第五十三話「感動の……!」
「ジェイドなんてもう21よ。 若干は大人っぽくなってるかも」
「老けたのか」
あいつ、元々ちょっとヘンテコリーヌな顔だったしな。 エセイケメンの表現が微妙に似合うというか、魔物に服引っ掛けてぶらぶらしてたようなヤツだし。
「言ってやらないの」
ライズも地味にひどい。
――そして、宿までの距離がちょっとずつ近付いてくる。
この道をまっすぐ行った辺りに、王宮みたいな派手ででっかくて高そうな建物があるけど……まさかアレじゃないよな。 アレに泊まれたら良いのにな。
「あれよ」
「あれか」
ふーん……今日の宿泊はあれ、と。
……え?
「あれっ? ……あれ?」
「ええ……あれ」
会話の意味があんまり伝わらないでしょうこと、お詫び申し上げます。
「あれ? えっ……あれれれ? あれ?」
「あれ……言ってなかったかしら。 あれ」
「あれ――あれ! やった!」
とにかく、すごい宿に泊まれてうれしい。
この会話は、そういう意味で解釈して頂くと大体正解です。 たぶん。
◆
えー、わたくしアリア・ユリシフタ。 たぶん十七歳。
前世での趣味はプチプチした梱包材をを潰すこと。 現世での趣味は冒険の実況。
現在すごそうな宿のすぐ前に来ております。
あっ、扉が開きました。 自動で開くんですね。 すごい技術の進歩であります。 ち○ぽじゃないよ。
さあ、さっそくこの車椅子カッコカリに乗せられて、わたくし部屋まで無事に辿り着けるのでしょうか!?
「おかえりなさいま……」
メイドっぽい服を着たお姉さんの言葉が中断されて、その視線が私に向けられた。
「あっ、こんちわ」
取りあえず挨拶すると、
「せ――」
あっ気絶した。 私は幽霊か何かなの?
「……無理もないか、貴女は死人キャラみたいに定着しちゃってるもの」
「ひどっ」
さっきからライズが地味に酷い気がする。 気のせいか? 気のせいか。
さあ、続いて階段です!
車椅子でボコボコしたここを登り切れるのでしょうか!?
果たして、果たして結果は――!
「えっ」
う、浮きましたっ……!
「行くわよ。 しっかり捕まってなさい」
「えっ」
浮いたまま移動しました!!
ハイテクです! これぞ魔術と科学のコラボレーション!!
そしてライズは、そのままごく普通に上ってきた。
しかも、私だったらバテて死にそうなほどには長い階段だったのに、全く疲れてない! 普通にすごいな。
で、廊下を突き抜けた先の扉を……。
「二人とも! 大事件よ!!」
ゆりゆららららな大事件ですか? 違う。
開くと……。
そこには……。
「……ん? どしたの、ライズ」
「ぐがごごごごご」
「ぴょろろおおおぉぉおおお!!!」
いちばん最初に声を発したのは、絹みたいにツヤツヤな紺髪が美しい、愛の妖精みたいなもうほんとに可愛くて愛らしい女の子。
二番目が、若干老けた気がしないでもない男。 柔らかそうな布団から、半分体がずり落ちている。 あといびきがうるさい。
三番目の奇声は私。 ごめんなさい、つい興奮して……。
「みて! このアリア――」
「えっ……アリアがどうしたの?」
「見て見て! クリスちゃんだよね! 見て! 私のこと見て!」
「うるさい」
「はい」
自分のことをアピールしてたら、ライズに一喝入れられた。 こわいので黙る。
さあクリスちゃん、私のことで何か気付くことない?
「あれ……うるさくなってる! なんで? ボクの気が違った?」
「違ってないよ! クリスちゃん! 見て! 私のこと」
「うるさい」
「ごめんなさい」
……にしても、何故かまた受け入れてもらえてないよ。
どうしよう。
「……夢? ごめんライズ、ボクいったん寝るね」
「え、ええ――」
しかも寝られたし。 待ってよクリスちゃん、私はここだよ。 まぎれもない現実だよ。
「……私も夢かしら? これ。 寝ましょう」
「夢じゃないぞ! たぶん……」
自信はないけど、たぶんそうだ。
「アリア、眠たくないの?」
「起きて数時間だし」
そんなこと聞かれたって、ねぇ……。
何なら今まで何百日も寝てたわけだし。 眠たいわけないじゃないの。
「……でも、みんな寝るってんなら寝る」
だが寝る。
人と合わせることがコミュニケーションのコツだって、友達のジョンディ・マロンティックくんが言ってた。 架空の人物だけど。
「解ったわ……立てる? 寝るスペースなら一応とってるけど」
「たぶん立てるからダイジョブ」
「ん……電気消すよ」
「わかった」
ってわけで皆さんおやすみなさい。
明日になったら目覚めないかもしれないし、それに眠くないけど私は寝ます。




