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チョロイン☆デビュー!  作者:
花の都・フォーサイス
54/83

第五十三話「感動の……!」

「ジェイドなんてもう21よ。 若干は大人っぽくなってるかも」

「老けたのか」

あいつ、元々ちょっとヘンテコリーヌな顔だったしな。 エセイケメンの表現が微妙に似合うというか、魔物に服引っ掛けてぶらぶらしてたようなヤツだし。


「言ってやらないの」

ライズも地味にひどい。



――そして、宿までの距離がちょっとずつ近付いてくる。

この道をまっすぐ行った辺りに、王宮みたいな派手ででっかくて高そうな建物があるけど……まさかアレじゃないよな。 アレに泊まれたら良いのにな。


「あれよ」

「あれか」


ふーん……今日の宿泊はあれ、と。

……え?



「あれっ? ……あれ?」

「ええ……あれ」


会話の意味があんまり伝わらないでしょうこと、お詫び申し上げます。


「あれ? えっ……あれれれ? あれ?」

「あれ……言ってなかったかしら。 あれ」

「あれ――あれ! やった!」



とにかく、すごい宿に泊まれてうれしい。

この会話は、そういう意味で解釈して頂くと大体正解です。 たぶん。





えー、わたくしアリア・ユリシフタ。 たぶん十七歳。

前世での趣味はプチプチした梱包材をを潰すこと。 現世での趣味は冒険の実況。


現在すごそうな宿のすぐ前に来ております。

あっ、扉が開きました。 自動で開くんですね。 すごい技術の進歩であります。 ち○ぽじゃないよ。


さあ、さっそくこの車椅子カッコカリに乗せられて、わたくし部屋まで無事に辿り着けるのでしょうか!?



「おかえりなさいま……」

メイドっぽい服を着たお姉さんの言葉が中断されて、その視線が私に向けられた。

「あっ、こんちわ」

取りあえず挨拶すると、


「せ――」


あっ気絶した。 私は幽霊か何かなの?


「……無理もないか、貴女は死人キャラみたいに定着しちゃってるもの」

「ひどっ」

さっきからライズが地味に酷い気がする。 気のせいか? 気のせいか。



さあ、続いて階段です!

車椅子でボコボコしたここを登り切れるのでしょうか!?

果たして、果たして結果は――!


「えっ」


う、浮きましたっ……!


「行くわよ。 しっかり捕まってなさい」

「えっ」


浮いたまま移動しました!!

ハイテクです! これぞ魔術と科学のコラボレーション!!



そしてライズは、そのままごく普通に上ってきた。

しかも、私だったらバテて死にそうなほどには長い階段だったのに、全く疲れてない! 普通にすごいな。




で、廊下を突き抜けた先の扉を……。



「二人とも! 大事件よ!!」

ゆりゆららららな大事件ですか? 違う。



開くと……。

そこには……。



「……ん? どしたの、ライズ」

「ぐがごごごごご」

「ぴょろろおおおぉぉおおお!!!」


いちばん最初に声を発したのは、絹みたいにツヤツヤな紺髪が美しい、愛の妖精みたいなもうほんとに可愛くて愛らしい女の子。

二番目が、若干老けた気がしないでもない男。 柔らかそうな布団から、半分体がずり落ちている。 あといびきがうるさい。

三番目の奇声は私。 ごめんなさい、つい興奮して……。



「みて! このアリア――」

「えっ……アリアがどうしたの?」

「見て見て! クリスちゃんだよね! 見て! 私のこと見て!」

「うるさい」

「はい」

自分のことをアピールしてたら、ライズに一喝入れられた。 こわいので黙る。

さあクリスちゃん、私のことで何か気付くことない?


「あれ……うるさくなってる! なんで? ボクの気が違った?」

「違ってないよ! クリスちゃん! 見て! 私のこと」

「うるさい」

「ごめんなさい」


……にしても、何故かまた受け入れてもらえてないよ。

どうしよう。


「……夢? ごめんライズ、ボクいったん寝るね」

「え、ええ――」


しかも寝られたし。 待ってよクリスちゃん、私はここだよ。 まぎれもない現実だよ。



「……私も夢かしら? これ。 寝ましょう」

「夢じゃないぞ! たぶん……」

自信はないけど、たぶんそうだ。


「アリア、眠たくないの?」

「起きて数時間だし」

そんなこと聞かれたって、ねぇ……。

何なら今まで何百日も寝てたわけだし。 眠たいわけないじゃないの。



「……でも、みんな寝るってんなら寝る」


だが寝る。

人と合わせることがコミュニケーションのコツだって、友達のジョンディ・マロンティックくんが言ってた。 架空の人物だけど。




「解ったわ……立てる? 寝るスペースなら一応とってるけど」

「たぶん立てるからダイジョブ」

「ん……電気消すよ」

「わかった」



ってわけで皆さんおやすみなさい。

明日になったら目覚めないかもしれないし、それに眠くないけど私は寝ます。


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