第六十九話「決着のとき」
「みんなに代わって言うよ。 ……ほんとに、ごめんなさい」
そう言ってマイクを口から話すと、観客に向かって深く頭をさげるクリスちゃん。
……と、カンカンに怒った顔で、フィールドに上がってきた眉毛兄貴。
あ、敵は兄貴だけじゃない。
一部の観客は、めっちゃ怒り狂ってゴミとか罵声とか飛ばしてきてるし、
兵士も全員『取り押さえろ!』みたいなオーラを発してるし、
だけど泣きながら喜んでる人もいる。 ……ハッキリとは見えないけど、たぶん……。
どちらかといえば、国民は喜んでるほうが多いっぽいな。
そんな感じで、私が周りを見渡していろいろ思ってる間に、
眉毛兄貴がクリスちゃんのすぐ前に立っていた。
「……おにーちゃん」
「国から逃げ出した軟弱者が……。 堂々とこの場に立つばかりでなく、良くもアレを破壊するなど出来たものだな」
「…………ボク、間違ったことしたなんて思ってないよ」
「――何だと?」
危ない。 このままじゃクリスちゃんがあぶない。
眉毛の怒りが頂点に達する直前だ。
「もう一度言ってみろ、クリスティア」
「間違ってる。 この国はぜんぶ間違ってるっ!!」
「……本当にそう思うか」
「――」
無言で眉毛の目を見詰めて、はっきり頷いたその瞬間。
「なっ……クリスっ!」
「避けろ!」
「え、なに、な――」
いきなりジェイドとライズの二人が反応し、
私が戸惑った瞬間に、
「っ――!!」
すごい爆発音が響き、地面のキノコがたちまちひび割れて行く。
「この魔力量……殺しにかかったか」
あ、え……?
ジェイドくん解説ありがとう。 でも今は解説どころじゃ――。
――爆炎がだんだんと薄れてきて、二人の姿が……あれ? 三人いる。
まあ、クリスちゃんは無事なようで一安心だけど――。
「――実の妹を手に掛けようとするとは。 それでも男の意地があるのか、貴様」
「退けろセレス。 今はクリスティアと話している」
「あんな不意打ちを『話』? ふざけるのも大概にして貰おうか」
……お姉さまだ!! 何か強そうなおねーちゃんが来た!
よし、これで眉毛に打ち勝てる……かもしれない。
「くっ……やってしまえ!」
諦めたように、眉毛は右手を挙げながらそう叫んだ。
「え、やってしま――?」
――兵士だ。
兵士が大量に、幾千、幾万人の兵士が、が、が、
反逆者目指して突進してきている。
「ふッ……」
……あ、ジェイドがなんか鼻息を荒げだした。
大丈夫だ、これならアイツの俺tueeeモードが発動するから……。
「雑魚が」
ほらね、指パッチンした。
時間止まった。
……で、ここからどうやってこいつらを倒すつもりなのか。
「まさか手作業で……?」
なるべく止まってるフリをしながら、私は思わず小声で呟いた。
そして、その予感は的中してしまった。
――ジェイドね、なんか兵士たちの居るところまで歩いて行って、重たそうに斧を振り上げては、一人ずつ丁寧に攻撃していくの。
なるほど……あのドヤ顔の裏にはこんな苦労が。
そして、(体感時間は)約三十分後。
疲れた顔して、もと居た位置まで戻ってきたジェイドは、
息を整えるのに、三分ほどその場にうずくまってから、
何もなかったかのように立ち上がり、再びその指をパッチーンと鳴らした。
「何っ……!?」
「時間停止の魔術か……? 良くも人間が扱えたものだな」
「ジェイド――」
おねーちゃん曰く、時間停止ってそう簡単に扱えたもんじゃないらしい。
わー、すごーい。 きみは時間を止められるフレンズなんだね。
そして、もちろん一人残らず倒れていく兵士たち。
……まあ、あれだけ念入りに攻撃し忘れてないかチェックしてたんだしな。
「……俺の仲間を傷つけることは」
三秒ほどタメが入って、
「この俺が許さない――。 大人しく降伏しろ」
決めセリフ。
きゃー、じぇいどくんかっこいー。
……でも、さっき言われてたみたいに、
時間停止できる人間って、この世界の人々には、けっこう脅威になるらしくて、
通信機らしきものを手に取った眉毛兄貴が、(たぶん)国王に連絡して、
いろいろ話して、
「くっ……解った、好きにしろ」
――と、悔しそうな顔で負けを認めてくれた。 やったね。
そろそろこの章もおわり。




