第六十五話「今だけ主役だよ」
「フフフフ……」
「…………」
「さあ……我が恐怖に溺れるが良い」
「…………」
――もしかして、これってアレかな。 私が、この私が、やっと主人公っぽいことが出来るってことかな。
劣等生だけど強い……みたいな。
私の場合は謎のクソみたいなアレルギーが役に立っただけだけど。
むふふふふ。
「……遅いな。 どのみち、破滅に変わリーゼントはないが」
語尾の設定は完全に忘れていた。
ちょくちょく出してくるのが、ヤツの面倒くさい所である――たぶん。
時間が経過するにつれ、リーゼントは若干焦りだし、観客はざわめき、そして後ろでジェイドたちが荒ぶってきた。
今は変なダンスを踊っているようだ。
……あれ? なんか、私が一番の常識人で強いクールな奴――みたいな絵面になってない?
「……くっ、どうして効かない」
「ふ――やれやれ。 これだから蛮族は」
何故かだんだんと変なテンションになってきた私は、無駄に戸惑っている様子のリーゼントに話しかけてみた。
――あいつらの謎テンション、もしかして感染してるのかな。
「何ッ!?」
すごく動揺している。 今ならコイツ、何を言っても信じてくれそうだ。
「……今まで黙っていて済まなかったな。 立場を考えず、貴様には本気を出して戦ってほしかった――ただ其れだけの事さ」
きゃあ、私かっこいい。
「くっ――何者だ」
「私の正体? それは明かしてはならない規則になっている。 ――貴様は自分の力を信じすぎた」
「……!」
「“組織”のご意向らしい。 今は見逃してやろう――」
「そ、そしき……?」
自分でも、何を言っているか良く解らなくなってきた。
言ってる本人が理解出来ていないのだから、聞いている側はもっと理解できていないだろう。
観客がすごくざわついた。 リーゼントも震えた。
私は楽しくてニヤついていた。
……いいなぁ、主人公的な扱いって。
さてと、最後の決め台詞だ。
まず右腕を頭の後ろに回し、左腕は右の太ももに。 そして左足をグルグル回転させて――。
よし、決めポーズはこんな感じで良いか。
若干ダサいのが、逆にミステリアスさを引き立てている。 と思う。
それに、左足を回すスピードで、感情が表現できるしな。
我ながらナイスな案である。
「――さあ、つかの間の幸福か、惨めな降伏。 どちらを選ぶか、それは貴様次第だ」
きゃああっ、カッコよすぎてちびりそう!
降伏と幸福を掛けてね、オサレな感じにしてみたんだけど、
これって口で言っても伝わるんだろうか……。 ちょっと心配になる。
「……こ、降伏だ――」
あら、伝わった。
◆
「アリアーっ!」
「くりすちゃぁあああぁぁぁああぁぁあああぁ~~っん」
笑いながら駆けてくるクリスちゃんに向かって、私も盛大にニヤけながら走っていく。
本当なら走りながら服を脱いだりして、
クリスちゃんのところに着いた時には全裸――ってのも良かった。
でもね、このホテルにはジェイドもライズも居るから……。
父母が居る前でヤレるか? ヤレないでしょ?
つまりはそういう話だ。
「勝ったね! おめでと!!」
「ありがと!! ありがとう!!! ありがとう!!!!」
そう言って、クリスちゃんがぎゅっと私を抱きしめる。
最高だ。
まさしく、これこそ生きててよかったと感じる瞬間である。




