第6章09話 奴隷印付き勇者
広場が浄化され調査が始まって1週間くらい経つが何も進んでいないようだ。リヒトブルグの城壁工事が始まって忙しくなったので、森の再生をサボっていた。
俺は見に行ってないが洞窟の壁に6角型の何かをハメる穴が在り、それで何かが起こるらしい。
俺は壁を壊す提案をしたのだが、まだ決めかねているようだ。
「今日は、再生済みの森と接続しましょうか?」
「そうだな、何か無いと達成感が無いからな」
アデルさんの意見にマネさんとテリッチさんが同意して、再生済みの森に向かって再生して行く事になった。
4人で森の再生をしていると背後から光に照らされ轟音が3連続で鳴り響いた。
『敵襲!全員、透明化』
振り返るとまた雷神が6発連続して落ちた。セリちゃんとミアさんだ。敵の先頭グループを押し留めている。
結構数が居る。重装甲の騎士団だった。
俺も先頭グループに雷神の3連射を撃った。アデルさん、マネさんとテリッチさんは後方グループの殲滅にかかっている。
先頭グループは、ほぼ片付いたのだが一人だけジワリと前進を始めた。俺もまた雷神の連射を始めた。
『中に居るなら氷の槍でも叩き付けて押し戻して』
俺は相手に余裕を与えないように、雷神を撃ち続ける。洞窟の中から氷の槍が連射され、敵が当たる度に後退する。
誰かが雷神攻撃に参加して来た。間断無い雷の白い光と雷鳴の『ドドーン』という音が森中に響き渡った。
氷の槍も洞窟の中から撃たれ続けている。敵は右手に派手な大きめの中剣を持ち、態勢を崩さず前に進もうとしているが守りに精一杯だ。
周りの敵が片付いたらしく、全員で雷神を放つとバリアーが壊れ呆気なく敵が倒れた。
洞窟からセリちゃんとミアさんが出て来た。後ろにフェン兄さんも居る。
最後に倒した敵の所に降りると、仰向けに倒れ煙を上げて焦げ臭い。俺くらいの年の女の子だった。
「司令、助かりました。奇襲攻撃だったので、後手にまわってしまって」
ミアさんがションボリしている。
「ミノル、来てくれなかったら危なかったよ」
「このお姉さんが結構強い上に、重装甲の騎士団ですから危なかったですよ」
「ミノル、この女は勇者みたいだぞ」
「こんな弱いのが?」
「見ろ、勇者の剣だ」
アデルさんが派手な剣を俺に渡した。
「重くてバランスの悪い剣ですね」
勇者を見ると、日本人みたいな感じがする。保健委員でもすれば似合いそうな感じだ。
「ところで怪我人は?」
「全員無傷であります!」
騎士団の小隊長さんが応えた。続々と騎士団と警備隊の人達が集まって来ている。
ドロン騎士団隊長とジャン警備隊隊長、コロン騎士団情報隊長にトレル警備隊情報隊長も現れた。
「何時ものように、全員剥いて一カ所に。この女と騎士団の隊長らしいのはここに置いておいて下さい」
騎士団の人が勇者を脱がして行く途中で6角形の大きめなメダルを発見して俺に渡した。
この女も魔道具だらけだった。
「勇者って素で強いんじゃ無いのですかね?」
「最近の流行りなのかもな」
マネさんが素っ気ない。
女性に申し訳無いけど裸にしたら、やはり出て来た。パンツで隠れる場所にアイラス教団の焼き印が付いていた。結構大きい焼き印だ。
「奴隷印に似てますね」
テリッチさんが調べながら言った。
「そうですね、服従印のようなものです」
「勇者にですか?」
「若い娘に可哀想にな」
「召喚されて奴隷ですか……」
「召喚した勇者は三人くらい居ると聞いてるよ」
「フェン兄さん、そういうのは教えておいてよ。俺は来ないようにするから」
「そう言うなって、先週王都で聞いたばかりナンだから」
「忘れてた。はい壁の鍵」
6角形のメダルをフェン兄さんに渡した。
「司令、王国騎士団は150人でした。これが兜150個です」
ドロン騎士団隊長がニコニコしている。マジックバッグを渡すとバッグに兜を入れてくれた。
いつもの騎士団員が2人待っている。
「服くらい着せてあげたいけど、勇者の奴隷焼き印を晒したいので女はそのまま、男は見苦しいからパンツでも履かせて下さい」
「司令。今日は何をします?」
セリちゃんがワクワクして待っている。
「今日は王都の城壁を無くそうか」
「それは良いな」
マネさんがすぐに乗って来た。
「女は仰向けに奴隷印が見えるようにお願いします。置いたらすぐ撤収して下さい」
「了解しました!」
「王都に着いたら全員散開、各自城壁を粒状化して下さい。透明化して出発」
王都に着くと全員散開して城壁に向かっている。騎士団員の人達は王宮前広場に死体を置くと、マジックバッグの中だけバラまいて消えて行った。
城壁が消え出している。俺も参加して、どんどん粒状化して行く。誰かが面白がって正門だけ残している。
貴族院の建物が半分くらい作り直されている。
『爆裂使うから気を付けて』
俺は修復中の貴族院に爆裂を3発連続で撃って建物の陰に隠れた。貴族院とその周囲は平らになった。
『警戒で見ると皆、無事のようだ』
壁は繋がっているので、1箇所粒状化するとドミノ倒しのように粒状化されて行く。とても効率が良い。
広場の勇者の死体に2人が抱き付いている。あれも勇者臭い。
『ほぼ終わりましたね。広場に他の勇者らしいのが居ますので、片付けます。全員、雷神3連射!』
最初の3連射で簡単に終わった。
『撤収!』
全員で禁断の森の広場に帰って来た。
フェン兄さんが寄って来た。
「ミノル、御苦労様。壁が無くなったら、これが有った。勇者の剣の大剣だと思う」
「館の宝物庫に入れてホフマン家のコレクションにでもしたら?」
「良いのか?」
「構わないですよ。そんな物売れないだろうし、有れば、また騒ぎの元になりますから」
「司令。これが今日の魔道具です」
ドロン騎士団隊長が袋をくれた。
「騎士の武器なんかで騎士団で使えるのが有ったら取って下さいね」
「それは助かります。見習い達の武器に困っていました」
「ジャン警備隊隊長。プレート要りません? 警備隊のドワーフさん達の材料になりますよ」
「とても喜ぶと思います。有り難う御座います」
「あいつ等、この剣を取りに来たんだ。有ったのは、それだけでした?」
「物はそれだけでしたが……司令、残念ですが……あれダンジョンの入口です」
ジャン警備隊隊長の言葉に力が抜けた。




