第5章15話 トロルまで出た
アデルさんは昨夜9時過ぎに少し酔って帰って来て、朝は一人でに風呂に入って5時には飛んで行ってしまった。
明日がリヒトブルグの街開きなのでパーティーとか連日有るらしい。身体を壊さなければ良いのだが。
起きてしまったので歯を磨いているとナンカ気分が落ち込んで寂しくなって来た。
口をゆすいでいるとマネさんがワープで部屋に現れベッドに座った。
「まだアデルが館のお祭りで必死みたいだな。儂にも奥様の朝食会に出ろと言って来た。断ったがな」
「隣に座って良いですか? ナンカ気分が乗らなくなりました。すぐ治りますので」
「落ち込むな早く来い」
マネさんの隣に座っていると肌の感触と体温で気分が戻って来た。
「まだ朝も早い、儂が勉強会をしてやろう」
9時頃に遠く薄れた意識が戻って来た。マネさんとお風呂に入った。
「スミマセン、お世話にばかりなってしまって……」
「勉強会は久しかったのか?」
「もう1週間以上……」
「そうか、お前も言っておったろう。王都の大学に行けるくらい勉強は得意だ。1日に二度でも三度でも引き受けるぞ。
テリッチにも習え、儂には無い知識を沢山持っておる。錬金術師だからな」
マネさんの分かつたような不思議な論理だが、この心のギスギス感が消えるのは確かなので頷くしか無かった。
二人で朝食を食べてから、お詣りを済まして魔獸の森を偵察した。昨日と同じくらいいるようだ。
「発生元は禁断の森ですかね」
「可能性は高いな」
ギルドに行くとテリッチさんがいた。
「手伝いますよ。昨夜話してたので、此処かなと」
三人で話しているとセリちゃんも現れた。
「間に合ったみたいです。司令、今日も行きます!」
「館は?」
「バカバカしくって付き合ってられません! 奥様には御屋形様も怒って先程まで大騒ぎだったんです。
あの4人は特別で儂でも余程の事が無い限り呼ばんのに、お前はアデルを私物とでも思っているのか! と怒鳴っちゃったんです」
「で、お母さんは?」
「何処吹く風でプンと部屋から居なくなっちゃいました」
「お母さんらしい」
マネさんが大笑いしている。
「セリちゃん、今日も沢山居るよ」
「司令、本当ですか! 嬉しいです」
俺と真逆に行っている。
「坊ちゃん、お早うございます。本日もですか?」
「今、見て来たら昨日より多いぞ」
マネさんが応えた。
「昨日と同じ条件で行きます。人は居ます?」
「仕事にならないのでゴロゴロしてます。すぐ集めますね!」
「昨日は何体でした?」
「287体でした」
思った以上の数だった。森の前で待っていると40人近くの人達がゾロゾロやって来た。例によって馬車も3台到着。
「ゆっくり飛んで攻撃しますね。回収の人達がいるので帰りは難しいので漏れたのも止まって片付けます」
「「「はーい」」」
「セリちゃん先頭やる? 沢山倒せるよ」
「絶対やります!」
「僕は最後尾です」
マネさんとテリッチさんが心配そうに俺を見ている。
我々は少し間を開けて縦の陣形で飛び始めた。
セリちゃんが派手に雷神を撃ち始めた。あの娘魔力が持つのかな? マネさんとテリッチさんが凄い勢いで雷神を撃ち続ける。俺はする事が無い。
俺の為に三人で終わらせるつもりなのか?
念話を通してセリちゃんの『オリャア』みたいな気合いの声が聞こえる。
警戒で見える赤い点が爆音と稲妻の中、どんどん無くなっていく。
目の端に赤い点が大量に現れた。俺の後ろだ! 慌てて引き返す。禁断の森から回収作業中の人達の目の前に大量のオークとやたらデカいのが1体いる。
ギリギリ射程圏に入ったので雷神を乱射する。ギルドの人達は魔獸の森に後退しているので、気にしないで、どんどん雷神を撃ち続けた。
大きめな奴が倒れない。近くまで寄って分かった。
トロルだ!
雷神を範囲で撃つのとトロルだけのと交互に撃ち、弓を出して矢も放つ。
氷の槍を降らすと1本当たりトロルの動きが止まった。矢が目を潰しているので、メチャメチャな動きだ。
「グギャー!」
氷の槍を撃ち続けると3本当たった所でトロルが倒れた。なんて丈夫なんだ。
「坊ちゃん助かりました」
ジグロさんが森から出てくると、回収作業が再開した。街道には俺が倒したオーク40体くらいと、矢と氷の槍が刺さっているトロルが倒れている。
ナンカ気分が悪い。
「僕が見張ってますから回収作業を急いで」
テリッチさんが降りて来た。
「ミノルさん、これ飲んで」
渡されたポーションを飲むと、少し気分が落ち着いて来た。何でこんなに弱くなってしまったのだろう。
「司令、全部終わりました!」
セリちゃんが上機嫌だ。
「セリちゃん、スッキリした?」
「はい! 最高です」
「なら館に帰りなさい。無視すると面倒だから」
セリちゃんは、しぶしぶ帰って行った。
「司令、大丈夫ですか?」
コロン隊長だった。
「大丈夫ですよ、全く問題有りません。コロン隊長さんは、よく馬鹿騒ぎから出てくることが出来ましたね」
「我々は、あんな物に関わっている暇は有りません。何時でもお呼び下さい」
「僕は関わりませんので、明日は宜しくお願いします」
「承知しました。司令もお休み下さい」
俺は余程酷い顔してるんだな。
作業が終わったのは2時間後だった。ジグロさんが来て報告してくれた。
「オークが394体、トロルが1体でした」
マネさんとテリッチさんが大至急俺を回収して、温泉の池に連れて行き浮かべてくれた。
「迷惑を掛けて申し訳無いです。服を脱がして貰った辺りから力が入らないみたいです」
「気にするな。心の壁をすり減らし過ぎた。まだ若いから薄いのだ。お前が考えて実行するから責任が大きく、すり減らし易い。我々のように言われて実行するだけの駒とは違う」
「まだ昼の2時です。今日も明日も、ここと妖精の居る池しか行かせませんからね。宿にも返しません、覚悟して下さい」
テリッチさんが宣言した。
「ミノル、それだけ緊急なのだ。理解して言う事を聞いてくれ」
テリッチさんが岸部で俺を抱えて湯に漬けてくれている。肌と湯の心地良さで寝てしまった。




