第六十一話「三男を倒したぞ」
「ぐはっ」
「雑魚が――」
えーと、現在倒されたのが……副将までかな。
敵チームの残りはたった一人だけ。 そう、クリスちゃんの実兄であるチビくんである。
「えー、次は大将です」
「ひえっ」
「……何をしている? まさか怖いのか」
嘲笑うジェイドと、逃げようとするチビ。 そして無慈悲にアナウンスを続ける司会。
あれだけ盛り上がっていた客席は、チビの態度と比例するように、段々と静まり返っていった。
今では、このコロシアム全体が静寂に包まれ、たまーにライズの寝言が響くくらい。
ちなみに、彼女が眠ってしまったのはついさっきの事だ。
可愛い女の子が、私の肩にもたれかかって眠っている。 最高のシチュエーション……の筈なんだけど、やっぱライズじゃ……なんかなぁ。 さすがに友達って感じが強すぎる――気がする。
確かに可愛いことは可愛いんだよ。 でもなぁ…………っていうかエルフ耳いいな、触りたい。
「うぅ……」
「棄権するか?」
「う、う――。 ごめんなさい」
「えー……赤キノコ棄権により、青キノコの勝利」
――あ、決着ついたの?
あまりに弱々しい兄の姿に、クリスちゃんも思わず溜め息をつく。
「はぁ……こんなのだからお兄ちゃんは」
可愛い。 こういう妹欲しかったなぁ……。
……でも、この戦いってトーナメント式? だよね。
だったら他のチームでも見に行きたいな。 ……雑魚相手だったし、暇だし。
「……な、クリス」
「どしたの?」
「他のチームとか見れないの? 試合」
「……おねーちゃんとリーゼントのこと? それなら、もうきっと終わってるよ」
え――。
……っていうか、リーゼントって誰だっけ。
長男マッチョゴリラ男、長女イケメンまな板女、次男がイケメンヘタレチビで今戦ってるやつ、次女であり末っ子がクリスちゃん――。 と来たら、たぶん三男にあたる奴だな!
さっき紹介されてた気がしないでもないけど、そんな奴覚えるくらいだったら、私はクリスちゃんのこと一つでも多く知って覚えたほうがいいや。
たぶん、そのほうが脳も喜ぶし!
「……なんで?」
「だって、おねーちゃん戦う気無いもん。 一人だけチームも集めてないし、そもそも『次子だから』って無理やり参加させられただけ」
「ふーん――」
ああ見えて戦いは好きじゃないのかな。 強そうな見た目してただけに意外……。
「……子供のころは暴君って呼ばれてたんだけどね。 今は……えーっとね、討伐に何十人も必要なつよーい魔物、勝手に倒してきて危ないーって怒られてるよ」
「えぇ――」
強いじゃん。 それ絶対強いやつじゃん。
ジェイドと違って補正とか無さそうなのに。
「……強すぎない?」
「でも、やる気なかったらトコトン駄目人間だよー。 だけどボクは好き~」
「――っ」
微笑みシスコンクリスちゃん可愛い、息詰まるやめて死んじゃう。
「――まあ良いや、とにかく試合はどっちも終わったってこと~。 数が奇数だったら、長子だけはシード枠で出れるんだってさ」
「ずるっ」
意外と良いこともあるんだな、長子って。 わりと不遇なイメージしかなかったけど……。
でも、弟妹だった人に聞いたらだいたい逆だよな。 なんでだろ――自分の境遇が影響してるとか? 隣の芝生は青い。
「……だから、たぶん次はリーゼントと戦うよ~。 準備できたらしといて」
「あいよ」
「んー……」
寝ながらライズも返事した。
っていうかそろそろ肩痛くなってきたんだけど。 起きてライズ、我が友よ起きて――。




