第五十九話「私を誰だと思ってる」
「は……はい。 お兄ちゃんのチームの人、ですよね?」
クリスちゃんはそう言って、話しかけてきたその少年をじっと見つめる。
染めた感じが満載の茶髪。 クルンクルンのダサいパーマ。
そして、後ろに群れる大量のチャラ男たち。
間違いない――。
こいつ、量産型チャラ男群の一員だ。
「そうです! あー……えー……。
あなたたち、魔王倒した人ですよね!」
パーマは若干挙動不審になりながら、へらへらと私のクリスちゃんに話しかける。
「え、お前ほんとに話しかけたのかよ。 受ける」
「それな」
横からはワックス&金髪で、頭がスーパーヤサイ人状態になった男の『受ける』攻撃。
後ろからは茶髪パーマのちょっと太い女の『それな』攻撃。
まさに現代の若者の縮図である。
びっくりするほどファンタジーっぽくない。
「――え、っと……」
ほら、クリスちゃん困ってるよ。
どうするの? 引かないのパーマたち?
「あ! ほら見ろよ、こいつジェイド何とかだろ?」
「うわっ、すげえ! 本物だ」
「んー! こっちライズちゃんだ! かーわーいーいー」
しかも勝手に騒ぎ始めた。
黙れ。 魔王討伐に関する話題で、私が注目されないのは一応わかってるんだ。 黙れ。
「……で、この青いの誰?」
「知らね」
「弱そう」
「黙れ量産型油まみれパーマ」
――ねえ知ってる?
ケンカってね、同じレベルの人どうしでしか発生しないんだよ――。
「……うっ」
そんな言葉がふと頭をよぎって、なんとも恥ずかしい気分になる。
これだから最近の若者はいかん。 私を怒らせたら、謎バリア出すくらいには強いんだからな。
二年くらい寝込む羽目になるけど。
◆
「さぁ~て、これより初戦を開始いたします!!」
時間は飛んで、現在私はここ!
花の都・フォーサイスの中心。 全面キノコで出来たコロシアムの中におります。
えー、私が立っているのはこちら!
いわゆるリングですね。 ひときわ大きな、黄色くて平たいキノコ。
どうやら私、今から戦うそうです!
「赤キノコは、兄弟三番目――マシュー・フォーサイス率いるマシュー軍!」
司会を務めるのは、さっきの長話をするクソジジイ。
マシュー……ってのも何だか慣れないから、私はチビと呼ばせてもらおう。
チビが(小さな)身体を宙に舞わせ、華麗に着地すると、カメラに向かって大袈裟に(短いけど)手を振る。
すると、どこから聞こえてくるのかは解らないけど、
黄色い歓声が、ワーとか、キャーとか、色々とこの闘技場に向かって飛んできた。
チビのくせに、人気だけはあるようだ。
「一方青キノコは、兄弟のいちばん末――クリスティア・フォーサイス率いる、」
……赤キノコとか、青キノコっていう言い方もどうかと思うけど。
そんなこと気にならないくらい、すごい出来事がこの後起きた。
「――? えーと、チーム名は無し……」
「いや――何も書かず、こう読む。 『ゼロ』と」
「うぇぷ……っ!?」
「えぇ……」
「……はずかしい」
絶不評そのものである。 私は声帯が潰れたみたいな声出たし、ライズはどん引きそのもの。 クリスちゃんと言えば、ちょっと諦めたような目をして、ぽつりとそう呟くだけ――。
これでジェイドはお得意なんだからヤバい。
……本気でカッコいいと思っているのか、それともわざと中二的なネーミングを付けて、受けを狙っているのか。
どちらにしても、ものすごく寒い……。
こういうギャグってさ、意図が伝わらなかったら本当にひどい有様になるよね。
「――――」
ちなみに、さっきのチビのときは聞こえていた声援。
コロシアムの近くにあるギルドから、冒険者の喜ぶ声が聞こえてくるくらいには、
本当の本当に、何も聞こえなかった――。
あの日スベりまくった苦い思い出




