第六十話「主人公補正はウザいが役に立つ」
で、事態は『チャラ男チームVS私たち』って構図になってきている。
「……えーと、チーム戦らしいけど――どうなの?」
「どうって?」
ライズがこっそり耳打ちしてきた言葉に、私が聞き返すと、
「順番とか、ルールとか……何か知ってる? 私、何も聞いた覚え無いんだけど」
「残念、私もそうだ」
「そう――。 じゃあジェイドで良いか」
『じゃあ』で使われる、困ったときの便利屋。
悲しいかな、それがジェイド・アラバスターくんなのである。 ああ悲しい悲しい。
「それでは先鋒!! 前へ」
その言葉を聞いて、堂々と前へ進む相手チームのヒョロガリ男。
推定体重30kgくらいで、風船のひとつでも付ければお空へ旅立っていきそうな、そういう弱々しい体系をしている。
一言でまとめるなら、とにかく弱そう。
たぶんキミは大将だろうけど、それでもクリスちゃんの兄かよチビくん。
先鋒ってね、ただ弱いのを持ってくるもんじゃないのよ。 そこが解ってないから、トーシロはやっぱ駄目なんだよねぇ……。 やれやれ。
「……ジェイド」
「俺?」
「そう。 早く行ってきて、急いでるから」
ライズに冷たく催促されて、ジェイドは心なしか寂しそうな顔をして歩き出した。
……この表情から察するに、『急いでる』ってただただ眠たいだけだろうな。
で、リング上に二人が揃ったのを確認して、
「……スタートッ!!」
司会のクソジジイは、そのシワシワで今にも潰れそうな喉を張り上げる。 物凄くうるさい。
敵の先鋒である(弱そうな)ヒョロガリが手を振り上げると、またもや客席からすごい歓声が聞こえてきた。
にしても、カッコいいとはお世辞にも言えないコイツにも……。 客の歓声って、どういう基準であがってるのか、私は本当に不思議でならない。
「かかってこいよ」
「了解している」
「アヴャッコリャッドッコイショ」
ジェイドがカッコつけたら、ヒョロガリは発狂でもしたのか、いきなり寄生をあげながら踊りだした。
どうやら相手は混乱状態にあるらしい。
いけジェイド、今だジェイド!
そんな感じで、どうにも気が抜ける戦いを、聖母たる私が優しい眼差しで見守っていたら、
「眠たい……」
「しばらく見ない間に……お兄ちゃんも骨折さんも――」
横で立っている女の子たちから不満の声があがる。
オーケーオーケー、その不満を聞いてやるのも紳士の仕事さ。 ジェントルハリケーンを巻き起こしてやる。
「……骨折さん、ってあのヒョロガリ?」
「そうだよ~。 細皮骨折さん」
「すごい名前してるな」
まさに名は体を表す、ってやつだな!
しかもこの世界、日本風の名前の奴とか居たんだな。 私もそっちが良かった……かもしれない。
「次、赤キノコ――マシュー軍、次鋒出てください」
あれ、いつの間にかヒョロガリ君が倒されてるぞ。
まあ主人公補正があるからな! どんな強敵も補正の前には適わんわ。 あーっはっはっは!!
……いや、これやっぱり私がドヤ顔することじゃなかった。
「なっ……あの骨折が倒された!?」
「ふっ――これが俺の能力さ。 さあ、次は誰が出てくるんだ?」
「……くっ、次! 次鋒出ろ!!」
「おう!」
大将の呼びかけに元気よくお返事をして、飛び出してきたのは――。
あ、さっき話しかけてきた茶髪脂ぎったパーマくん!!
「次鋒! 浜尾、いきます」
グオゴゴゴ。
「――雑魚が」
「何ッ!?」
ジェイドがパーマ男――あ、『浜尾』って『パーマ男』に響き似てるな――のほうを向くと、
浜尾は目を見開いて、肩を震わせた。
この瞳の輝き、胸の鼓動、指の混ざり、頬のかおり、
間違いない――これは、確実に恋だ。 恋をしているぞ、浜尾が!
「まさかBL――っ」
……まあ、別にそういうのが好きな訳じゃないけどね。 でも嫌いじゃないわよ、そういうの。
さあ、あなたたちの愛の形を見せてみなさい!
「死ね」
「えっ」
――あら。
「ぐはっ」
「雑魚が」
――あらあら。
……ま、まあ切なくて良いんじゃない?
ヤンデレ化した相手に殺されて、悲しみの向こうへと辿り着いてnice boatなエンドよりはいいと思うよ。 私個人の意見だけど。
「……次、青キノコ中堅!」
「おう」
「雑魚が」
そして、続く団体戦。
いい加減『雑魚が』っていうセリフと、青キノコ赤キノコっていうダサい呼び方だけは止めてもらいたいんだけどな。 無理かな。
たぶん無理だな。
お久しぶりです




