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チョロイン☆デビュー!  作者:
再び城下町
83/83

第八十二話「 」



「――ッ、ぅ……」


それでもどうにか体勢を保って突っ込んでみたはいいけど、

流石に向こうもそこまで馬鹿じゃなかったみたいで、



(やば――)




腹部に感じた鈍い衝撃に、

顔を歪めて地面に叩きつけられる。


「――が、ぐ……ッ!?」


ほんとにヤバい。


「……っ、あ、ぅ――」



ナメて掛かりすぎたかな、って後悔すら出来ないくらい素早く、

何かに呑み込まれて行くのを感じた。


確かに聞こえている仲間の声も、言葉に組み立てられる前に、

なんの引っ掛かりもないまま脳を通り過ぎて、

ただ腹の中を食いちぎられたような、強烈な不快感だけが、

頭の中をぐるぐると回り続ける。



――こんな感じで、あいつも。

どうにも理解できなかったものを、無理矢理頭に叩き込まれたような感じ。




「ァ、あ、ぁあ、ァ、ぁ、あア、ァア、ア――ッ」





――あれ。


なんのために、わたし……?
















『…………』


「――、あ……れ」



長く眠りすぎた後のような気怠さと一緒に、

私はふと目を覚ました。



青白い光。

あのファンタジックな世界においても、なかなか見られないような、

厳かで神秘的な雰囲気に包まれて、


ただ水の流れる音だけが、冷たい空気の中に響く。



「……わた、し――」



一瞬死んだのか、なんて思って、それから目の前の何かに気付いて、

声も出ないくらい驚いたせいで、石製の細かい模様のついた床にへたり込む。



『――初めまして、』


「え、え――」


『……高菜田和葉さん。 私はアリア・ローズブレイド。

 知っての通り、キミの身体の元の持ち主だ』



そう言って微笑む彼女は、

私の知っている私の姿より、ずっと凛々しく可憐で華奢で、

どこかに抱えた信念が、その姿をもっと強く飾っていて、


「は、はじめ、まして――」


思わず圧されてしまうような気品、だった。



青色の長い髪。

見事に曲がったアホ毛に、私の知っているものより少し青みがかった緑色の瞳。


ピンと伸びた背筋と、少しだけ内側に向けられた長い脚。


姫騎士と呼ぶに相応しい整った顔には、

同性だろうがなんだろうが見惚れるのも仕方ないだろう。



『そう緊張しないでくれ、私がやり辛くなる』


「は、はい――」


『……遅くなって済まないね。 本当はもっと早くに話したかったんだけど』


丁度私もあんな感じになっていてね、と、

指さしたのは今のジェイドの姿。



『身体は早々に解放されてはいたのだけど――魂のほうがすっかり悪霊みたいになってて』


「悪霊……」


『さっきの頭痛もそれが原因、だと思う。

 同じ身体に魂がふたつ、なんてこと普通なら有り得ないから』


「そ、そうっすよね……」


魔力がダメだったのもその副作用じゃないかな、とアリア様。

……ちょっとややこしいな。



『キミが力を使えば使うほど、この身体に力も戻って行って。

 それと同時に私の呪縛も薄らいでいったから、それで色々バグが起こってたのかもね』


「呪縛、って――」


『私もね、もともとはキミやあの子と同じ』


「……兄貴のことですか?」


『そう。 ……あっちの世界で命を落として、

 そのままこちらの世界に連れてこられた人間』


「……」



『生まれた国を守るため、って、

 私なりに仲間と協力とかしてみたんだけど――駄目だった』


「仲間、ってあの――」


『……知ってるのか?

 今は代理で女神なんてやってるな。 ……私たちの時に神が滅びたから』


「神が――」


『ずっと会ってないけど……今頃泣いてないかな。

 ――あ、話が反れたか。 率直に言うといまキミは死んでいる』


「へ――」


死んでいる……?


『』



「正気に、正気に戻れよクソ兄貴!!

 ――そんな顔似合わないんだよ、……!」


「――……ッ」


「クソ……! ねえッ、

 答えてよ!お兄ちゃん……!!」

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