第6章11話 地脈の衝突
妖精の池にワープした。妖精さんが居るだけ気分が良くなるような気がした。誰も居なかった。こんなところを見せると心配掛けるだけだ。
服を脱いで池に浸かる。何時もより湧いて来る水に勢いが有る。暫く浸かっていると、少し気分が良くなったような気がする。身体中粉だらけだ。
ダニエルを廃嫡すると強行したのが、お母さんだった事を思い出した。ホフマン家の乗っ取りの序章だったのかも知れないとは考えもしなかった。
ダニエルを見つけてやらないと、だが何ひとつ情報が入って来ない。何か変だ。普通は断片的でも何か噂程度は入って来るものだ。
だがダニエルが本当にホフマン家の血を継いでいるのかという疑問も有る。お母さんと間男との子の可能性が高いのも確かだ。
叔父さんは、お母さんを『ノアとフェンの母親だからな』としか言わなかったしな。
叔父さんも兄貴達も絶対にダニエルの話をしないし、興味も無い。
そんな事を考えているうちに寝てしまった。テリッチさんの助けが無いので、夢を見始めた。誰かの後ろ姿が見えた途端に口から安心感が流れて来た。次に幸福感が身体中に回って、完全に意識が無くなった。
身体に力が流れて来ている。口から力が供給されている、マネさんだ。
目を開けるとマネさんが俺を支えて、温泉の池に居た。
「ミノル、起きたか」
マネさんが俺を起こしてくれた。
「僕は妖精の池で寝たと思いましたが」
「儂とテリッチで、ここに連れて来た。風邪を引くと思ったのでな」
「あそこだとアデルさんも入れると思って」
「今日はアデルの順番の日だから誘ったのだが、体調が悪いので寝ると言っておった。ミノルの着替えも全部預かって来たぞ」
「そうですか」
「気にするな。見ろ妖精が何人か付いて来たぞ」
温泉の池に妖精が居る。凄く嬉しくなった。
着替えを取りに上がると俺の荷物が全て置いて有った。
「ミノル、がっかりするな。アデルは奥様の悪影響を受け過ぎた。既にミノルが大好きだったアデルと違うのは、ミノルが良く知っている筈だ。見守ってやれ、あいつが自分で立ち直るしか無いのだ」
「はい、マネさんの言う通りだと思います」
マネさんが俺にキスをしてくれた。また元気が出て来た。
テリッチさんが食べ物とエールを持って帰って来てサンドイッチや鹿肉の香草焼きをマジックバックから出している。
「温かいうちに食べましょう」
御飯が美味しく感じる。
「勇者は転生者ならば分かりますが、日本人の召喚ぽかったですね」
「召喚などしたら日本政府と大騒ぎになるぞ」
「違う時代から連れて来たとか」
「過去から連れて来たとしても、日本人の未成年に奴隷印を焼き印して使ったら大騒ぎですよ。放置したら内閣総辞職は最低食らいますね」
「現在、互いに出入国は禁止状態な筈だ」
「可愛い女の娘でしたね」
「僕は、あの手の女子は苦手ですね。口煩そうで」
「だが、あの娘は最後まで前進していたな」
「自殺行為ですよ。あの程度で乗り込んで来るなんて」
「勇者として召喚するか、転生するのだから奴隷印は後で付けられたのだな」
「奴隷印の承認を自らしてるし不思議ですね」
「操られだって有りますから」
「操られと見逃すが本人に心の隙が有ると言うか、その願望が無いと簡単には操れんぞ」
「勇者はあれで終わりですかね」
「分からないですね。そもそも勇者は魔王と戦う為に居るわけですから、僕等には関係無いですよ」
「魔王様と戦うのか? 瞬殺されるぞ」
「200年前の魔王討伐だってダンジョンの中でしょう。誰と戦っているのか理解不能ですよ」
森の精霊様から呼び出しが入った。服を着てワープした。セリちゃんとミアさんが来ている。
「ミノル呼び出したのは他でも無い。先程の地震の話だ。こことクレマドルフの間の辺りで地脈が他の地脈と合流したようだ」
「あそこに他の地脈が有ったのですか?」
「無かった。だから細くなった部分が荒野だったのだ。お前達が森を増やしてくれたので地脈も太くなって来ていたが、他の地脈は無かった」
「新しく出来たのですか?」
「気軽に出来る物では無い。違う世界の地脈、まだ分からんが日本の地脈と考えられる」
「日本と繋がったのですか?」
「そうみたいだ。日本との繋がりが強化され、表裏世界のようになったのかもしれん。大きな問題は今の所無いが、荒野の辺りを見て来てくれんか」
「はい、直ちに」
我々は森を再生した荒野の端までワープした。上空に上がると林にした先の荒野に池が出来ている。街道から少し離れた右手側だ。
全員で降りてみる。
「池と言うか、少し大きいな」
「まだ少しずつ広がっているみたいですね。湖になるかも知れませんね」
マネさんとテリッチさんが話している。
「司令、ここらも草原くらいには成るのですか」
「草原どころか時間は掛かるけど森に成ると思うよ」
ミアさんに答えた。再度上空に上がったセリちゃんが降りて来た。
「ここは宿場町跡の少し先くらいですよね」
「そうだな、クレマドルフも近いな」
「ここが地脈の合流地点ですかね」
「可能性は高いですね、魔力の流れて来る力が強いですから」
テリッチさんの意見に皆が合意した。
クレマドルフまで行ってみると、街の近くに池が出来ていた。それ程大きくはないが簡単に無くなってしまう大きさでも無い。
川が出来て荒野に水が流れ出している。
「ここは、これ以上は大きくならないな。流れ出す水量と湧いて来る水量が均衡している」
テリッチさんが湧き水を手に取り調べている。
「飲んで問題は無いですね。無害で綺麗な水です」
少し飛んで調べて見ても、他には池は無さそうだ。帰って森の精霊様に報告する事にした。宿場町跡から空を飛んで森の鎮樹に向かう。森の中には何も無さそうだ。暫く飛行して鎮樹に戻った。
「宿場町跡の近くに湖が出来そうです。まだ拡大中です。後クレマドルフの近郊に池が出来て川が流れ始めています。水は飲めるようです」
「そうか、随分広範囲に地脈が共有化されたな。お前達は日本でも魔力を受け取れるようになったようだ。ミノルならばワープして日本に行けるだろう。後はそれ程変化は無いと思う」
「継続して池を見守ります」
「頼んだぞ」
池の調査は警備隊情報部がするので、セリちゃんとミアさんがする事になった。
我々は宿に行きエールを飲むことにした。
「アデルを見て来る」
マネさんが席を立った。
「精霊様の呼び出しに来れない程、体調が悪いのでしょうか」
テリッチさんが心配している。
「アデルは居なかった」
守護主の権限で居場所を見ると、王都の近郊に居るようだ。
「守護者の義務を果たさず何をしているのだ。念話も通じないぞ」
本人に聞くしか無い。大事になる前に自覚して貰わないと。お母さんだけで終わらせて欲しいと思った。




