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チョロイン☆デビュー!  作者:
再び城下町
82/83

第八十一話「ぼこすぞ」




でっかい斧にでっかい背丈。

ちょっとボサボサの黒い髪と、精気ゼロな茶色の瞳。


どの世界における私にも、馴染みのあるその姿は、

どこか狂気と違和感を孕み、壊れたように笑みを浮かべていた。





「……、!」


その壊れっぷりといったら、思わず圧されてしまうくらい――だけど。




「先手必勝だってばっ!!」


夢みたいに錯覚してるうちに、と、

私は両手を握りしめて突っ込んだ。


でも、いざ当てようとした瞬間、

彼の周りに謎のバリアでも張ってあるかのように阻まれ、

逆に勢い良く吹っ飛ばされる。



「い、ッ――」



そのまま迫ってきた黒い手みたいな何かが、首元までぱっと迫ってきたとき、


「馬鹿っ! 突っ込むだけじゃ勝てないわよ――」


飛んできた細い銀色の剣が、その手をすべて綺麗に両断する。



「わかってるつもりだよ! でもどうすりゃ――っ」


「二人とも!! それっ、たぶん呪いみたいな物で……っ」


「呪い――」


ふと飛んできたクリスの声に、

飛んでくる幾つもの手が斬られて行くのを横目に見ながら考える。




「昔おねーちゃんが言ってた……攻撃する瞬間には、それ――――――」


「――――え、」



風の音が、

それに揺られていた草の音が、

話し声も、少しだけ荒れた呼吸も、


――消えた。




やな予感。

予感、っていうより理解のほうが近いかもしれない。




「そ、っか――」



すっかり失念してたけど、コイツの能力。

時間停止――だった、はず――。





「――!」


「え、あ、ちょい待っ――」


一気に飛んできた手が、まるで黒く染まった壁みたいに見える。


それと同時に、何故かいきなり堰を切ったみたいに『現実味』が溢れだしてきて、

パニックに陥りそうになりながら、ひとまずライズを守ろうと、

動かない彼女の前に立って、両手をぐっとそれに向けて伸ばした。



(――あれ、)



――いま私、何しようと……?



無意識の行動に、違和感を覚えるのが少し先だった。


幾重にも腕から飛び出た魔方陣が、白い光の壁になって、

黒色を一瞬で掻き消し、眩く輝きながら、




「――へ、?」



――消えた。


戸惑っている暇もなく、忙し~く迫ってくる幾重にもなった黒色。

が、それすらすべて謎の光が消してしまって、






『攻撃する瞬間には、それ――』





慌ててその言葉を思い出し、

光の間をかいくぐりながら、懐までぐっと潜り込んだ。


虚ろな目で光に向かい、その黒い手のような何かを飛ばし続けるジェイドの顔が、

ちょっとだけ記憶と重なって、殴りづらかったのも事実だけど、

正直、正面から堂々と殴り飛ばせる機会を待ち望んでいたのもまた事実。


それに、ここで手を止めれば、

たぶん私は――。






「はあぁあぁぁぁ――ッ!!」




彼が私に気付いたのは、ちょうど直撃の一秒ほど前。

鈍い音をたてて、拳が顔にめり込んで、

その身体が吹っ飛んでいくと同時に、また世界が動き出した音がした。




「……っしゃ、やりぃ!」


この調子でいけば、たぶん――。



「――え、アリア……さっき止まってた、よね……?」


「止まって――、……そっか」


一応二人にもさっき私が残した功績は、なんとなく伝わってた様子で、



「だったら体勢崩れてるうちにっ!」


「っし、ボコすぞライズ!」


「ええ!」



これは勝ち確かな、って思った瞬間に、

異常な頭痛に襲われて、意識が揺らぐのをどこかで感じた。

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