第6章10話 ダンジョン準備とお母さん
「本当にダンジョンなんですか?」
「残念ながら、騎士団で調査に降りているところです」
ドロン騎士団隊長がにこやかに答えた。
「困ったな。宿屋不足だし、警備隊も足りないし……ジャン警備隊隊長どうします?」
「人口の急激な増加について行けてないですから」
「流入した冒険者はできるだけ、リヒトブルグとリリアドルフ、ヘフナドルフに分散しか無いですね。リリアドルフのベッドハウスはEクラス、Dクラス優先にして下さい」
「了解しました」
「ジグロ冒険者ギルド長をここに呼んで下さい」
トレル警備隊情報隊長が消えた
「コンサーバドルフは使えます?」
「大丈夫です。宿も数件有りますし、冒険者ギルドも有ります」
ジャン警備隊隊長の言葉に少しホッとする。
「マインズドルフはどうします? 宿も冒険者ギルドも有りますが?」
「あそこは流入者の立ち入り禁止にして下さい。山の精霊の鎮樹と聖樹が有るので、変なのに入られると大変な事になります」
「そうですね。あそこは地味に最重要地域ですよね」
「宿の案内とかは各ギルドにしっかりやって貰って下さい。鍛冶ギルドや薬師ギルドなんかも増えているんでしょう」
「大工と細工師のギルドも凄く増えてます」
「全ギルド、低クラス優先でベッドハウスを使わせて下さい。ダンジョンは入場税を取ります。ランク別に料金設定するように」
「坊ちゃん、大変な事になりましたね」
ジグロさんが来ていた。
「今ジャン警備隊隊長に大まかな事を伝えておきましたので、相談して協力態勢をお願いします。早く動かないと大変な混乱が起きる可能性が有りますから」
ノア兄さんまで現れて大騒ぎになっている。
「さっきの地震は大きかったな」
ノア兄さんが話し掛けて来た。
「地震が有ったんですか?」
「王都では無かったのかな。かなり大きいのだったぞ。ところで透明リング、有り難う。今日もフェンが無事だったのも、あのリングのお陰だった。先日の王都の事件みたいな事が有れば、親父も安全だし」
「そう思って配ったんですよ。外さないで常に付けていて下さいね」
「うん、貰ってから付けたままだよ」
「今のところメダル持ちと兄さん達と叔父さんしか持って無いですから秘密に」
「分かっている。ところで親父がミノルに相談が有るそうだ。顔を出してやってくれよ」
「はーい。これから行きます」
「頼むな」
近くにテリッチさんが居たので、三人で宿に逃げるように伝えておいた。
館に行って、叔父さんの執務室に行く。確かに館の雰囲気が良くなっている。
執務室のドアを開けて頭だけ出すと叔父さんが居た。
「ミノル。良く来てくれた。早く入れ」
「何か相談が有るとか」
「誰にも聞かれたく無い話だ」
「まず人払いを」
叔父さんは隣の部屋の警備隊員と騎士団員に人払いを指示して帰って来た。
「サイレンス」
部屋全部にサイレンスをかけた。
「レナの事なんじゃよ」
「お母さんは大分落ち着いて来たとは聞いてますが」
「残念だが違うのだ、もう回復は難しいらしい。相当前から館の物を持ち出して売っていた形跡も有るし、男も複数いたようだ。この2ヶ月くらいアデルと共にやり過ぎた結果だ。3階には呪いの札が大量に貼られていて、テリッチさんとノアとフェンで何とか全部見つけて処分した」
「浮気と呪いですか……」
「放蕩とか浮気と言うより、ホフマン家を乗っ取るつもりだったらしい」
「その為の呪いですか……操られていたとしても……これは困りましたね」
「乗っ取り計画主犯の男達は確保した。王党派の貴族の放蕩息子達だ、全てを白状している。」
「王党派ですか、よりによって。お母さんは?」
「……蟄居部屋で1日中、自分を慰める行為をしている。日本だとこういう時はどのようにする?」
「表向きは病死ですね。本人は殺すか宗教施設に幽閉ですね。同じですよ、こちらと。でも、ここだと宗教施設はアイラス教団になるから使えないですよね」
「それで困っているのじゃよ」
「殺すのも後味悪いですものね」
「そうなのだ。ノアとフェンの母親だしな」
「後は……操られていたのもあるし……貴族的な情けをかけてですね……魔国に良い施設が有りますが……」
「どんな施設じゃ?」
「聞かない方が良いです。後で知っても怒らないで下さい。言えることは今の状況の、お母さんには幸せな場所かも知れません。黙って僕に任せませんか? 全て僕が勝手に行います。何も知らないで下さい」
「そんな……悪役を全て引き受けるつもりか?」
「それ以外に生かしておく方法が無いと思います」
「済まんな……」
「その間男達は何処に?」
「地下牢だ」
「兄さん達は知ってます?」
「知らせて無い」
「もう用無しになりました?」
「始末に困っておる」
「誰にも知られてませんか?」
「それは大丈夫だ。全員親から放逐されておる」
「連れて行ってくれませんか」
叔父さんが連れて行ってくれた場所は始めて知った。30歳前後のチャラい男達3人が牢に入っていた。糞尿の臭いが酷い。浄化魔法を掛けまくった。
「おい、俺をここから早く出せ!」
俺は男達全員を粒状化して消した。水魔法で床を洗い流して全て終わった。
「ミノル。済まない」
「ラルドさんと相談して来ます」
ラルドさんに会いに行った。
「ミノル殿、良く来てくれた」
「今日はお願いが有って来ました。人払いをお願い出来ますか?」
ラルドさんは全員部屋から出し、サイレンスを唱えた。
「実は、僕のお母さんなんですが……」
俺はラルドさんに包み隠さず話した。
「分かりました。お預かりしましょう。ミノル殿も大変ですな。でもミノル殿しか出来ない仕事ですな。お察しします」
「場所を教えて下さい。僕が勝手に行った事です。ラルドさんも知らないうちに。だから僕がお母さんを連れて行って置いて来ます」
「それが良いのですかね……案内させましょう」
「お礼は後日、改めて」
魔王の騎士が連れて行ってくれ、すぐに帰って行った。村が一望出来る場所だ。魔王の兵士が村を監視している。見覚えのある女性が何人もいる。
涙が出そうになったが我慢した。仕事が終わって無い。
ワープで執務室に直接入った。
「叔父さん最後に会いますか?」
「いや、無用だ。人払いしておいた。鍵は机の上にでも置いておいてくれ」
俺は頷いて部屋の前にワープした。誰もいなかった。部屋に入って鍵を机の上に載せた。
部屋には、お母さんの声だけが響いている。お母さんに浄化魔法を掛けて、村にワープした。ゴブリン達が驚いている。
俺は飛び上がって、先程の場所に着地した。お母さんは既に彼らの中に埋もれていた。テリッチさんが、ある意味幸せだったと言っていたのを思い出し、暫くお母さんを見ていた。
泣きたいだけ泣いてから帰ろうと思った。




