痛がりますから。痛がり始めたらもう1日くらいでしょうか」
テリッチさんがアデルさんに同じ事を繰り返す。泡がシュワシュワと音を立てる程だ。
1時間くらいでマネさんが帰って来た。
「山の精霊様には詳しく説明しておいた」
「何か言ってました?」
「ミノルは自重するように、アデルに暫く触れるなとの事だ」
「……」
「アデルは自分で針も打たせている。メダル持ちを操る事は出来ないのだ。奥様の葬式辺りから疑われないように、お詣りと少しだけ我々に顔を出し後は奴等の所に行っていたのだ。本人だけは敵討ちのつもりで自分をエサに使ったつもりだったかも知れんが……」
「先程の部屋の死体は全部粒状化し、家には火を放っておいた。証拠は残らんだろう。ミノル、アデルが帰っただけで諦めろ。報復は戦争が起きるぞ」
「良く分かりました。何もしません」
テリッチさんが、アデルさんをまた沈めた。
「マネさんは色々な知識が有るので助かります」
「知識。知識だけでは無い。アデル程では無いが私も昔、あの黄色いのを入れられて張り付けられてな。観賞用に使われた」
「私もそのくらいなら経験が有ります。18歳くらいの時でしたね」
「テリッチさんもですか?」
「私、何故か追い出された師匠に売られて、17歳から3年その手のような事ばかりさせられてました。アデルさんや奥様のような潰す目的で使われた事は無いですけど」
「そうだ、アデルは物扱いだぞ。奥様もそうだ。メダルを返して夕方まで帰らなかった時、使い捨てにされたのだ。利用価値が無くなったからな。
アデルはメダル持ちで無ければ死んでいるところだ。そのくらい酷い扱いなのだ。分かったら儂達に任せろ」
マネさんに反論は出来なかった。




