第6章12話 お母さんの葬式
三日後、家族だけでレナ・ホフマン辺境伯夫人の葬儀が行われた。棺に、お母さんの身の回りの品を入れホフマン家の墓地の隅に埋葬された。ホフマン家の墓には叔父さんが断固として入れなかった。
参加者は、叔父さんと兄貴達に俺だけだ。誰も、お母さんの居場所を聞かなかった。寂しい幕引きだった。
「さあ、出直しだな」
叔父さんが墓の前で言った。
「他の家族に問題が起きなくて幸運だったな」
ノア兄さんが続けて言った。ダニエルは念頭に無いようだ。
「アデルさんまで巻き込んでしまって、ミノルに申し訳無いよ」
「儂もそう思う。済まんなミノル」
フェン兄さんに叔父さんが応えるように言った。誰が悪い訳でも無く、本人の自覚の問題だ。
「気にしないで下さい。叔父さんと兄さん達が無事なのが大事なのですから」
「取り敢えずマネを副司令に任命した。アデルが復帰するまで待てんのでな。表向きは副司令の2人体制でやってくれ」
「済みません。気を使って貰って」
全員で執務室に移動した。
「喪に服するのは1月で良いぞ。と言っても外交は待ってくれんが」
「街は溢れそうだし、ダンジョンは現れる、地脈は日本と繋がる。ホフマン領は忙し過ぎて、今喪に服している訳には行きません」
ノア兄さんが切実に現状を嘆いている。
「手は打って有りますので、徐々に改善されると思います。リヒトブルグの壁も魔人やダークエルフを使って、魔法利用の建築をしているので後数日で出来上がると思います」
「あれ本当に早いね」
フェン兄さんが感心している。
「やはり魔人やダークエルフの女の娘は、仕事がなかなか無かったので雇い易いのですよ。工事現場の8割くらいが彼女達です。土魔法でどんどん組み立てて行くので早いです」
「兎に角、力を合わせて乗り切ろう」
叔父さんの言葉で葬儀が終わった。
館の食堂にメダル持ちが揃っていた。
「奥様の埋葬は終わったのか?」
アデルさんが聞いて来た。
「終わりました。行状が悪かったので、密葬しか無かったのが残念ですが」
「死因は何なのだ」
アデルさんが再度聞いて来る。
「衰弱死です。栄養を受け付け無くなってしまいました」
「ああなると衰弱死が多いです」
テリッチさんが補足してくれた。
俺はサイレンスで音を遮断した。
「これは家族だけの秘密なので口外無用でお願いします。仲間の信頼を保つ為にも皆さんには話しておきます。
お母さんは男達とホフマン家の乗っ取りを計画してました。皆さんも気が付いているでしょうが、館の嫌な雰囲気が消えているのは、兄貴達とテリッチさんが呪いの魔法陣や品物を排除してくれたからです。」
全員が黙って聞いている。
「主犯の男達三人は僕が殺しました。30歳くらいの王党派の貴族の息子達でした。全員自白済みです。叔父さんや兄貴達に汚れ仕事をさせたく無かったので僕の責任で実行しました。
他にも間男達が居るようですが、お母さんが自分で誘っていたようなので報復行為は出来ませんでした」
名前は伏せたがアデルさんは分かったようだった。
「館の品を持ち出して売ったりもしていたので、お母さんも言い訳のしようが無く現実逃避に走り、衰弱して本日に至ります。
恥ずかしい話しですが、お母さんの末期の状態は皆さんもご存知でしょう。
ホフマン家の墓に入れるのは無理でしたが、ホフマン家の墓地内に墓を建てさせて貰ったのがやっとでした。行状が悪過ぎでしたから」
アデルさんやセリちゃんとミアさんが泣いている。
「僕が話せるのはこんな物です。黙っていると身内間で不信感が増大するので、家族の恥ですが話しておきます。これで終わらせたいので、質問が有りましたら今お願いします」
誰も質問しなかった。
「無かった事にするのは無理ですが、貴族の家の対応としては穏便に済みました。今日から出直しです。皆さん、これからも宜しくお願いします」
メダル持ちの会合が散開となった。
「ミノル、話してくれて有り難う」
アデルさんが言って来た。
「アデルさんも引きずらないで下さい。お母さんが自分で招いた結果ですから。終わらせましょう」
アデルさんが泣きながらワープして消えた。
「アデルさんは責任を感じているのですよ」
テリッチさんが言う。アデルさんは多少の責任を感じる義務も有ると思う。
「居なくなったりしないですかね?」
「行き場も無いし、そこまで無責任でも無いだろう。儂から良く言っておく」
「お願いします」
俺はテリッチさんと温泉の池に帰った。池に浸かって落ち着いてから土手に座った。
テリッチさんも上がって来て隣に座り、長いキスをしてくれた。緊張感が収まって来た。
「消耗しましたね」
勉強会を開いてくれた。本当に有り難かった。
意識が戻るとマネさんが隣に居た。
「アデルにはしっかり言っておいた。本人も反省してミノルに感謝していた。心配は無用だ」
マネさんも勉強会をしてくれた。この二人に生かして貰っていると実感した。




