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第5章16話 限界


 目が覚めると俺を抱えてくれている手が変わっている。マネさんとすぐ分かつた。肌に伝わる安心感の感じが違う。何か違う種類の心地良さと安心感だ。


「ミノル、目が覚めたのか? 暫く儂で我慢しろ。テリッチが身の周りの品と弁当を取りに行っている」


「我慢なんて……嬉しいです」


「そうか? そんな事を言うのはミノルだけだ」


「こんな弱虫じゃ嫌われてしまいますね」


「下らん事を考えるな。眠れ、まだ5時だ」


「もう眠く無いですよ」


「そうか? なら、そのまま大人しくしておれ」


「はい、マネさん」


 マネさんが肩にお湯をかけてくれている。肌の柔らかさと暖かさが心地良く意識が無くなって行った。


 気持ち良いなと寝ていると息が浅くなって、心臓の音が小さくゆっくりになってゆく、本当に心地良い。 腸の中がカラッポになって、体液も無くなり清潔になっていく。誰か女の人が俺の名を呼ぶような感じがする。


 目の前が明るくなって、俺が裸で女の人に抱かれて胸を吸っている。俺は子供みたいだ。母は胸の形が崩れると言って母乳はくれなかったと聞く。誰だろう?

 夢の中だ勝手に作り上げた人なんだろう。だが、凄く懐かしい気がする。

 怖い夢よりいいや。心地良い夢なんて滅多に見ない。


 目が覚めるとテリッチさんが、俺を横に抱えて乳を与えてくれている。夢はこれかと思った。


「覚めました? 口を離さないでもう少し吸っていて下さい」


 言われたように吸っていると、また意識が遠くなってゆく。女の子と手を繋いで歩いている。俺と同じ服だ、幼稚園かな。女の子を見ると幸代姉ちゃんだ。でも幸代姉ちゃんは7歳くらい年上だったよな。幸代姉ちゃんが俺と同じサイズだ。

 手に汗をかきながら手を繋いでいる。次に何が起きるのか楽しみにしていると、目が覚めてしまった。


 まだテリッチさんの胸を吸っている。


「テリッチさんの胸から美味しい物が出るのは何ですか?」


「これですか、昔ゴブリンの村で4年くらい過ごした時に出るようになったんですよ。これを飲むと平安と幸福感が感じるようになるんです」


「だから気持ち良いんだ」


「害は無いので安心して下さい」


「でもゴブリン村で4年ですか?」


「はい、さらわれました。20歳くらいの時でしたね。だから汚いとか臭いとか言われるんですよ」


「テリッチさんは臭く無いです。良い匂いです。僕はテリッチさんが大好きです」


「270年程生きていて、初めて人に大好きなんて言って貰いました。この恩は忘れません」


「ゴブリン村は楽しかったですか?」


 自分で支離滅裂なのが分かる。


「有る意味楽しかったのかも知れないですね、何も考えず一つの事しか頭に無かったですから」


「それは幸せですね」


「さあ、また吸って」


 暫く、ただ幸福で心地良い明るい何も無い場所に居てボーッとしている夢を見た。身体が浮いている。異世界は良いなと思っていると目が覚めた。


「少しは楽になったか?」


「マネさん、もし嫌でなかったらキスして貰えませんか」


「嫌な訳が無いだろう」


 マネさんがキスしてくれた。


「マネさん大好きです」


「儂は愛しておるぞ」


「嬉しいな」


 マネさんの顔を触ってみると心地良い。


「テリッチ、ミノルが手を動かしたぞ」


「あら、回復が早いですね。一度起こしましょう」


 岸部に座らせて貰った。


「何時です?」


「夜中の1時くらいです。少し食べましょう」


「お腹空いて無いです」


「私の体液で満足感が有るだけです。食べないと体力が無くなります」


 お粥を出してくれた。食べながら話しをする。


「僕とテリッチさんでゴブリン村の話をしました?」


「はい、しました。夢じゃ無いですよ」


「そうなんだ。だからテリッチさんは素敵なのかも知れないですね」


「何故です?」


「分からないです。でも大好きです」


「嬉しい! 大好きと言われるのって、こんなに嬉しいのですね」


 粥を全部食べ終わった。


「池のお湯で3回くらいクチュクチュして下さい」


 不思議な湯が食べカスでも5秒もしないうちに消滅してしまう。


「口を開けて歯を剥いて」


 テリッチさんが歯ブラシで歯を磨いてくれた。


「何で僕はこんなに弱っちゃったんです?」


 マネさんが話し始めた。


「常に手入れしていれば起きなかった、ところがアデルがミノルを2ヶ月近く放って置いたのだ。ミノルが暗殺されかかった時、儂がアデルを殴り倒したのを覚えているか?」


「はい」


「あの時、このままではミノルが危ないと言ったにも関わらず放置し続けて、このザマなのだ。

 精霊魔法に愛を与える力が有る。ミノルがよく祝福しているであろう。普通は民や仲間や精霊様に力を使うのだが、あの馬鹿は自分に使ったのだ。全てを与えてくれた人を放置してな。

 毎日パーティーだ何だと仕事みたいな顔をして、自分が特別みたいな錯覚に陥ってな。愛を貰えないミノルは毎日ただ削られたのだ」


「明日が終われば戻りませんか?」


「もう今日だ。余程自覚しないと同じだ。奥様や取り巻きに振り回されて繰り返すと思うぞ」


「そうかも知れないですね」


「もう、止めて」


 テリッチさんが、また俺を横に抱えてキスしてくれた。余分な事が頭から無くなり快感のような物が身体を包む。


「さあ、また吸って」


 出された胸を吸うと意識が無くなった。


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