第6章16話 20層の戦い
あれから三日間毎晩ダンジョン遊びを続けている。荷物も洞窟に全て移し、トメラさんから買った箪笥に整頓して入れるようにしてある。
箪笥の置いてある乾燥した部屋は、とても快適で睡眠や本当の勉強には最適で錬金術の本も相当進んだ。
ダンジョン遊びから帰った時は、お姉さん達が興奮しているので土手か横の草地で合同勉強会を開いてくれるので体調は万全だ。
朝はさすがに9時か10時に起きて三人でお詣りをする。俺は館に行き洗濯物を置いてミリーさんと言葉を交わし、ミミーちゃんに合ってから自由時間だ。
お母さんが居なくなってからミリーさんが明るくなった。
「坊ちゃん、コックも変わり以前のように美味しくなりましたので、是非食べに来て下さいね」
この数ヶ月、お母さんが雇ったコックの料理は酷かった。
ミミーちゃんも俺をペロペロやってから、騎馬隊の練習場で遊んでいるとご機嫌だ。全てが順調になって来ている。
宿でコーヒーを飲んでいると、テリッチさんが薬草集めから帰って来た。
「最近、私もコーヒーが茶より好きになってしまいました」
コーヒーを飲みながらニコニコしている。
「マネさんが館に捕まってますので、僕は禁断の森の再生しに行きます。午後に錬金術の本で聞きたい場所が有るので、お願いしますね」
「はい。ついでに実験も溜まってますから、まとめてしましょう」
テリッチさんはポーション作りをするらしい。
テリッチさんと別れて森に行くと、セリちゃんとミアさんが既に再生を始めていた。片手で挨拶してからどんどん再生をしていく。
魔石がリングに付いて再生範囲が広がっているので、セリちゃんとミアさんが楽しんでいるようだ。再生のレベル上げも相当進んだと思われる。頑張らないと抜かれる。
禁断の森の境界の草原が見えて来たところで、お茶の時間となった。
「司令、何時までも『禁断の森』なんですか?」
詰め所でミアさんがお茶を飲みながら聞いて来た。
「名前は有るんじゃないかな? 200年前までは、普通の森だったのだから」
「そう言えばそうですよね」
「ノア兄さんがそういうの好きだよ。後はエルフさんに聞くとか」
「エルフに聞く手が有りますよね。今度、数人当たってみます」
警備隊の人が走って来た。
「20層で死亡事故です!」
「19層終了の報告も無いですよ」
セリちゃんが怒っている。
「冒険者が規定を無視して突入したようです」
「生き残りは居ますか?」
ミアさんも不快そうだ。
「5人チームで4人死亡、1人重傷のようです。19層終了の他チームのメンバーからの報告であります」
詰め所に高そうな服を着た冒険者のお姉さんが入って来た。新規流入者のようだ。
「スミマセン、19層終了の届けと移動石を届けに来ました」
「御苦労様です。座って下さい」
綺麗なお姉さんが俺に移動石を渡して、席に座った。ラッキー! 俺はすかさず移動石を複製してポケットに入れてから、セリちゃんに渡した。
「状況を話して頂けますか?」
ミアさんが事務的に質問を始めた。セリちゃんが移動石の代替え品を、お姉さんに渡している。
する事も無いので表に出るとマネさんがローブに剣帯も付けないで立っていた。
「欲を出さねば死ななかったのにのう」
広場に運ばれた冒険者の死体は全員焦げて潰されていた。
「モンスターは何でしょうね?」
「生き残りが居るようだから、報告が有るだろう」
セリちゃんが走って来た。
「20層のボス戦が分かりました! 10層のボスが『地獄の使者』と呼ばれているんですけど、それが5体まとめて出るようです」
「そうなんだ」
「あのー、司令と副司令も手伝って頂けませんか?」
「良いですよ」
「テリッチも呼ばないと怒られるぞ」
「テリッチさんには連絡済みです」
テリッチさんが現れた。やはりローブ1枚の軽装だ。
「何か面白い事が有ると聞いたのですが」
セリちゃんが、また説明している。
「面白そうですね、すぐに行きましょう」
「マネさんもテリッチさんも、その軽装で良いのですか?」
「このままで良いですよ」
「セリ、すぐに出発だ」
ミアさんが来て5人で20層の入口にワープした。せっかく手に入れた移動石は必要無かった。
「司令。透明化しましょうか?」
ミアさんが聞いて来た。
「セリちゃんとミアさんはそうして。じゃ、開始」
入口に入ると扉が閉まり、マネさんとテリッチさんが歓声を上げた。
「「「「「パオォーン」」」」」
5体同時のモンスターの叫びが凄い迫力だ。
氷弾の連射を先頭の1体に集中して飛び上がる。マネさんとテリッチさんが、他の4体からの攻撃を空中でヒラリヒラリと舞うように避けながら1体目を倒した。
2体目に集中攻撃を始めると、セリちゃんとミアさんが参加して来て氷槍の連射を始めた。5人で攻撃すると簡単に終わる。
3体目に集中攻撃を移し、マネさんとテリッチさんは大きな動きで自分達に相手の攻撃を向けさせている。
俺が氷槍を5連射すると敵が倒れた。
『残り2体は儂達が片付けるので、手出し無用!』
マネさんが念話で指示を出した。俺は部屋の隅で見物していると、セリちゃんとミアさんが隣に来た。
マネさんとテリッチさんは氷弾の連射数を減らし、モンスターの大きなファイヤーボールを得意の大の字回転や背面飛びで回避してゆく。
時々、思い切り近接戦をしてモンスターの殴る手をヒラリヒラリと回避しながら氷弾を単発で撃っている。
ローブがヒラヒラして動き辛そうだ。
「あの、マネさんとテリッチさんはモンスターを長持ちさせているのですか?」
「そうみたいですね。練習じゃないですか」
セリちゃんが不思議そうな顔で納得した。
「二人共凄い動きですよね。私には絶対出来ません」
「ミアさんも練習すれば出来るよ」
何せお姉さん達は3日前からあの動きで遊んでいるのだから。
「ヴオォーン」
テリッチさんのが倒れて消滅する。
「ヴオォーン」
マネさんのも消滅した。
部屋の中心にご褒美が出て来た。大楯と大剣、最初ご褒美らしい。次の宝箱に魔石入りメダル、どれも大した物では無かった。
「セリ、ミア、回収しておいてくれ。大切な予算財源だ。儂達は風呂に帰る」
マネさんとテリッチさんは汗だくで、顔は紅潮している。
洞窟に着いて、装備を外して服を脱いだ。とても快適になった。
「とても楽しんでましたね」
マネさんとテリッチさんの合同勉強会が、いきなり始まった。




