第七十九話「前夜」
なんと8年ぶりの投稿
お久しぶりです 久々にログインしてみたら下書きが残っていたのでそのまま出してみました。
8年間熟成された恐怖の文章です
――その夜。
今すぐ行ってやる、ってクリスちゃんも私も言ってたんだけど、
ひとまず落ち着いてからじゃないと無理だ、ってライズに窘められて。
「……なぁ、起きてるなら聞きたいんだけど」
「――何?」
でも、どうしても眠れなくって、
私は目を閉じたまま、小さな声でライズに話しかけた。
「――――私のこと、どう思ってた?」
「どう、って――何が」
「そのまんま。 明日行くんだろ? 兄――」
自然に兄貴、って呼んでたけど、
なんとなく照れ臭くなって、
「――ジェイドのとこ」
もう一度、すっかり慣れたこっちの呼称で言い直す。
「……だから、何となく。 明日が最後になるかもだし」
「そう――」
「で、どんな?」
「……好き、だった。 それだけ」
「え」
あれ、まじでデレた……?
「……でも、どっちにしろ最後なんでしょ? ジェイドに会うのは」
――あ。
そう言われてみたらそうだ。
あの腐れ女神ちゃんに聞いてみたんだけど、
別にアイツの悪霊的なものを祓うことに成功しても、ジェイドとしてここで暮らすのはもう無理な話らしい。
地球で生きるか、この世界と向こうに分断されたまま野垂れ死にするか――。
「――あの人が居なくなるなんて、考えもしなかった。 今度はずっと一緒だと思ってたのにな」
「……」
「……ね、アリア。 休もうなんて言っておいてなんだけど――私、まだ眠れないの」
うっすらと目を開いてみると、身体を起こした彼女の姿が見えた。
「たまにはちゃんと話しましょう? ……私たちのこと」
そう言って微笑んだその表情に、思わず胸がいっぱいになって、
目を背けたくなるような、なんともいえない切なさに襲われた。
――でも同時に、
きっと今、私はすっごく幸せなんだろうな……とも感じた。
正直なところ、初めてだった。
こんなに人と仲良くなって、遠慮なんてせずに話せるくらいになるの。
元々コミュ障っぽいところもあったし、
なんていうか――一回ぜんぶ忘れたら、良い感じに吹っ切れたっていうか――。
「……昔ね、私……一緒だったの。 みんなと」
「みんな、って?」
「母さんとか父さんとか――、友達もね、いっぱい居たんだよ。
……深い森の中でね、細々暮らしてた」
「……」
「でもね、壊れちゃったの。 全部。
で、その頃ちょうど出会ったジェイドに着いてって――気付いたらこんなになってた」
長い髪を指先で弄びながら、ライズはまた話を続けた。
「私、これでもエルフの血とか入ってるのよ……正直、人間のことあんまり信用できなくって」
「そ、っか――」
「……だからね、あなたに初めて会ったとき――なんとなくびっくりした。
この世界の人、みんな自信に満ち溢れてるように見えたから」
「私が自信なさげな顔してるって言いたいのか……?」
「まぁそういうことよ、今はぜんぜん違ってるけど」
わざとらしく不満げな顔をしてみせると、彼女はちょっと困ったように笑みを見せる。
「……まー、私ぼっちだったし」
「へー……」
「部屋にこもりっきりで。やらなきゃいけないことも、行かなきゃいけないこともすっぽかして」
要するに駄目人間だった。
全部めんどくさくって、怖くって、とりあえず兄貴を妬んで寝るだけ――みたいな。
「……ま、今もホントはあんまり変わってないのかもだけど」
「そんなこと無いわよ。 きっと」
「きっと、かぁ――」
「ええ、昔のアリアのこと私は知らないし――。 断言はできないわ」
「わりと辛辣だな」
「でも……立派になったんじゃない?」
――ちゃんと、戦おうとしてるんだから。
(……ちゃんと、かぁ)
まだ私は、
たぶん何にも向かい合えてない。
だからこそ比較的平常心で居られるのかな、って考えたら、
少しだけ虚しいような気持ちになった。




