第六十三話「折らせろリーゼント」
――踏み出したアリアの後ろ姿を眺めながら、私はキノコで出来た椅子へと座り直した。
相手は屈指の実力を持つ、フォーサイス家の次男……。
魔王相手にも勝ったのだから、一応実力だけでも勝っている筈なのだけど、
「――どうした? ライズ」
「いえ……」
……相手は魔術師。 彼女も――肩書き上は魔術師。
変に気を回さず、そのまま戦ってくれれば大丈夫だけど――。
「……まあ、アリアは馬鹿だから。 大丈夫、か」
もう危険な思いはして欲しくないけど、みんなアリアの馬鹿さ加減を信じてる。
だから大丈夫だって、私も信じることにした。
『試合――スタートです!!』
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「……」
えーと、試合開始の鐘は――鳴ったっけ?
それよりさ、私さ、
ライズに『馬鹿』って言われた気がしてならないんだけど。 そっちのほうが気になる。
だってナチュラルに罵倒してくるんだよぉ……。 気になるよぉ気になるよぉ。
「……どうした? かかってこないのか」
「ん――」
やべ、試合中なの忘れてた。
視線を自分の身体に動かす。 籠手はオーケー、防具は無い!
……あれ? これ、接近戦に行ったらすぐボコられるパターンじゃない?
そう思った私は、この天才的な脳みそをフル稼働させ、
「わ、私は魔術師なんでな。 動くのは趣味じゃない」
なんともそれっぽい言い訳を考え出した。
「そうか……。 だが、生憎私も魔術師なのだ」
「へー……そうなの、全然気づかなかった」
「仮にも魔術師を名乗るなら、魔力の気配くらい感じ取れても――」
「あーうるさいうるさい!」
うるさい。
そういうのはね、生まれつきなのよ。 私の場合は転生した時からあったアレルギーなのよ。
だから、どうしようも無いことは馬鹿にしちゃ駄目だって、
小さいころお母さんに教わらなかったの? このリーゼント頭! キャラ薄いくせに! リーゼントしか特徴ないくせに!!
――ん、ひらめいた。
相手も魔術師だったらさ、別に近寄っても大丈夫そうじゃね?
しかもコイツさ、リーゼント折ったら一発で勝てそう。 逆に言ったら、心臓貫こうとリーゼントがある限り生きてそう。
「……じゃあ良いよ、私から行ってやる」
「フッ……」
続きで何か言おうとしてるけど、私はお約束なんて守ってる暇ない。
だって、早くしないと……。
しないと……。 特に何にもないや。
地面を強く蹴って、何度も蹴って、リーゼントを目指して進む。
「久々の狩リーゼントだ――」
サラっと『リーゼント』って入れた。 こういうところでキャラ立ちを狙ってるのか、この薄汚いリーゼントめ。
殴りたい。
「ぜっ☆」
――でも、今は戦闘中だもんな。 殴っても大丈夫だよな。
そう思った私は、足でブレーキを掛けるようにして、リーゼントの前に立った。
「あほくそまぬけろくでなし! リーゼント頭!」
「なっ――」
小学生レベルの愚痴だったと、自分でもちょっと思ったよ。
でももう口に出したことだもの。 消せないでしょ。
だから、せめて少しでも消せるように、有りっ丈の力を込めてリーゼントを殴った。
……アイツの記憶、薄れてればいいな。
もうちょっとカッコいい決め台詞にしたかったし――。
リングの端っこへと吹っ飛んでいくリーゼントを見ながら、私はそう思って、カッコいい技名について思考を巡らせる。
にしても――遠くから見たら、あのリーゼントの大きさよく解るな。
あけましておめでとうございます




