第七十四話「通信制限」
――どうしようもなく、時間が足りなかった。
折角使えた時間停止の魔術だって、こんな状態ではマトモに操れたものではない。
止めたままでなければ、アイツがいつ死んでしまうか解らないが、
このままにしていたって、今度は俺がいつ限界を迎えるかが解らない。
自分の中の余裕が消えていくのが、痛いほどよく理解できた。
もう捜索を始めてから何日が経ったのだろうか。
クリスやライズ、アリア達に話せば協力して貰えるかも知れないが――。
◆
……えっと。 現在の状況をお伝えしましょう。
暇だったので数えてた結果、今は停止してから三日と五時間七分十九秒が経ちました。
たぶんジェイド君が何かしてると考えられます。
私まで巻き込まれるから、まあそこはどうにか改善してほしいとこです。 クレーム入れたい。
でもね、ここ。 問題はこれ。
……あのね、さっきからこの時間停止、ちょくちょく解除されたり弱まったりしてるの。
弱まるっていうか……。 何ていうんだろう。
たまにね、スローモーションみたいな遅さではあるんだけど、周りの人たちが動き出すんだよ。 今までガチモンの静寂だったのが、いきなり微量のガヤガヤの中に放り出されるから心臓にも悪い。
ほんと、今まではちょくちょく解除なんて無かったのにね――。
通信制限にでも掛かったんだろうか。
いや、やっぱ魔法なんだしそれは無いか――。
……でもさ、私はそういうのに一切の理解も素養も無いわけだし、私の知らないところでそういう変なアレがあっても可笑しくはないと思うんだよね。
「――リア」
わりとこの世界ってさ、めっちゃバリバリファンタジーしてるのかと思ったら、変なところでロマンぶち壊してくるみたいな性質ありますし。
「――アリア」
だったら通信制限っていう可能性も無くはないんじゃないかなって――、
「アリア!!」
「――っ!!」
一瞬誰の声かすら理解できなかった――けど。
大声を上げたのはライズだった。 三日ぶりに聞く声は、なんとなく安心感と相変わらずのヘタレっぽさを伴って耳の中に小さく響く。
驚いて周りを見渡してみると、さっきの三日間が嘘だったかのように雑音が戻って来ていて、何事もなかったかのように住人たちが歩き回っていた。
……まあ、こいつらにとってはホントに何事もなかったんだろうけど。
でもさ、時間止まってる間ずーっとライズと手繋いでた私の根性も結構見上げたもんだと思わない? 自分で振り返ってみたら結構凄いことだと思うんだけどさ。




