第七十七話「全部」
――あれ。
『えーっと、ライズちゃんに~……クリスちゃんに~……それから』
あれ、私、
『妹ちゃん、かぁ』
「――、え、あ、」
全身をめぐる血が、何故か今だけ鮮明に捉えられるような感覚に陥って、
私は思わず口を半開きにしたまま、地面に膝から崩れ落ちた。
――ぜんぶ。
「……全部、」
「アリア……?」
「……」
全部、全部、全部、
今までの全部がつながったような、快感にも似た奇妙な驚愕に、
思わず目が少しだけ潤んで、背筋がぞくりと震える。
鳥肌になった腕の皮膚に、少し遅れて震えが伝わった。
――その瞬間、
『もう大丈夫』だって、今までの何よりそう思った。
けれど、それと同時に、どうしようもない不安にも襲われた。
「――わかったかも……私」
『おー、むしろ今まで忘れてたのが驚きなんだけどね』
「え、え、わかるって……な、何……?」
すっかり戸惑った様子のクリスちゃんが、微妙な鼻声のまま、私の顔を覗き込んだ。
――はぁ、いつ見てもかわいい……。
「ふふふふ……もう大丈夫、私らで連れ戻そ?」
自分に言い聞かせるように、一言一言を噛みしめながら、
彼女の頭に手を伸ばす。
なんとなく今にも折れちゃいそうな雰囲気だったから、
ライズのこともついでに二、三回くらい撫でといて――。
「……なんで私まで」
「なんとなく。不安げだったからさ」
「…………ばか」
――あれ、デレた……?
私の腕につかまったまま、少しだけ顔を寄せてくるその姿は、
若干『しなびた』感じ――っていう表現がいちばんよく似合う。
単純に丸くなったのか、それともただただ意気消沈しているだけか――。
多少は前者の要素も含まれてると信じたい、けど。
『え、え、妹ちゃんどこまで思い出した?』
「全部、じゃないぞ――でもそこそこ」
目覚めるまでの数日間。 私がどうやって死んで、どうやってここに来たのか。
あとはこの身体のこととか――あれ、いざ整理してみるとそこまででもないかもしれない。
「……あの、女神様……?」
『どったの?』
「『妹ちゃん』って、仰られてますけど――」
『あー、このー……なんだっけ、ありあ?ってヤツね』
ヤツって。
ヤツって呼ぶのはどうなんだお前。
――あ、女神に向かって『お前』っつってる時点で私も同類か。
『そのまんま、中身は実の妹なのね』
「……え、」
「――」
『――ジェイドくんの』




