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第5章22話 療養終了と錬金術大全


「アデルさーん会いたかった!」


「ミノル、私もだ。治ったのだな。心配で心配で」


 結局、治るのに3週間掛かってしまった。毎日御飯の時以外、池の湯にプカプカ浮いて眠っているだけだった。


「また一緒に色々出来るよね」


「おう、何でもするぞ」


 どうもアデルさんも3週間、部屋に籠もっていたようだ。叔父さんに怒られて山の精霊様に説教されて大変だったようだ。


「タイミングが悪かっただけで、アデルさんが悪かった訳じゃ無いのに」


「ミノル、私が悪いのだ。義務を果たせなかった。そのお人好し過ぎるのは止めろ」


 すっかり落ち込んでいる。


「精霊様達に挨拶に行きます。一緒に行きません?」


「行くぞ。一緒に行こう」


 山の精霊様から行くことにした。柏手を打って報告していると精霊様が出て来た。


「ミノル、やっと現れたか。心配したぞ」


「義務を果たせ無くて申し訳有りません」


「そう言うな。どれ、まだ完全では無いな。足らぬ分は足してやろう。だが、このままだと前に話したようにまた起きるぞ」


「はい、僕が馬鹿でアデルさんに頼ってばかりいた結果、アデルさんを削り自分を削り周囲の人達に迷惑を掛けてしまいました。もっと自分の事は自分でするように頑張ります」


「そこが間違っているのだ。お前は責任が大きい。何万人もの民の生死を人間でありながら背負うのだ。その疲れを自分で癒やす事は出来んし、アデルだけに甘えればアデルが潰れる」


 精霊様を含め全員に沈黙が流れる。


「アデルも何故ミノルに自分の限界を話さない。だから精霊全員に説教されるのだ。お前は限界を超えて逃げたのだ。本当に真剣に考えておるのか? お前の逃げでミノルは壊れかかったのだ。自分を守りたいなら逃げるな。ミノルは若過ぎる。アデルが考えてやらねば誰が考える?」


「仰せの通りです」


 アデルさんがしょんぼりしている。


「まあ良い。良く帰って来た。これからも頼んだぞ」


 山の精霊様は、言いたいことを言って消えた。

 その後の精霊様巡りは全精霊様に似たような説教をされて終わった。アデルさんは泣きそうな顔をしている。


「叔父さんとお母さんに挨拶しないと駄目だよね」


「当たり前だ。これから行くのが筋だ」


 館に行くと、なんと全員王都に行って誰も居なかった。どうも俺が回復するのを待っていたらしい。確かに叔父さんの代理人が居ないと街を開けられないな。

「ミノル、どうする?」


 騎士団で挨拶して、厩舎でミミーちゃんに会い、警備隊に挨拶を終えた。


「ちょっと休んだだけで、挨拶回りが大変なものですね」


「本当だな。ミノルは疲れないか? 無理をするな」


「冒険者ギルドは今度にして、トメラさんに挨拶しないと」


 トメラさんは店に居た。


「ミノルさん、アデルさんいらっしゃい。お身体は?」


「もう大丈夫です。心配掛けました」


「オーク戦の後、御屋形様から沢山報奨金いただいてしまいました」


 トメラさんは嬉しそうな顔で良い香りをポッポとさせている。


「で、それをまた失敗仕入れに使ったんですか?」


「失敗仕入れじゃありません!」


「本当に、またヤったんだ」


「仕入れた時は自信が有ったんです!」


「今は?」


「……」


 トメラさんが奥から大きな黒い装飾革装の本を持って来た。


「正真正銘の錬金術大全です! ロクデニア大陸語で書かれた元本です! 後から錬金術師に書かれたインチキな解説本と訳が違う。嘗て王宮や有力貴族が取り合ったと言われる逸品!」


「本物?」


「それは確実です! ある有名コレクターが所蔵していたのですが、お金に困り子供も居ないのでシブシブ売りに出したんです」


「ならボロ儲けですね」


「……それが……王宮は不景気で、複製本は持っているらしいのですが、王宮の錬金術師は中途半端で読んでも理解出来ないらしくて」


「それで?」


「有力貴族もお金が無くて複製本を売れと言うし……複製本でも1億デルなんですが……そんな商売してたら、私ミイラになります」


「複製本から複製本作られたら終わりだよね」


「それは出来無いらしくて、インチキ解説本が氾濫したらしいのです。この元本が有れば、まともな錬金術師なら簡単に複製本作ってしまうので見せることも出来無いし」


「いくら?」


「7億デル……ダメ? 相場から言うとタダみたいな値段だそうです」」


「いいですよ。僕が買います」


「ヤッター! ミノルさん大好き! アデルさんゴメン」


 トメラさんが良い臭いをポッポさせて、俺に抱きついた。


「まだ隠し持っているでしょう」


「委託品なんです」


 店の奥から大きな箱を持って来た。


「同じコレクターが売っているんですが、錬金術の希少素材と薬品のセットらしいですよ。めったに売りに出ない物ばかりで、やはりタダみたいな値段だそうです」


「いくら?」


「3億デルです」


「テリッチさん欲しいかな? 聞いてみるね」


 トメラさんが慌てて本を隠した。

 テリッチさんがすぐにワープして来た。


「テリッチさん、これ要る?」


 テリッチさんが驚いた顔をして箱の中を見ている。


「欲しいですけど、高価過ぎる物ばかりで私では死んでも買えません」


 凄く悔しそうにしている。


「じゃ買います」


「ヤッター!」


 テリッチさんが驚いた顔をして固まって、トメラさんがポッポポッポになっている。


「銀行に行って来ます」


 銀行で支払いを済ませ本を貰い、箕輪支店長と少し話して店に帰った。


「ミノルさん、これの価値を知っているのですか? もの凄い値段なんですよ」


「価値は知りませんが、テリッチさんが喜ぶことは分かりました。それより、これ複製本作って下さい」


 俺が錬金術大全を出すと愕然として見ている。


「本当に有ったんですね。すぐに作ります」


 テリッチさんが本の上に両手を出すと手の上に茶色の革装本が出て来た。


「はいミノルさん、どうぞ」


「それテリッチさんの本ですよ」


「良いのですか? こんな高価な物。読みたかったんです」


「トメラさん、複製本作ると価値が下がるの?」


「それは絶対無いです」


「じゃ、後3冊。僕も読んで見たいし兄貴達に1冊ずつ」


「ノア様とフェン様ですね。独学錬金術師として有名ですものね。喜びますよ」


 テリッチさんは3冊を簡単に作ってくれた。俺は元本を貴重品用ポケットに複製本を胸ポケットに閉まった。


 テリッチさんは大箱と複製本を大事に持ってワープした。

 俺は宿にワープしてアデルさんにヨシヨシして貰うと心に決めていた。


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