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チョロイン☆デビュー!  作者:
再び城下町
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第七十一話「今度の移動は汽車だよ」

移動中。


ある時は親の実家に、ある時は旅行に、ある時は親戚の家に、そして結婚式とかそういうのに。

人生には、長距離の移動というものが付き物である。


長距離の移動には、必ず暇がくっ付いてくる。


最初はみんなで話していようが、いつかは話すネタが尽きて、結局は窓の外を眺めながら、

その長い長い時間を過ごす事になる。




……でも、ここは異世界!

日本じゃないなら、別に暇にはならないかもしれない。







「……期待した私が間違ってた」


「いきなり何言い出すのよ」


「暇だ……どこの世でも移動って暇な物なんだな」



現在、わたくしは海の上を走っております。

汽車っぽい乗り物の、回転式クロスシートに座って。


暇すぎてシート回したくなる。



「――な、ライズ」


「今度は何?」


「シート回して良い?」


「後ろ向くだけなら良いわ」



――くそっ。

でも回しちゃう。 一回だけだけど。



レバーを引いて、席をグルっと回して、

すっかり眠ってるクリスちゃんと、死んだような目でただ座っているジェイドと向かい合わせになる。




「……生きてる?」


「ああ。 暇なら昔話でもしてやろうか」


「むかしばなし。」


唐突にそう切り出したジェイド。

うんうん、わかるよ。 自分語りって楽しいもんね。


小さい頃の自分を語るのとかさ、めっちゃ楽しそうに話すタイプだもんね。 お前は。




「……昔、その少年は三階建ての家で暮らしていてな。 三階建てにこだわり過ぎて、肝心の居住スペースは殆どなかったが」


あれ? 『その少年』って、自分の話じゃないの??

……っていうか、この話長くなりそう。



「アリアが既に飽きてきているようだし、早めに言ってやろう。 その少年はトラッ……大きな乗り物に轢かれて死んだ」


「いま『トラッ』って」


「気のせいだ」



トラックに轢かれて死ぬとか、テンプレ中のテンプレにも程があるだろ。


……あ、なるほど。

自分が体験した事として話しちゃったら、この辺の死んだくだりに説明つかないもんな。


なっとくー。 まじなっとくなんですけど。




「――それから少年は女神に出会った。 そして、世界を救え――そう言われ、この地に降り立った」


「……」


「そして、生まれ変わって、少しだけ成長したころ。

 元いた世界の現状を、その女神に教えてもらったのだが――」


「だが?」



「……妹が死んだらしい。 魂も行方不明になったらしく、女神としてこれでは困る――と」


「……え、女神ちゃん無能じゃない?」

あ、思わず口に出た。


「まあな――。 すべての世界の生き物を統括している神が、こんなもので良いのかとは俺も思う」


うんうん。 それは解るよ。

でもさ、もう隠す気なくない? 完璧に自分の事として話してるよね。


ま、ライズは気付かなさそうだし大丈夫だけど。




「で、女神曰くこの世界の何処かに居るのは確定だと。 俺が探すのが一番手っ取り早いらしい」


俺って言っちゃったね。



「……まあ、そういう事だ。 神の失敗は俺が背負うんだと」


「へえ――大変ね」


やっぱりライズは何の違和感も抱いてないみたいだ。

え、あれだけモロに『俺』って言ってたのに?


そもそも『異世界転生』っていう概念がないから、こんな風に華麗にスルーできるんだろうか。

ふしぎ。



「……っていうかさ、妹に会えたとして、それが妹だって特定できるもんなの?」


「できないな。 魔力のパターンが異常に似る、とは聞いたことがあるが……」


「好きな人にも似ていく、って言われてるしね――。 まあ、アリアは解らないから良いけど」


「……そうだね」


そうだね。 私は魔力とか一切わかんないもんね。


自分で作ろうとしたら死んで、他所から借りようとしたら酔って、

なんで私は魔術師なんだろう。


魔術なんて使えないぞ。

使えるけど、デメリットのほうがはるかに大きいぞ。




――と、そんなこんなで。


『えー、城下町ぃ~城下町ぃ~』



どうやら到着したみたいなので、この話はここでおしまい。

アレルギーって辛いね。

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