第6章07話 禁断の森の丘
『あれ何でしょうね?』
禁断の森の中心なのだろうか? 今再生している場所の上空から見ると、大分離れた所に草地の広場と小山が有る。
薄くなって来ているとはいえ、霧の中にうっすらと見える。
『分からんな行ってみるか』
マネさんがそう言って移動し始めた。アデルさんと一緒に後を追う、テリッチさんは午前中錬金術の仕事でお休みだ。
『丘と言うか小山なのか、少し大きい洞窟の穴が見えるな』
『側に行かないと分からんが、この霧の中に降りる気はしないな』
『僕もアデルさんに賛成ですね。上空から周りを再生して浄化するのを待ちましょうよ』
草地の広場の周りを再生していく事になった。経験的に霧が薄くなるには、最低周囲100メートルは森にしないと駄目だ。
3人でひたすら再生して40分後、休み時間を取る事にした。
宿でエールと鳥の串焼きを頼んで座る。禁断の森は飛んでいる時間が長いので疲れ易い。
午前中のエルフのお姉さんが、お絞りとエールを持って来てくれた。
顔と手を拭いて瘴気らしき物を拭い、エールで喉のイガイガを流す。
今日のアデルさんとマネさんはローブスタイルでベルトすらしていない。
「あれ、何かの入口ですかね?」
「オークの出入り口か、噂のダンジョンの可能性は有るな」
「儂もどちらかと思うぞ」
「じゃ、早く霧を浄化するのにあの周囲を、もっと再生しないと駄目ですね」
「仕方無いから午前中は、それに専念しょう」
マネさんが諦めたように言う。頑張って周囲200メートルくらい再生すれば、明日か明後日には降りれるようになるだろう。
「館の3階の片付けは進んでます?」
「進んでいるようだ。もう使える状態らしいぞ。棄てた物が多いらしい、奥様が色々持ち込んでたようだ」
「そう言えば洗濯物を置きに行った時、久し振りに館が爽やかな感じがしたな」
お母さんは何を持ち込んでいたんだ?
「お母さんの具合は?」
「変わらん。混乱は無くなったのだが……聞かん方が良いぞ」
マネさんの忠告に従い聞かない事にした。
森に戻ってみると、短時間で広場の霧が少し晴れたような気がする。樹の浄化作用は凄い。
1時間以上再生をして、昼前に本日は終了となった。
「明日またやろう。私は宿で少し休む」
アデルさんが宿に行ったので、マネさんと温泉の池に行って体の浄化をしてから浮いて疲れを取った。
土手に行くとマネさんが座っている。
「ミノル、奥様の話しで落ち込んだか?」
「アデルさんもそうみたいですよ」
「気にしても何も変わらん」
「そうですね」
マネさんは勉強会をしてくれた。力が戻って来る。気が付いたら3時を過ぎていた。
「起きたか。元気が戻ったようだな。テリッチが来たら、また勉強会をして貰え。回復はその日の内が良いぞ」
マネさんとテリッチさんには世話になりっぱなしだ。
温泉で口を濯いで身体を浄化して土手に戻るとテリッチさんが来ていた。アデルさんの様子を見てから来たようだ。
「アデルさんは寝ていましたよ。ミノルさんも少し暗いですね」
テリッチさんが勉強会を開き始めた。隣りのマネさんは気にもしない。心のモヤモヤが消えてゆく。
気が付いたら7時を過ぎていた。
「ミノル、気が付いたか。テリッチのは効くな。普通に戻ったようだ」
マネさんが頭を撫でてくれた。
錬金術の本を開き読んでいるとアデルさんから連絡で、晩御飯がまだなら皆で食べようという誘いだった。8時に約束し、皆でダラダラと用意をする。
「透明リングの新型が出来たので、食事の時に配りますね」
流石にテリッチさん、仕事が早い。
「アデルさん元気になった?」
「大丈夫だ。心配を掛けたな」
お姉さんがエールを持って来た。
「今日はトンカツです」
「出来るの?」
「コックが自信を持ってます」
トンカツまで、此処で食べられるとは考えていなかった。
テリッチさんがポケットからリングを出してテーブルに乗せ皆に配った。
「新型透明リングです。腕にはめると固定して透明になります。外す時はリングを持って『解除』と頭で考えて下さい」
はめてみるとサイズが調整され、リングが透明になって見えなくなった。解除してみるとリングが見える。不思議なリングだ。
「リングを付けた状態で『透明化』と念じると透明になり『透明化解除』で見えるようになります」
皆、透明になったり元に戻ったりしている。これは便利だ。
「新型透明リングは影を出しません。リングを付けている者同士の念話チャンネルが使えます。気配が半分くらいまで減ります。事故防止で警戒で仲間の位置が確認出来ます、当然敵の警戒には見えません」
凄く便利になっている。
「セリちゃんとミアさん、御屋形様とノア様フェン様のも有りますけど」
「儂は明日の朝、館に行くが」
「じゃ配っておいて下さい。叔父さんには常に装着して、何か起きたら透明になって逃げるように伝えて下さい」
「了解した」
トンカツが来た。ドミグラスソースのような物が、かかっている。食べるとドミグラスソースだった。美味い。パトリックさんの日本の味追求が凄まじい。
皆で日本の味を堪能してエールを飲んでいると話しが弾む。
「あれがダンジョンだったら、まず調査をするのですか?」
テリッチさんが切り出した。
「どうするんでしょうね? 叔父さんや兄さん達が決めれば良いんじゃないですかね。僕には関係無いですから」
「冒険者ギルドに任せておけば、勝手に終わらすだろう。騎士団が探索するような事でも無いだろう」
「儂もそう思うぞ。冒険者の利益を考えると、お上が調査とか攻略という話しにはならんだろう。お宝目当てに全国から冒険者が集まるだろうからな」
「困ったな……今ホフマブルグは宿屋不足なんですよ。もしダンジョンだったら入場料でも取って、人が集まら無いようにしょうかな」
「誰もワクワク感を感じ無いですね」
テリッチさんが笑って言った。
「私はダンジョンには興味が無いな。あの地下にひたすら潜って行くという行為が、暗くて嫌だ」
「儂も暗くてジメジメしているような場所に、自分から行こうとは思わん」
「私は盗賊のアジトに入って行くような、嫌な印象が強いですね」
「僕はダンジョンと聞くと露天掘りで終わらせたくなります。迷路とかイライラしません?」
結局我々は全員ダンジョンに興味が無かった。




