第七十三話「腐れ女神と腐れ妹」
「ヤッホ~☆ 待ってたでしょっ!
久しぶりの女神ちゃん登場だよ~っ!!」
「帰ってもらおうか」
「ぐふっ」
雪より白く輝く髪は、その背を大きく超えるほどの長さになり、
そこだけは崇められても文句の言えないほどの美しさを誇る表情が、何時ものように俺の手に阻まれてぐにゃりと崩れていく。
――魔王が倒れてからはこれと言って大事件も無かったしな。
言うなれば二年ぶりの再会、ということになるわけだ。 この腐れ女神様と俺が――。
「……も~っ、ジェイドったらぁ。 いつもいつも、そりゃもういーっつもアタシの顔面にアイアンクローくらわして来るんだからぁ」
「……で、今日は何の用事だ?」
コイツの悪い癖がまだ矯正されていないのなら、ここから約三時間にも渡って無駄な話がペチャクチャと繰り広げられることになる。
最も、矯正しようとする人物が身近には存在しない筈だし、
こんな性格のコイツが、俺だけの為に其れを改善しようと自発的に努力するなどとは考えられない。
だったら早く本題を切り出してくれるように仕向けたほうが良いに決まっているからな――。
「も~っ、この高菜田が!」
「……今の俺は只のジェイド・アラバスターでしか無いが」
「でもぉ、いもーとちゃん探してるんでしょぉ??」
そう言って腐れ女神は、相も変わらず腐りきった笑みを浮かべた。
――また『情報の代わり』だとか言い張って、変な条件でも付けるつもりだろうか。
女神にも色々とあるようで、そういう時に俺が駆り出される用件は、だいたい『生命体のバランスを矯正する』という事。
今のところは、まだ魔物討伐くらいしか任されていないものの、
コイツのことだ――。 いつ人間を殺せ、などと言い出すか解らない。
「……で、教えて欲し~の? 高菜田くーん」
「何をだ」
「妹ちゃんの情報のことサ☆」
「……そもそも、アイツを探せと頼んだのはお前じゃなかったか?」
「いや、うん、まぁそうなんだけど……」
一気にしおらしくなる女神。
……正直気持ち悪いから、こういうのには常時普段のテンションのままで居て貰いたいものだが。
「えっ、ありのままのアタシが良いって!?」
「言ってない」
早くその情報とやらを教えろ。
ここまで会話してきて、未だ何一つ有益な情報が得られていないのも可笑しな話である。
「じゃあ言うよ?
あのね、キミのいもーとちゃんはぁ……」
「……」
「…………何と! 近々死ぬ運命にありま~す。
大丈夫大丈夫、それまでにジェイドが見つければ良いだけだし~」
「……そうか」
要するに――時間がもう残されていない、と。
……まあ、いざとなれば時間を停止すれば良いだけだが、な。
「じゃっ、ばいならっ☆ あ……それと――」
「――」
「なんかね、ジェイドの身体もそろそろぶっ壊れるってさ」
「……っ」
じゃあね、と言い残して、腐れ女神は宙へと足早に去って行った。




