第5章24話 お母さん守護人返上
朝、宿の部屋に行くとアデルさんはまだ寝ていた。
「アデルさん、館に行きますよ。起きないと水風呂に叩き込みますからね」
「ミノルか、スマン直ぐに用意するからな」
あんなに早起きで元気の良かったアデルさんが、数ヶ月でこんなになってしまっている。余程弱っているのだろう。
アデルさんの用意が済んだので館の執務室にワープすると、叔父さん、お母さん、ノア兄さん、フェン兄さんが待っていた。
「ミノル、良く来てくれた。オークとトロルの大軍相手に歴史的大勝利をしてくれ感謝しておるぞ。儂への最高のプレゼントだ」
「騎士団、警備隊の皆さんが後ろを守ってくれたので、我々魔術師が頑張れただけです。叔父さんや兄さん達、お母さんまで戦いに参加してくれて感謝してます」
皆さんの顔が急に暗くなった。
「ミノル、お母さんは戦いに参加してなかったんだよ。お前が考えていることまで念話に流してしまっていたので、お母さんのカバーしたつもりでアデルさんのカバーしたのまで全員に伝わってたんだ」
フェン兄さんの話に愕然とした。
「私は少し遅れて戦闘に参加したので、ミノルの指示が分かって無くて戸惑っていた時にカバーしてくれたのだ」
アデルさんの話では正門前には、お母さんもアデルさんも居なかった事になる。幻想を見ていたようだ。
「儂等は王都で、どうしても進めなければならない話が有って帰れなかったのだ。だが3戦目には間に合い参加したのだが、レナだけは何故か館から出なかったのだ。メダル持ちなのにな」
叔父さんの説明に、お母さんは無表情で正面を向いている。
「負ければホフマブルグが滅びる戦いに参加せず、民を守らぬメダル持ちは資格が無いと儂は信じる。レナは自ら精霊の守護人メダルを返却すると決めたようだ。受け取るか受け取らぬかは精霊様が決める事だ。ミノルとアデルでレナに付いて行ってくれぬか?」
お母さんが良く決断したものだ。
「了解しました」
警備の為にセリちゃんとミアさんが部屋に入って来た。
「ミアさんは精霊様を信じます?」
俺の質問にミアさんが驚いたようだ。
「私はホフマブルグ生まれで、ここの習慣で育ちました。ですから精霊様を信じます」
「僕と一緒に来て下さい」
我々は忘れられた森の聖樹にワープした。
柏手を打ちお詣りしてから俺は話し掛けた。
「精霊様、お話が有ります」
聖樹の精霊様が現れた。最近、聖樹の精霊様は山の精霊様のように実体で現れる。力が付いて来たのだろう。
「ミノル、良く来ました。レナは久し振りですね」
精霊様に皮肉を言われている。精霊様詣りもサボっていたようだ。全員が、お母さんを見て言葉を待っている。暫く沈黙が続き、お母さんがやっと口を開いた。
「精霊様、私は精霊の守護人とメダルを返上に参りました」
精霊様は黙って、お母さんを見ている。また沈黙が続き、お母さんが意を決してメダルを自ら外し精霊様に差し出した。
精霊様はメダルを受け取り、即座にメダルを消滅してしまった。
「レナは短い期間でしたがご苦労でした。聖域には、これからも入れるようにしておきましょう。暇な時には、また歌声を聞かせに来て下さい」
お母さんは黙っていた。
「ミノル、そこに居る若い方が私の守護人候補ですか?」
精霊様はミアさんを見て微笑んだ。ミアさんが愕然としている。
「はい、魔人なのですが精霊様の下部です」
「魔人ですか。珍しいですね。名は何と申します?」
「ミアと申します」
ミアさんは直立不動の警備隊方式で答えた。
「ミア、貴方は全ての精霊に忠誠を誓い私に力を貸してくれますか?」
「はい! この身に替えましても」
「では貴方を今から精霊の守護人としましょう。これが守護人としての証しです」
銀色のメダルがマネさんの首に掛かった。
「貴方も精霊の守護主を助け、仲間と協力し困難に立ち向かう役目も得ます。よろしいですね」
「はい、全身全霊で!」
「足りない力を増やし、精霊魔法を与えておきました。期待してますよ」
精霊様が消えた。ミアさんが緊張したままだ。お母さんは黙ってワープで消えてしまった。
ミアさんのプレートを見ると全ての魔法が120で精霊魔法が付いていた。
「ミアさん、良かったね」
「司令、何とお礼を言ったら良いのか」
「気にしないで。他の精霊様に会いに行ってしまいましょう」
我々は全ての精霊様に会い、ミアさんの追認を貰って館に帰った。
マネさんが来ている。
「遅くなりました。ミアさんが守護人になったもので」
「そうか! ミア良かったな」
「有り難う御座います、御屋形様」
ミアさんは叔父さんに礼を言うと、セリちゃんと控え室に行った。二人の歓声が聞こえて来た。
「レナは?」
「メダルを返上して帰ってしまいました」
「そうか。レナはなアデルを削った主犯なのだ。メダルを貰ってからは自己顕示欲の固まりになってしまった。守護人だが守護者のアデルを目下に置く自分を周囲に見せる為に、アデルを呼んでは会合だのパーティーだのと連れまわしアデルの時間を奪って行ったのだ。
アデルも断れば良いのに、本来ミノルに使い副司令に使う時間をレナに取られ、精神的に疲れてしまったのであろう。
朝に起きることも出来なくなり、ミノルの暗殺騒ぎや先日のオーク戦不参加に繋がって行く。ほんの数ヶ月でアデルはボロボロになってしまった」
アデルさんが涙を流して叔父さんの話を聞いている。
「アデル、当分レナとの接触を禁じる。兎に角休め。ミノルの心臓が止まりかかったように、お前だってあり得るのだ」
「マネ、アデルが復帰するまで副司令補佐を命じる。ミノルへの連絡を全て受けるように」
「承知しました」
「ではミノルもアデルも帰って休め」
我々は宿に帰った。アデルさんが疲れ切っているので服を脱がせベッドに寝かせる。
「アデルさん寝なよ。用事があったら呼んでね、すぐ来るから」
「ミノル、済まんな私が馬鹿なばかりに……済まん」
暫く手を握っていると寝てしまった。




