第六十二話「お前の番だぞ」
「……はーっ、なんか疲れた」
本当に謎の疲労感に見舞われ、試合会場からこの楽屋まで支えてきたライズを、布団の上にポイっと投げ捨て…………優しく降ろしてやる。
一気に肩が軽くなったのを感じながら、私もライズの隣に倒れ込むと、
「お前は何もしてないだろ」
チーム名のくだりで滑りまくっていたジェイドが、この私に向かってグチグチ言ってきた。
「雑魚相手にドヤ顔してたヤツに言われたかないね」
嘘偽りなく心に浮かんだ言葉を吐いて、私は布団の上をゴロゴロゴロゴロと転がる。
――だんだん加速してきて楽しい。
子供みたいな事してると思うけど、これでも私は未成年。
この世界じゃもう酒が飲める年齢だけど……そもそも年齢制限があるのかどうか解らないし、酒とか飲んだら酔っぱらって暴走するらしいけど、
まだまだ『クソガキ』の一言で通用するはずだ。 たぶん。
――にしても、次はあのリーゼント頭か。
見た目を紹介しようとしたら、もう『紺髪リーゼント』だけで全部表現できるくらいには華のない奴だけど、
あれでも可愛い妹とゴツくて強そうなゴリラ兄が居るんだもんな。
遺伝子的には強いはず。
……いや、上と下のきょうだいに全部持っていかれたとか有りそうだな。
「はー……次のリーゼント頭が強かったら、面白い試合も見れそうなんだけどなぁ」
ふと私がそう呟くと、
「――リーゼントの得意技は魔力操作だからね。 強いか弱いか、って言ったら、ボクよりは強いと思うよ~」
――とクリスちゃん。
「そうか……じゃあジェイド! 今度もよろしく」
「いや、自分でやれよ」
「そうだよ~。 特にリーゼントと戦うのは、アリアに任せたほうがいいと思うな」
「クリスちゃんがそう言うなら」
やってやろうじゃないか。
……でも、クリスちゃんより強いって凄くないか? 私が勝てるのかどうか、ねぇ……。
――まあ、私が負けてもライズとクリスちゃんの二人は残ってるし!
いけるいける、楽勝だわこれ。
◆
「……はい、始まりました準決勝!! 赤キノコは、先日マシュー軍を打ち破った――えーと、クリスちゃん親衛隊……?」
「ファンクラブを思わせる名前だな……」
「ゼロよりはマシかな」
そしてボコボコに叩きのめされるジェイド。
「そうね。 あんなダダ滑りよりは、少しでも同調してくれる人がいたほうがマシ――」
ライズの言葉に、ふと観客の反応を見てみると、
『クリスたん萌え!』とか叫んでるデブや、ニヤニヤしてるガリガリ男がいっぱい居た。
わかるよその気持ち、私も見た目が違えばあんな感じになってた。
「……ま、さすが私のネーミングセンス」
もちろん名付けたのは私である。 さすがに『ゼロ』は無いと思って、三秒で考えて書き換えた。
『アリア』って名前もさ、なんかカッコいいじゃん。 自分でつけただけに。
「――もうちょっとマトモな名前考えましょ」
「そうだね~」
――うっ。
で、対する青キノコのほうは……。 名前とか、まったく覚えてないや。
試合が開始したので、とりあえずジェイドを行かせることにして、
私はチーム名を頑張って考えることにする。
「……正直ね、ボク王とか国とかきょーみないの」
――どっちにしろ強制参加のようなものだったから……と、クリスちゃんはポツっと呟いた。
国の伝統行事……というより見世物になっていて、参加しなければ色々デメリットがあるんだと。
だから、私が昏睡状態になってる間、
みんなに迷惑だから――と拒もうとするクリスに、ジェイドやライズが『やろう』って後押しした形で、
この戦いに参加を決めたらしい。
……やっぱり私、重要そうな場面に限って置いて行かれてる気がするな。
「……頭文字だけ取って……ラクジア? アラクジ? なんとなくダサいな」
「一人で何言ってるのよ――。 ほら、次あなたの番よ」
――へ? 私の番って、なにが……。
「――ほら、残りはリーゼントだけだぞ。 早く行け」
「え、私そんな事言ってな……言ったな」
『クリスちゃんがそう言うなら』って引き受けちゃった気がするな。
まあ良いか、強いならさっさとギブアップすれば良いし、
倒せそうならドヤ顔しよ。 それこそジェイドみたいに、さ!!
ちょっとの期待を抱きながら、私は前へと足を踏み出し――てから、
武器も防具も何にもやってない事に気付いて、慌てて籠手だけ装着し、
もう一度カッコよく前へ踏み出した。




