第七十二話「あったかい我が家が待っている」
――かくして、彼の妹を探す旅は始まった。
あの、あれでしょ?
良く解んないけど、可愛くないとか言っときながら可愛いんでしょ?
私知ってるよ。 ここまで兄貴がテンプレなんだから妹もテンプレブラコンツンデレ少女なんでしょ。
私には日本人だったころの記憶が殆どないんだからさ、そんなに妹の記憶で苦悩できるのも羨ましいけど。
……でも面倒くさいんだろうな。
「此処にであれば拠点もある。 活動するには充分だ」
駅から出て、数分ほど歩けば広場に出る。
そこは色んな人々が、色んなことをしに集まってくる所だった。 やっぱりね、広い場所っていいよね。
……が、そこはアブノーマルに拘りのあるジェイドくん。
広場の入り口を一度潜ったにも関わらず、また三歩か四歩ほど引き返し、
そこで小さく咳払いをすると、奴は偉そうな顔をして話し出した。
「これから先は自由行動となる。 各自、昼飯前には屋敷に戻るように」
「せんせー、屋敷って何ですか! 私死んでたので解りません!」
「お前の介護役はじゃんけんでライズに決定した! 聞け!」
……え、私って介護される側?
「そーそー、確かジャンケンもジェイドが作ったんだよね。
人の運命を分ける重要な時と、すっごくどうでも良いことの両方でつかうって」
「――ジェイドの作った文化って、ホントやけに流行るわよね」
クリスちゃんとライズが横から合いの手を入れる。
うんうん、だよね。 元々の世界で流行ってたもんを丸パクしただけだもんね。
記憶ないって言っても、さすがにその辺は覚えてるんだよ? 私。
「――まあ、後は普通に暮らすだけね。 魔王レベルの危機なんて、そう訪れないでしょうし……」
「待ってライズ、フラグ建てないで」
「ま、いーや! ボクは酢昆布専門店いってくるねー」
「酢昆布専門店」
「俺も調べものがあるので、な。 これにてドロンさせてもらう」
「ドロン」
ファンタジーってものが微塵も感じられない発言である。
世界観ってもんを理解しろよ。 テンプレならテンプレらしくしとけよ。
とくにジェイド。
クリスちゃんは可愛いから許そう。特別。
「……で、ライズ」
「はい」
「屋敷ってなに? 私ら旅人じゃなかったっけ?」
「ええ、一応旅人ね」
「……屋敷って何さ?」
「そのままよ……住居。 空き家を改装したの」
「え、定住?」
「離れてる期間は長いけど……一応そういうことになるわね」
定住してる旅人って、それはもう旅人と言えるのだろうか。
ちょっと私が寝てた間に、だんだん色々と壊れてってる気がするぞ。 やっぱりこのパーティーには、至極マトモな常識人――つまりは私が必要らしい。
「……で、えーと。 私は何をすれば?」
「寝てれば良いんじゃないかしら?」
……そうだね。




